悪役令息に転生したから断罪ルート回避しようとした結果、王太子殿下を溺愛してる

琥月ルル

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29.ヒロイン乱入!?

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「エドワード様!」

読書をしつつ、たまにエドワードの寝顔を眺めるなどして静かに過ごしていたところ、サロンのドアがバァンッ!と派手な音を立てて勢いよく開け放たれた。
そこに立っていたのはセシリアだった。特徴的なピンク色の髪をなびかせ、誰の許可を得ることもなく、ずかずかと部屋に入り込んでくる。
エドワードは真っ青な顔で飛び起きると、俺の胸元に縋るように抱きついた。俺は彼の背中に腕を回して抱き寄せ、ひんやりとした冷たい目でセシリアを見つめる。

「……これはセシリア嬢。このような場所まで、何の用だろうか」
「エドワード様がお疲れのご様子だったので、光魔法の使い手である私が癒してさしあげようと思いましたの!」
「よく俺たちがここにいるとわかったね」
「友人の皆さんに聞いて回ったら、ここにいるかもしれないと言われて……まさかウィリアム様もいらっしゃるとは思いませんでしたわ!お会いできて嬉しいっ♡」

ピンク色の瞳を輝かせてはしゃぐセシリアには返事をせず、俺は安心させるようにエドワードの背中を撫でた。

「大丈夫だよ」

耳元に唇をくっつけて優しく囁き、アイスブルーの瞳をじっと見つめて微笑む。それでも少し不安そうな顔をしているので、頬や目蓋、鼻の頭、それから唇の端に柔らかなキスをした。

「んっ……♡」

もちろんエドワードを宥めたいというのが一番の目的だったけど、言外に俺たちの関係を匂わせて牽制する目的もある。
唇を離すと、エドワードは頬を赤らめて恥じらうように俺の首筋に顔を埋めてしまった。
一連の流れを見せつけられたセシリアはびっくりして一瞬だけ猫を被り忘れたのか、唖然とした様子で「なにこれ、バグ……?」とか呟いてる。
バグなんかじゃなくて現実だよ。わざわざ教えてやらないけどね。

「エドワードから聞いたが、君は夜遅くまで彼の私室に入り浸っているんだって?彼がこんなに疲れている理由は、君の話に付き合わされて寝不足だからだよ。押してダメなら引いてみろっていう格言があるけど、自分の欲を他人に押し付けてばかりでは人間関係は上手くいかない。君はもう少し、よく考えて行動するべきだ」
「え、えっと……つまり、ウィリアム様は、私が最近エドワード様に夢中になってるから嫉妬してくれたってことですか?」

何をどう解釈したらその結論に至るのか全然わからなくて、頭を抱えたくなった。
セシリアの頭の中では、彼女に想いを寄せてる俺が、二人の仲に嫉妬して邪魔しようとしたことになってるみたい。とんでもない曲解だ。
たしかに『セカ愛』のウィリアムは、セシリアに横恋慕してエドワードとの仲を引き裂こうとあくどい策略をめぐらすキャラクターだったけど。
現実の俺はエドワードと恋仲だし、セシリアのことはむしろ嫌いだ。自分の都合でイザベラに濡れ衣を着せて悪女に仕立て上げようとしているうえに、俺のエドワードに生活に支障が出るレベルの迷惑をかけておいて悪びれもしないなんて、俺が彼女を好きになる要素は皆無だよね。

 「……とにかく、今のエドワードに必要なのは君の光魔法による癒しではなくて、充分な休息なんだ。君は聖女としての務めに集中して、夜に彼の私室を訪ねるのは控えなさい」
「まぁっ、やっぱり嫉妬してくださったのねっ♡ミステリアスで余裕のあるイケメンの独占欲って最高~♡大丈夫ですわ、ウィリアム様!あなたがそうおっしゃるなら従いますっ。魅力的な殿方はたくさんいらっしゃるけど、ウィリアム様が今のところ最推しだし♡」
「なんだかいろいろと誤解があるようだけど……とりあえずここから出ていってくれると嬉しい。エドワードをゆっくり休ませてあげたいんだ」
「エドワード様と私が一緒にいるところを見たくないってことよねっ♡きゃあっ♡わかりました!私は失礼しますねっ」

セシリアは頬を染めながらひとりではしゃいで、来たときと同じように勢いよくドアを閉めて出ていった。
まったくとんでもないな。思い込みが激しいっていうか、全部を自分の都合のいいように曲解するからびっくりした。
嵐が去ったあとのように、ふたりきりのサロンに静寂が戻る。

「……ありがとう、リアム」
「どういたしまして。これであなたの負担が少しでも減るといいんだけど」

エドワードはわずかに強ばっていた体から力を抜いて、俺の胸元にしなだれかかる。甘えるように首筋にキスをされたかと思えば、ぢゅっ、とそのまま強く吸いつかれた。
きっと俺の首には、恋人からの独占欲の証であるキスマークが付いているだろう。嬉しくて、自然と唇が綻んでしまう。

「俺もつけていい?」

彼のうなじを撫でながら問いかけると、こくりと小さな頷きが返ってくる。期待するような瞳で見上げてくるのが可愛い。
俺はエドワードの頬に手を添えて少し首を傾げさせ、耳の後ろに強く吸いついた。目ざとい人なら気付くだろうなって感じの場所だし、虫除けにはなるはずだ。

「ん……♡」

エドワードは甘い吐息を零し、うっとりとした表情をしている。
俺の唇が離れていったのを惜しむように耳の後ろを撫でながら、ほわほわと目元を染めて嬉しそうな顔をしている。本当に可愛い。大好きだ。
無性にキスしたくなって、肩に腕を回して優しく抱き寄せる。恋慕の滴るような瞳で見つめながら顔を近付けると、エドワードは柔らかな微笑みを浮かべて目を閉じた。
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