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34.濡れ衣【1】
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バルコニーでの密会を終え、当たり障りのない会話をしながら貴族たちとの親交を深めていたら、ホールの中心あたりから「きゃあっ!」と甲高い悲鳴が聞こえてきた。
いったい何事だろうと視線を向けると、悲劇のヒロインのような表情で立ち尽くすセシリアの姿が目に入った。ドリンクを零したのか、淡い色のドレスに大きなシミができている。
「イザベラ様、ひどいわっ……!」
彼女の口から妹の名前が聞こえた瞬間、俺はこれから起こるであろう出来事を察した。
周囲の貴族たちに「失礼」と簡潔に断りを入れ、ホールの中心に向かって足早に歩く。
「セシリア嬢、どうされたのですか!?」
「あぁ、お泣きにならないでください!お怪我はありませんか?」
セシリアは取り巻きの男たちに慰められながら、さめざめと泣き真似をしている。
「うっうっ……イザベラ様が、私のドレスが気に入らないとおっしゃってグラスの中身をおかけになったのですわっ。これは今夜のために大司教様から贈っていただいたものですのに!いくら私のことが嫌いだからといって、このような意地悪をなさらなくても良いでしょうっ」
うわ、ついにやりやがったな。
俺は苦虫を噛み潰したような顔をして、彼女の長台詞を聞いていた。嘘泣きをしながらあることないこと喚き散らしてるから、思いっきり周囲の注目を集めている。
これまでは学園の中だけだったから嫌々ながらも見逃してきたけど、王宮での正式なパーティーでイザベラの評判を下げるような騒ぎを起こしたとなれば、話は変わってくる。エバンス公爵家の名誉のためにも、セシリアの言動を看過することはできない。
「イザベラ嬢、どうしてそのようにセシリア嬢を虐めるのですか!?」
「セシリア嬢が可哀想ですよ!ご自分の間違いを認めて、早く彼女に謝罪をなさっては?」
取り巻きの男たちはセシリアの言い分を鵜呑みにして、事実確認をすることなく口々にイザベラを責め立て始めた。
「私は、エバンス公爵家の名に誓って、セシリアさんがおっしゃるような卑劣な真似は一切しておりません。ゆえに謝罪も致しませんわ」
イザベラは毅然とした態度を取り、不愉快そうに目を細めた。扇で優雅に口元を隠しているので表情は見えないが、だいたい想像できる。
「面倒なことになってるね。大丈夫?」
「お兄様……」
俺は柔らかな微笑みを浮かべて、イザベラの隣に立った。安心させるように華奢な肩を抱くと、彼女は小さく安堵のため息をつく。
「君たち、私の妹に随分な口をきくんだね。いつからそんなに偉くなったの?」
俺はさっきまで威勢よくイザベラを責めていた男たちに向かって、にこっと首を傾げながら微笑みかけた。
その途端、冷や汗をだらだら流しながら顔を真っ青にして黙り込んでしまうあたり、肝が据わっていない小心者ばかりのようだ。
事情も聞かずに、公爵家の令嬢を寄ってたかって責め立てるなんて非常識にもほどがある。
俺も普段は温厚な方だけど、大切な妹にこんな失礼な口をきく男たちに対しては、怒りを抑えたくなかった。
いったい何事だろうと視線を向けると、悲劇のヒロインのような表情で立ち尽くすセシリアの姿が目に入った。ドリンクを零したのか、淡い色のドレスに大きなシミができている。
「イザベラ様、ひどいわっ……!」
彼女の口から妹の名前が聞こえた瞬間、俺はこれから起こるであろう出来事を察した。
周囲の貴族たちに「失礼」と簡潔に断りを入れ、ホールの中心に向かって足早に歩く。
「セシリア嬢、どうされたのですか!?」
「あぁ、お泣きにならないでください!お怪我はありませんか?」
セシリアは取り巻きの男たちに慰められながら、さめざめと泣き真似をしている。
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うわ、ついにやりやがったな。
俺は苦虫を噛み潰したような顔をして、彼女の長台詞を聞いていた。嘘泣きをしながらあることないこと喚き散らしてるから、思いっきり周囲の注目を集めている。
これまでは学園の中だけだったから嫌々ながらも見逃してきたけど、王宮での正式なパーティーでイザベラの評判を下げるような騒ぎを起こしたとなれば、話は変わってくる。エバンス公爵家の名誉のためにも、セシリアの言動を看過することはできない。
「イザベラ嬢、どうしてそのようにセシリア嬢を虐めるのですか!?」
「セシリア嬢が可哀想ですよ!ご自分の間違いを認めて、早く彼女に謝罪をなさっては?」
取り巻きの男たちはセシリアの言い分を鵜呑みにして、事実確認をすることなく口々にイザベラを責め立て始めた。
「私は、エバンス公爵家の名に誓って、セシリアさんがおっしゃるような卑劣な真似は一切しておりません。ゆえに謝罪も致しませんわ」
イザベラは毅然とした態度を取り、不愉快そうに目を細めた。扇で優雅に口元を隠しているので表情は見えないが、だいたい想像できる。
「面倒なことになってるね。大丈夫?」
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「君たち、私の妹に随分な口をきくんだね。いつからそんなに偉くなったの?」
俺はさっきまで威勢よくイザベラを責めていた男たちに向かって、にこっと首を傾げながら微笑みかけた。
その途端、冷や汗をだらだら流しながら顔を真っ青にして黙り込んでしまうあたり、肝が据わっていない小心者ばかりのようだ。
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