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幕間3 賢太奮闘記 皇峨輪編
犬は長い人の歴史の中でも、最高の友です!・・・猫は何かって?・・・最高のご主人様です、はい・・・。
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悔畔は完全に目標を賢太から太郎に変えて、身体を向ける。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
悔畔の臨戦態勢に太郎が身体を沈めて備える。
「待てや、デカブツ・・・どこいくんや?」
悔畔が太郎に正面を向けた背後で、賢太が何事もなかったかのようにスッと立ち上がる。
「ッ?!」〔ドゴンッ!〕
悔畔が賢太の方に顔を向けるや否や、その顔面に賢太の渾身の右ストレートが打ち込まれる。
賢太の右ストレートを食らって、悔畔が目を丸くした。
(ナッ?!・・・さっきよりも重いっ)
賢太の右ストレートを受けた悔畔の顔面にドスンと重い衝撃が走る。
「安く見られたもんやのぉ~・・・そないに俺は貧弱に見えたんか?」
賢太が左手で右肩を掴み、右腕をグルグルと回しながら悔畔との距離をさらに詰めていく。
「・・・・・・。」
悔畔は完全に目標を賢太に戻して、歯軋りをしながら睨んだ。
賢太と悔畔、対峙する二人を見る太郎。
(・・・ダメージを散々受けたと言うのに・・・先ほどとは比べ物にならないぐらい霊力が上がった・・・源泉のような沸きあがり・・・この青年はいったい・・・しかし、それでも・・・。)
太郎は賢太の変化に驚くが、それでも悔畔が圧倒していることを現実的に判断する。
〔ドゴンッ!バチンッ!・・・ズガンッ!バコンッ!〕
賢太と悔畔、二人はリングの中央で殴りあうように交互に互いの攻撃を受け合い、攻撃を繰り出していく。相手の攻撃で後方に身体を滑らすと、相手が中央に戻るのを待って、再び打ち合っていく。
「・・・・・・ッ。」
いつしか、二人は互いの攻撃を受けながら、笑みを浮かべている。
しかし、
〔バチャンッ!〕「ッ!?」
悔畔の何度目かの張り手を受けた賢太が後方に身体を滑らせた後、膝が笑って、体勢を沈めた。
「ヒャッヒャッヒャッヒャッ、賢太とかいったなっ・・・お前なかなかやるじゃねぇかっ!・・・どうだ、俺と一緒に来いっ・・・お前なら霊界でぬるま湯に浸かるよりもこっちにくれば、もっと強くなれるぞっ!」
悔畔は自分と真っ向から殴り合い、張り合ってきた賢太を素直に褒める。
「・・・・・・。」
悔畔の言葉に眉をひそめたのは太郎だった。
太郎は賢太の好戦的な態度に僅かながら危機感を覚えていた。もし、賢太が悔畔の誘いに乗るようなら・・・と、不安がよぎる。
「・・・そうやないねん・・・それじゃだめなんや・・・それこそ、ぬるま湯や・・・。」
賢太が片膝をつき、塞ぎ込みながら悔畔にそう答える。
「なんだと?」
賢太の思わぬ返答に困惑する悔畔。
「あいつは・・・あいつはお前らが言うぬるま湯で・・・俺なんかより何倍も強いねん・・・勝たなあかんねん・・・同じ土俵で向き合って、勝たな意味ないねん・・・お前らみたいに、弱いもんイジメで、強おなってもアイツには届かへん・・・絶対、届かへんねん・・・お断りや。」
賢太は片膝をついた状態からスッと立ち直り、ギラついた目を悔畔に向ける。
「・・・・・・そうか・・・残念だ・・・。」
悔畔は自分達の事を下に見られたことに憤慨して、これまで以上に殺気を放つ。
〔ザッ!〕
「ッ?!」
悔畔が賢太に迫ろうと足を前に一歩出そうとした瞬間、賢太の前に太郎が透かさず、割って入ってくる。
「何しとんねんっ!・・・もうええから、お前は美々子達の所に戻れやっ!」
賢太は自分の前に躍り出た太郎に悪態をつきながら、逃げるように促す。
「・・・それは出来ぬ相談だ・・・犬とは人の最大にして最高の友・・・友を見捨てる者は犬の風上にも置けぬ故・・・。」
太郎は悔畔を睨み付けながら自分の思いを賢太に伝える。
「・・・お前・・・。」
賢太は悔畔には二人では勝てないと思って、時間稼ぎしようとしていた覚悟が太郎の言葉で揺らいだ。
