トリート選んだら異世界で愛され魔女になってました

星野 千織

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第2話 異世界の夜

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 ……冷たい、石の感触。
 背中が痛い。どうやら地面に寝転がっているらしい。

 ――え、ちょっと待って。外?
 さっきまで駅前の広場にいたはずなのに。

 目を開けると、そこは夜の街だった。
 けれど、どこかがおかしい。
 ビルもネオンもない。代わりに、歪な木組みの家々と、オレンジ色の提灯が並ぶ通り。
 提灯の中で燃えているのは……カボチャの火だ。
 しかも、ひとつひとつが顔をしている。にやり、と笑って。

「……あれ? テーマパーク? 新しいイベントでも始まった?」

 ぼんやりと呟いた声が、夜の空気に吸い込まれる。
 人々――いや、”何か”が、通りを行き交っていた。
 三角帽子の魔女。棺を背負った青年。角の生えた女。
 リアルすぎる。メイクどころじゃない、これは特殊造形レベルだ。

「すごい……本格的。最近のハロウィンってここまでやるの?」

 自分でも笑ってしまうほど、のんきな言葉が出た。
 でも、冷静になって考えたら、もっとおかしい。
 スマホがない。ポケットの中、バッグの中――どこにも。
 街灯も見えない。代わりに、宙を漂う小さな光の粒が照らしている。
 まるで蛍のように。

 その光の中を、カボチャの頭をした男が通りすぎた。
 長い外套を翻し、まるで貴族のような立ち振る舞い。
 私の方をちらりと見て、微笑んだ。

 ――それは、火のように赤い目だった。

「……え?」

 喉が乾く音がした。
 けれど、次の瞬間。
 彼は軽く一礼し、穏やかに言った。

「お目覚めになりましたか、”新たなる魔女”様」

 私の仮装した百均マントが、月明かりを受けてひらりと揺れる。
 笑い飛ばすべきなのに、声が出なかった。

 ……なんだろう。空気が、重い。

 提灯の火が、風もないのにゆらゆらと揺れている。
 遠くで、鐘の音が鳴った。

 ――”真なるハロウィン”の夜が、始まる。
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