悪役令息に転生したから断罪ルート回避しようとした結果、王太子殿下を溺愛してる

琥月ルル

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36.断罪計画

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王妃様の提案により、春先に、国中の貴族令嬢とその父兄たちを集めて王宮でパーティーが開催されることになった。
これは言わずもがな、エドワードの婚約者を選ぶために設けられたイベントだ。

セバスチャン殿下とイザベラが将来を誓い合った恋人同士であることは両国の王家に伝えられ、殿下が学園を卒業して帰国する際に、正式な婚約を結ぶということで話がまとまっている。
国と国を結ぶような大切な結婚になるということもあり、ふたりの関係はまだ公表されていない。

最も有力な婚約者候補だったイザベラが他国の王族に嫁ぐことになったので、誰がエドワードの婚約者になるのかわからない状況だ。
王妃様も、うかうかしていたら良家の令嬢たちは他所に嫁いでいってしまう、と焦り始めたのかもしれない。

もちろんこのパーティーにはセシリアも参加する予定だ。
大司教という権威ある後見人を持ち、王妃様にも気に入られている彼女は、エドワードの誕生日パーティーで醜態を晒したために社交界での評判はそれほど芳しくなかった。
でも、イザベラがエドワードの婚約者候補から外れた今、立場だけを見ればセシリアが最も有力な婚約者候補といっても過言ではない。

「セシリア嬢は学園に編入して間もない頃から、自分はイザベラに虐められていると主張しているけど、俺はそれが事実だとはどうしても思えないんだ。イザベラの名誉のためにも、彼女の潔白を証明したい」

俺が切々と訴えかけると、エドワードは真面目な顔で頷き、ぎゅっと俺の手を握ってくれた。

「私も協力する。セシリア嬢のイザベラ嬢に対する言動には目に余るものがあったからな。この際、しっかり調査して証拠や証言を集めよう。場合によっては、セシリア嬢に相応の罰を与える必要があるかもしれないね」

こうして俺たちは、春先のパーティーまでにこれまでセシリアがイザベラにどんなことをしてきたかについて、協力して調べることにした。
こちとら王家と筆頭公爵家。金と権力はたっぷりあるので、表立って言えないような手段も使って詳しく調査を入れた。使えるものは使わなきゃ損だし。
学園の生徒への聞き込み調査に関しては、カールやマーカスといった信頼できる友人たちにもお願いした。イザベラ嬢の名誉のためなら、と言って全員快く引き受けてくれたよ。嬉しかったな。

そうして手に入れた調査結果は、俺たちが思っていたより何倍もえげつないものだった。
まず、イザベラに虐められてたっていうのは完全にセシリアの虚言だとわかったし、それどころか彼女がイザベラに危害を加えようと画策している最中だということまで判明した。
具体的には、聖女の身辺警護役として騎士団から派遣された騎士たちを《チャーム》という禁忌の光魔法を使って魅了し、彼らにイザベラを攫って乱暴する計画と準備をさせていた。
あえて「乱暴」って婉曲的な表現をしたけど、それは女性の尊厳を踏みにじって男たちが欲望を満たす下劣な行為を指している。
イザベラがいくらセシリアにとって邪魔な存在であったとしても、こんなにおぞましいことを考えつくなんて正気の沙汰ではない。

禁じられた光魔法のひとつである《チャーム》は文字通り、異性を誘惑して自分に夢中にさせることができる魔法だけど、心に決めた相手がいる人には効かないんだって。
俺とエドワードがセシリアに魅了されなかったのは、彼女が編入してきた時点で俺たちがお互いに恋をしていたからだろう。
カールがどこからどう見ても魅了されてなさそうだったのも、マーカスとかリックが最初のうちはセシリアに少し好意的な反応を見せていたのも、真実を知った今となってはそういうことだったのかと納得してしまう。

そもそも光魔法が滅びたのって、もとをたどれば使い手たちによる《チャーム》の悪用が原因なんだって。
もう何百年も前の話だから正確な逸話は残ってないみたいだけど、この王国で《チャーム》が禁忌魔法のひとつに指定されているのは確かだ。
セシリアは私利私欲のために禁忌魔法を繰り返し使用している時点で、かなりの重罪に問われるだろう。
さらに、これまでイザベラに対して行ってきた仕打ちや誘拐計画を加味すると、間違いなく国外追放程度では済まないはずだ。

調査結果、証拠、証言などを踏まえたうえで、エドワードやイザベラと話し合いを重ねるなかで、春先に王宮で開かれるパーティーにてセシリアの断罪を行うことが決まった。

それに伴い、セバスチャン殿下にもパーティーに出席していただき、イザベラとの関係や婚約時期などについて公表してもらう運びになった。
セバスチャン殿下と実際に会ってお話するのは初めてだったけど、思ってたよりもヘタレっぽくてイザベラと相性が良さそうっていうのが率直な感想かな。
それでも考え方や受け答えはすごくしっかりしていて、この方になら安心してイザベラをお任せできそうだとも思った。妹がお嫁にいっちゃうのは寂しいけど、やっぱり嬉しさの方が上回る。

エドワードと俺は時折いちゃいちゃしながらも、セシリアの断罪に向けて、いろいろ入念に準備を重ねていた。
そうして忙しい日々を過ごしていると、ふとした瞬間、しみじみとした感傷に浸りたくなることがある。
この世界にウィリアム・エバンスとして転生したと気付いたときは、俺とイザベラがエドワードやセシリアに断罪される可能性に怯えていたのに。実際は俺とイザベラがエドワードを味方につけ、セシリアを断罪しようとしている。
それは、俺がウィリアムであって『ウィリアム』ではないからかもしれないし、この世界が現実のものであって『セカ愛』のものではないからかもしれない。
俺は神様じゃないからよくわかんないけど、俺が俺で良かったなって思う。
そんなふうに思える一番の要因は、エドワードが隣にいてくれることだろう。

「エディ……」
「ふふ。どうしたの、リアム。今日は甘えたい気分なのか?ほら、私の腕の中においで」

そっとエドワードの背中に腕を回し、胸元に頭を預けるように抱きついた。
優しく頭を撫でて甘やかしてもらいながら、この奇跡みたいな幸せをじんわりと噛み締める。
どんな形であれ、いつまでも胸を張って彼の隣に立っていられる人間でいたい。
俺はそんな想いを胸に、世界で一番愛しい人の唇に柔らかな口付けを贈った。
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