「全く持って、拙僧には、つくづく人を見る目が無い・・・これでは、師に怒られてしまうな・・・。」
太郎がそう言いながら顔を賢太の方に向けて、犬なりに舌を出して、笑って見せた。
「・・・ごちゃごちゃとやかましいやつらだ・・・もう飽きた・・・殺す・・・。」
悔畔が賢太達の息の根を止めるために歩き出す。
〔ザッ!〕
「オイッ!?」
悔畔の動きに合わせるかのように太郎が悔畔へと向かって、疾走する。その姿を見て、賢太が止めようと手を伸ばすが、それを太郎はスルリと抜けていく。
「・・・お前からかっ!」
迫って来る太郎を殺気立つ目で捉える悔畔。
「ワンッ!」
〔バコンッ!〕
「太郎っ!」
太郎が悔畔の目の前で止まって、遠吠えを放つ。しかし、その渾身の遠吠えを貫通するように悔畔の張り手が太郎を目掛けて、空を裂き、太郎を地面との間に押し込んで潰した。その光景に、賢太は思わず叫ぶ。
「まずは一匹・・・。」
悔畔は太郎を地面に叩きつけて、潰した後、スッと立ち上がり、賢太に照準を定め、目で射抜く。その時だった。
「ナッ?!」
賢太と悔畔はその光景に言葉を失う。
太郎が悔畔によって、押しつぶされた地面からキラキラと光の粒が湧き出し、賢太の方に飛んで行くと、賢太の周りを漂い始める。
「・・・どういうことや・・・。」
光の粒達に囲まれた賢太は不思議そうにその光景を見守る。
すると、その光の粒達が賢太の両手首に集まり出して、一層輝きを放つ。
(賢太よ・・・お前ならば、この力、託せると判断した・・・己が道を切り開き、拙僧に示して見せよ。)
賢太の頭の中に太郎の声が響き渡る。
「・・・なんやこれは・・・力が・・・溢れてくる・・・。」
賢太の両手首に集まった光の粒が、形を成して、腕輪となり顕現すると、賢太の体中に先ほどとは比べ物にならないぐらいの霊力が溢れ出して来るのを感じた。
「・・・・・・。」
悔畔はその光景を見て、言葉を完全に見失う。
悔畔は今まで対峙してきた存在は一瞬で消え去り、自分とは次元が違う存在が突然目の前に現れた事に、強者故に即座に感じ取ってしまった。
(これこそが、拙僧の本当の姿・・・皇峨輪・・・。)
太郎が賢太に力を与えた腕輪の名を告げる。
「・・・これが・・・。」
賢太は皇峨輪が顕現した自分の両腕に装着されている腕輪をマジマジと眺める。
「ありえんっ・・・ありえんありえんありえん・・・。」
悔畔は賢太を見ながら、身を震わせて、自分の目の前にある現実を否定し続ける。
「どないしたんや、おっさん・・・えろう汗かいとるで・・・。」
賢太はロウバイする悔畔をニヤニヤしながら、歩み寄っていく。
「馬鹿なっ!・・・お前はいったい・・・。」
完全に現実を見失った悔畔がモヤに包まれた頭で、必死にもがく。
「ナニモンやぁ~・・・ゆわれても、俺は俺やで・・・。」
賢太は悔畔の目の前まで来るとそこで立ち止まり、口角を上げながら悔畔を見上げる。
悔畔は賢太の霊力に圧倒されて、一歩また一歩と無意識に後退りしてしまう。
「あっ・・・ああああっ・・・。」
悔畔は無意識に賢太から退いた足と賢太との距離を見て、驚愕するしかなかった。
〔バゴンッ!〕
恐怖から逃げるように一撃を繰り出したのはもちろん悔畔。
しかし、次に目の前に当然のように現れた光景に悔畔は固まる。
「・・・・・・。」
賢太は先ほどまでは身体を持っていかれた悔畔の攻撃をその場で仁王立ちしたまま受け止めて、平然としていた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああ・・・。」
悔畔は受け止めきれない現実にいよいよ押しつぶされて、慟哭する。
悔畔はその大きなお尻を地面に預け、必死に賢太から距離をとろうともがき始める。
「おいおい・・・どうしたんや、おっさん・・・何をそんなに怖がっとるんや・・・そない逃げんでもええやんか・・・。」
完全に上に立った賢太が口が裂けんとばかりに口角を裂けさせて、悔畔の醜態を見下す。
「ひいいいいいいいいいいいいっ!・・・たたたたたっ、助けて、たすけてくれええええっ!」
悔畔は余りの恐怖に思わず、賢太に命乞いをする。
