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第2話 震える肉体、理性の消失
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天幕の中は、外の喧騒が遠く聞こえるほどの静寂に包まれていた。
ゾラは寝台の上にどっしりと腰を下ろし、挑発的にアベルを見上げた。
「さあ、始めなよ。あんたのその『指先』とやらが、私の剛剣よりどれほど鋭いのか、見せてみろ」
アベルは無言でゾラの前に跪いた。
その手つきは、恋人を愛でるような甘いものではなく、まるで熟練の彫刻家が素材を吟味するように、彼女の足首からふくらはぎへと伸びていった。
「……筋肉が、素晴らしい。だが、酷使しすぎている。ここを少し、押さえるだけで――」
アベルの指先が、ゾラの膝裏の特定の急所を突いた。
「っ……!? な、何を……」
電流が走ったような衝撃に、ゾラの身体が跳ねた。
力で対抗しようとしたが、アベルの指は絶妙な加減で彼女の筋繊維を弛緩させていく。彼はそのまま、ゾラの革鎧の隙間に指を潜り込ませ、肋骨の際、首筋、そして脇の下へと、戦士が意識したこともない「弱点」を次々と正確に突いていった。
「あ……が、はぁっ……! 待っ、何を……そんな場所……っ」
「戦場では鍛えられない場所が、人間の身体には無数にある。君は、自分の身体の本当の声を聴いたことがないようだね」
アベルの唇がゾラの耳元を掠める。
その声は氷のように冷ややかで、同時に脳の奥を痺れさせるような甘さを持っていた。
そこからは、ゾラにとっての未知の領域だった。
これまで彼女が「強い」と認めてきた男たちは、皆、獣のように力任せに彼女を組み敷き、力と力の衝突を楽しんだ。
だが、アベルは違う。
彼はゾラに「力」を使わせない。
彼が指を動かすたびに、ゾラの強靭な筋肉は意志に反して解(ほど)かれ、代わりに底知れぬ熱が身体の芯から噴き出してくる。
「いや……だ、こんな……ふざけ、るな……ッ!」
ゾラはアベルの肩を突き飛ばそうとしたが、指先に力が入らない。
アベルは彼女の悶える姿を冷徹に観察しながら、今度は彼女の股関節の付け根、神経が密集する一点を深く、執拗に圧迫した。
「あああぁぁッ!!」
ゾラの背中が弓なりに反った。
視界が火花を散らし、真っ白な快楽の濁流が脳を突き抜ける。
(負ける……!? 私は、こんな……ひ弱な男に……!?)
悔しさと屈辱。
だが、それ以上に肉体が、アベルの指が次にもたらす刺激を狂おしいほどに求めていた。
彼女が誇ってきた戦士としての理性が、皮膚の薄い一点を弄られるだけで、砂の城のように崩れていく。
アベルは、もはや痙攣し、よだれを垂らして喘ぐことしかできないゾラの顔を覗き込んだ。
「君の負けだ、戦士長。……いや、今はただの『牝』かな」
その言葉を最後に、ゾラの意識は極限の絶頂の果てに暗転した。
翌朝。
ゾラが目を覚ました時、アベルの姿は既になかった。
身体中に残る、暴力的なまでの倦怠感。
そして、昨夜の光景が断片的に脳裏をよぎる。
(あんな……あんな男に……。私は……!)
