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2.恋とは落ちるものなので
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初めて会った日から、俺はたびたび王宮のお茶会に招かれ、エドワードと親交を深めた。
お茶会には決まって俺以外の学友候補らしき貴族令息たちも何人か呼ばれていたが、エドワードは俺といっとう親しくしているようで、いつも隣に座ることを許してくれた。
エドワードと一緒にいるのは心地よかったし、それはきっとエドワードも同じだったのだろう。俺たちはよく顔を寄せ、くだらない冗談やとりとめのないことを話して笑っていた。
ゆるやかに月日は流れ、十三歳。
王立学園中等部に入学すると同時に、エドワードは王太子になった。立太子に伴い、王宮での教育もさらに厳しいものになったらしい。
この頃のエドワードは美しさに磨きがかかり、まさに洗練された美少年という言葉がぴったりだった。
お互い育ち盛りだからたくさん食べるし、身長もすくすく伸びている。
ゲームのシナリオではエドワードは175cmという設定だった。ちなみに俺はシナリオ開始時点で185cmあったので、これからさらに伸びていくはずだ。
学園に入学してからも俺たちは相変わらず仲が良くて、いつもだいたい一緒にいる。
いちおう俺の他にも何人か学友はいるが、エドワードの隣には俺がいるのがデフォルトみたいになっていた。
昼休みなんかは今みたいに俺たちだけで中庭を散歩することも多い。
「なんだか元気がないね。疲れてるの?」
「あぁ、実を言うと少しだけ……」
物腰柔らかで感情的になることも少なく、外見も相まっていよいよ王子様然としてきたエドワードだが。
そんな彼がこうして少し弱っている姿を見せてくれるたびに、ぎゅっと胸が締め付けられる。
「おいで、エドワード。疲れているなら今のうちに少しでも休んでおいた方が良いよ」
「うん」
そっとエドワードの手を引いて、胸元から取り出したハンカチをベンチに敷く。その上に彼を座らせ、俺は隣に腰掛けた。
「ありがとう、ウィリアム」
エドワードは囁くように礼を言うと、目を閉じて小さな頭をこてんと俺の肩に預けた。
二年生に上がってから本格的に王太子としての教育が始まったらしく、最近はふたりきりになるとたまにこうして甘えてくる。
俺は言葉で返事をする代わりに、そのさらさらの金髪に軽く頬を擦り寄せて答えた。
これをするときにいつも思うんだけど、やっぱりエドワードからは良い香りがする。花とレモンが優しく混ざりあったみたいな、甘すぎず爽やかな香り。俺はこの匂いが好きだった。
それにしても、エドワードとも随分親密になったものだ。
こんなにも無防備な姿を見せてくれるのは、彼に信頼されている証のようで嬉しい。
幼い頃から口酸っぱく高慢な態度を注意してきた甲斐があり、現実のイザベラもゲームで見た彼女より穏やかな性格に育っている。
たしかにプライドが高くて扱いにくい部分はあるものの、公爵家の令嬢なので多少は仕方ない。少なくとも今のイザベラは、他者を見下したり馬鹿にして虐めたりするようなことはしないだろう。
俺の行動が原因で、現実世界とゲームの設定の間に少しずつズレが生じ始めている。これが、吉と出るか凶と出るかはわからないけど。
「エドワード……」
掠れた声で名前を呼び、誰にも見られないようにこっそりと指先を絡める。ぴくっ、と彼の肩が小さく揺れたのを見ないふりして、俺は吐息だけで苦く微笑んだ。
まさか当て馬の悪役令息がヒロインどころかメイン攻略対象の王子様に恋をするなんて、こんな馬鹿げた話はないよな。
お茶会には決まって俺以外の学友候補らしき貴族令息たちも何人か呼ばれていたが、エドワードは俺といっとう親しくしているようで、いつも隣に座ることを許してくれた。
エドワードと一緒にいるのは心地よかったし、それはきっとエドワードも同じだったのだろう。俺たちはよく顔を寄せ、くだらない冗談やとりとめのないことを話して笑っていた。
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王立学園中等部に入学すると同時に、エドワードは王太子になった。立太子に伴い、王宮での教育もさらに厳しいものになったらしい。
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「なんだか元気がないね。疲れてるの?」
「あぁ、実を言うと少しだけ……」
物腰柔らかで感情的になることも少なく、外見も相まっていよいよ王子様然としてきたエドワードだが。
そんな彼がこうして少し弱っている姿を見せてくれるたびに、ぎゅっと胸が締め付けられる。
「おいで、エドワード。疲れているなら今のうちに少しでも休んでおいた方が良いよ」
「うん」
そっとエドワードの手を引いて、胸元から取り出したハンカチをベンチに敷く。その上に彼を座らせ、俺は隣に腰掛けた。
「ありがとう、ウィリアム」
エドワードは囁くように礼を言うと、目を閉じて小さな頭をこてんと俺の肩に預けた。
二年生に上がってから本格的に王太子としての教育が始まったらしく、最近はふたりきりになるとたまにこうして甘えてくる。
俺は言葉で返事をする代わりに、そのさらさらの金髪に軽く頬を擦り寄せて答えた。
これをするときにいつも思うんだけど、やっぱりエドワードからは良い香りがする。花とレモンが優しく混ざりあったみたいな、甘すぎず爽やかな香り。俺はこの匂いが好きだった。
それにしても、エドワードとも随分親密になったものだ。
こんなにも無防備な姿を見せてくれるのは、彼に信頼されている証のようで嬉しい。
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たしかにプライドが高くて扱いにくい部分はあるものの、公爵家の令嬢なので多少は仕方ない。少なくとも今のイザベラは、他者を見下したり馬鹿にして虐めたりするようなことはしないだろう。
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掠れた声で名前を呼び、誰にも見られないようにこっそりと指先を絡める。ぴくっ、と彼の肩が小さく揺れたのを見ないふりして、俺は吐息だけで苦く微笑んだ。
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