「・・・・・・お前はこれまで、命乞いしてきた人や猿に対して・・・どうしたんや?」
賢太は恐怖に顔を歪める悔畔に悪魔のような笑顔を近付けて、そう最後に尋ねた。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
悔畔の臨戦態勢に太郎が身体を沈めて備える。
「待てや、デカブツ・・・どこいくんや?」
悔畔が太郎に正面を向けた背後で、賢太が何事もなかったかのようにスッと立ち上がる。
「ッ?!」〔ドゴンッ!〕
悔畔が賢太の方に顔を向けるや否や、その顔面に賢太の渾身の右ストレートが打ち込まれる。
賢太の右ストレートを食らって、悔畔が目を丸くした。
(ナッ?!・・・さっきよりも重いっ)
賢太の右ストレートを受けた悔畔の顔面にドスンと重い衝撃が走る。
「安く見られたもんやのぉ~・・・そないに俺は貧弱に見えたんか?」
賢太が左手で右肩を掴み、右腕をグルグルと回しながら悔畔との距離をさらに詰めていく。
「・・・・・・。」
悔畔は完全に目標を賢太に戻して、歯軋りをしながら睨んだ。
賢太と悔畔、対峙する二人を見る太郎。
(・・・ダメージを散々受けたと言うのに・・・先ほどとは比べ物にならないぐらい霊力が上がった・・・源泉のような沸きあがり・・・この青年はいったい・・・しかし、それでも・・・。)
太郎は賢太の変化に驚くが、それでも悔畔が圧倒していることを現実的に判断する。
〔ドゴンッ!バチンッ!・・・ズガンッ!バコンッ!〕
賢太と悔畔、二人はリングの中央で殴りあうように交互に互いの攻撃を受け合い、攻撃を繰り出していく。相手の攻撃で後方に身体を滑らすと、相手が中央に戻るのを待って、再び打ち合っていく。
「・・・・・・ッ。」
いつしか、二人は互いの攻撃を受けながら、笑みを浮かべている。
しかし、
〔バチャンッ!〕「ッ!?」
悔畔の何度目かの張り手を受けた賢太が後方に身体を滑らせた後、膝が笑って、体勢を沈めた。
「ヒャッヒャッヒャッヒャッ、賢太とかいったなっ・・・お前なかなかやるじゃねぇかっ!・・・どうだ、俺と一緒に来いっ・・・お前なら霊界でぬるま湯に浸かるよりもこっちにくれば、もっと強くなれるぞっ!」
悔畔は自分と真っ向から殴り合い、張り合ってきた賢太を素直に褒める。
「・・・・・・。」
悔畔の言葉に眉をひそめたのは太郎だった。
太郎は賢太の好戦的な態度に僅かながら危機感を覚えていた。もし、賢太が悔畔の誘いに乗るようなら・・・と、不安がよぎる。
「・・・そうやないねん・・・それじゃだめなんや・・・それこそ、ぬるま湯や・・・。」
賢太が片膝をつき、塞ぎ込みながら悔畔にそう答える。
「なんだと?」
賢太の思わぬ返答に困惑する悔畔。
「あいつは・・・あいつはお前らが言うぬるま湯で・・・俺なんかより何倍も強いねん・・・勝たなあかんねん・・・同じ土俵で向き合って、勝たな意味ないねん・・・お前らみたいに、弱いもんイジメで、強おなってもアイツには届かへん・・・絶対、届かへんねん・・・お断りや。」
賢太は片膝をついた状態からスッと立ち直り、ギラついた目を悔畔に向ける。
「・・・・・・そうか・・・残念だ・・・。」
悔畔は自分達の事を下に見られたことに憤慨して、これまで以上に殺気を放つ。
〔ザッ!〕
「ッ?!」
悔畔が賢太に迫ろうと足を前に一歩出そうとした瞬間、賢太の前に太郎が透かさず、割って入ってくる。
「何しとんねんっ!・・・もうええから、お前は美々子達の所に戻れやっ!」
賢太は自分の前に躍り出た太郎に悪態をつきながら、逃げるように促す。
「・・・それは出来ぬ相談だ・・・犬とは人の最大にして最高の友・・・友を見捨てる者は犬の風上にも置けぬ故・・・。」
太郎は悔畔を睨み付けながら自分の思いを賢太に伝える。
「・・・お前・・・。」
賢太は悔畔には二人では勝てないと思って、時間稼ぎしようとしていた覚悟が太郎の言葉で揺らいだ。
「全く持って、拙僧には、つくづく人を見る目が無い・・・これでは、師に怒られてしまうな・・・。」
太郎がそう言いながら顔を賢太の方に向けて、犬なりに舌を出して、笑って見せた。
「・・・ごちゃごちゃとやかましいやつらだ・・・もう飽きた・・・殺す・・・。」