「姐さん! お目覚めですかい!」
天幕の外から、部下たちの野卑な声が響く。
ゾラは慌てて着衣を整え、顔の火照りを隠した。
「うるさいよ! さっさと撤収準備を済ませな! ……昨夜は、ただ酒が回って寝ただけさ。あの優男、全然大したことなかったよ!」
ゾラは強がって怒鳴り散らした。
だが、部下たちが立ち去った後、彼女の指先は無意識に、昨夜アベルが触れた場所をなぞっていた。
そこに、かつての「女王」の余裕はなかった。
ただ、自分の肉体が「知らない快楽」を覚えてしまったことへの、底知れぬ恐怖だけが、褐色のアキレス腱に絡みついていた。
ゾラは寝台の上にどっしりと腰を下ろし、挑発的にアベルを見上げた。
「さあ、始めなよ。あんたのその『指先』とやらが、私の剛剣よりどれほど鋭いのか、見せてみろ」
アベルは無言でゾラの前に跪いた。
その手つきは、恋人を愛でるような甘いものではなく、まるで熟練の彫刻家が素材を吟味するように、彼女の足首からふくらはぎへと伸びていった。
「……筋肉が、素晴らしい。だが、酷使しすぎている。ここを少し、押さえるだけで――」
アベルの指先が、ゾラの膝裏の特定の急所を突いた。
「っ……!? な、何を……」
電流が走ったような衝撃に、ゾラの身体が跳ねた。
力で対抗しようとしたが、アベルの指は絶妙な加減で彼女の筋繊維を弛緩させていく。彼はそのまま、ゾラの革鎧の隙間に指を潜り込ませ、肋骨の際、首筋、そして脇の下へと、戦士が意識したこともない「弱点」を次々と正確に突いていった。
「あ……が、はぁっ……! 待っ、何を……そんな場所……っ」
「戦場では鍛えられない場所が、人間の身体には無数にある。君は、自分の身体の本当の声を聴いたことがないようだね」
アベルの唇がゾラの耳元を掠める。
その声は氷のように冷ややかで、同時に脳の奥を痺れさせるような甘さを持っていた。
そこからは、ゾラにとっての未知の領域だった。
これまで彼女が「強い」と認めてきた男たちは、皆、獣のように力任せに彼女を組み敷き、力と力の衝突を楽しんだ。
だが、アベルは違う。
彼はゾラに「力」を使わせない。
彼が指を動かすたびに、ゾラの強靭な筋肉は意志に反して解(ほど)かれ、代わりに底知れぬ熱が身体の芯から噴き出してくる。
「いや……だ、こんな……ふざけ、るな……ッ!」
ゾラはアベルの肩を突き飛ばそうとしたが、指先に力が入らない。
アベルは彼女の悶える姿を冷徹に観察しながら、今度は彼女の股関節の付け根、神経が密集する一点を深く、執拗に圧迫した。
「あああぁぁッ!!」
ゾラの背中が弓なりに反った。
視界が火花を散らし、真っ白な快楽の濁流が脳を突き抜ける。
(負ける……!? 私は、こんな……ひ弱な男に……!?)
悔しさと屈辱。
だが、それ以上に肉体が、アベルの指が次にもたらす刺激を狂おしいほどに求めていた。
彼女が誇ってきた戦士としての理性が、皮膚の薄い一点を弄られるだけで、砂の城のように崩れていく。
アベルは、もはや痙攣し、よだれを垂らして喘ぐことしかできないゾラの顔を覗き込んだ。
「君の負けだ、戦士長。……いや、今はただの『牝』かな」
その言葉を最後に、ゾラの意識は極限の絶頂の果てに暗転した。
翌朝。
ゾラが目を覚ました時、アベルの姿は既になかった。
身体中に残る、暴力的なまでの倦怠感。
そして、昨夜の光景が断片的に脳裏をよぎる。
(あんな……あんな男に……。私は……!)
「姐さん! お目覚めですかい!」
天幕の外から、部下たちの野卑な声が響く。
ゾラは慌てて着衣を整え、顔の火照りを隠した。
「うるさいよ! さっさと撤収準備を済ませな! ……昨夜は、ただ酒が回って寝ただけさ。あの優男、全然大したことなかったよ!」
ゾラは強がって怒鳴り散らした。
だが、部下たちが立ち去った後、彼女の指先は無意識に、昨夜アベルが触れた場所をなぞっていた。
そこに、かつての「女王」の余裕はなかった。
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