悔畔が賢太達の息の根を止めるために歩き出す。
〔ザッ!〕
「オイッ!?」
悔畔の動きに合わせるかのように太郎が悔畔へと向かって、疾走する。その姿を見て、賢太が止めようと手を伸ばすが、それを太郎はスルリと抜けていく。
「・・・お前からかっ!」
迫って来る太郎を殺気立つ目で捉える悔畔。
「ワンッ!」
〔バコンッ!〕
「太郎っ!」
太郎が悔畔の目の前で止まって、遠吠えを放つ。しかし、その渾身の遠吠えを貫通するように悔畔の張り手が太郎を目掛けて、空を裂き、太郎を地面との間に押し込んで潰した。その光景に、賢太は思わず叫ぶ。
「まずは一匹・・・。」
悔畔は太郎を地面に叩きつけて、潰した後、スッと立ち上がり、賢太に照準を定め、目で射抜く。その時だった。
「ナッ?!」
賢太と悔畔はその光景に言葉を失う。
太郎が悔畔によって、押しつぶされた地面からキラキラと光の粒が湧き出し、賢太の方に飛んで行くと、賢太の周りを漂い始める。
「・・・どういうことや・・・。」
光の粒達に囲まれた賢太は不思議そうにその光景を見守る。
すると、その光の粒達が賢太の両手首に集まり出して、一層輝きを放つ。
(賢太よ・・・お前ならば、この力、託せると判断した・・・己が道を切り開き、拙僧に示して見せよ。)
賢太の頭の中に太郎の声が響き渡る。
「・・・なんやこれは・・・力が・・・溢れてくる・・・。」
賢太の両手首に集まった光の粒が、形を成して、腕輪となり顕現すると、賢太の体中に先ほどとは比べ物にならないぐらいの霊力が溢れ出して来るのを感じた。
「・・・・・・。」
悔畔はその光景を見て、言葉を完全に見失う。
悔畔は今まで対峙してきた存在は一瞬で消え去り、自分とは次元が違う存在が突然目の前に現れた事に、強者故に即座に感じ取ってしまった。
(これこそが、拙僧の本当の姿・・・皇峨輪・・・。)
太郎が賢太に力を与えた腕輪の名を告げる。
「・・・これが・・・。」
賢太は皇峨輪が顕現した自分の両腕に装着されている腕輪をマジマジと眺める。
「ありえんっ・・・ありえんありえんありえん・・・。」
悔畔は賢太を見ながら、身を震わせて、自分の目の前にある現実を否定し続ける。
「どないしたんや、おっさん・・・えろう汗かいとるで・・・。」
賢太はロウバイする悔畔をニヤニヤしながら、歩み寄っていく。
「馬鹿なっ!・・・お前はいったい・・・。」
完全に現実を見失った悔畔がモヤに包まれた頭で、必死にもがく。
「ナニモンやぁ~・・・ゆわれても、俺は俺やで・・・。」
賢太は悔畔の目の前まで来るとそこで立ち止まり、口角を上げながら悔畔を見上げる。
悔畔は賢太の霊力に圧倒されて、一歩また一歩と無意識に後退りしてしまう。
「あっ・・・ああああっ・・・。」
悔畔は無意識に賢太から退いた足と賢太との距離を見て、驚愕するしかなかった。
〔バゴンッ!〕
恐怖から逃げるように一撃を繰り出したのはもちろん悔畔。
しかし、次に目の前に当然のように現れた光景に悔畔は固まる。
「・・・・・・。」
賢太は先ほどまでは身体を持っていかれた悔畔の攻撃をその場で仁王立ちしたまま受け止めて、平然としていた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああ・・・。」
悔畔は受け止めきれない現実にいよいよ押しつぶされて、慟哭する。
悔畔はその大きなお尻を地面に預け、必死に賢太から距離をとろうともがき始める。
「おいおい・・・どうしたんや、おっさん・・・何をそんなに怖がっとるんや・・・そない逃げんでもええやんか・・・。」
完全に上に立った賢太が口が裂けんとばかりに口角を裂けさせて、悔畔の醜態を見下す。
「ひいいいいいいいいいいいいっ!・・・たたたたたっ、助けて、たすけてくれええええっ!」
悔畔は余りの恐怖に思わず、賢太に命乞いをする。
「・・・・・・お前はこれまで、命乞いしてきた人や猿に対して・・・どうしたんや?」
賢太は恐怖に顔を歪める悔畔に悪魔のような笑顔を近付けて、そう最後に尋ねた。
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