28 / 126
聖女を追放した国の物語
第27話 打倒できる化け物 B
しおりを挟む「聖女のヤツが居やがるのは、間違いないな――」
ローゼリアがどういうつもりでこんな戦いを仕掛けてきているのかは謎だが、奴の回復スキルは相当に厄介だ。
敵兵には怪我を負うことへの恐れが無い。
味方の兵士たちに、動揺が広がる。
自軍の士気のケアは、後回しだ。
俺は敵の能力を詳細に把握しようと、戦場を観察する。
聖女の回復能力から取り残されて、転がっている敵もチラホラいる。
流石に死んだ奴は、復活しないようだ――
どうやら聖女の能力でも、蘇生はできないようだ。
復活できるのは重傷者までだ。
敵を即死させれば、数を減らすことは出来る。
問題はこの世界の武器では、鎧で防御を固めた敵に対して、即死レベルのダメージを与えることは難しいことだ。
攻城戦で敵との距離がある分、なおさらだ。
当たり所が悪ければ死ぬ――
という攻撃しかできない。
敵にあの回復が無ければ、それでも十分なんだが……。
重傷者にとどめを刺して回ることも難しい。
加えて敵側に聖女がいることは、もう疑いようがないだろう。
この事実は自軍の士気を、低下させ続けてしまう。
敵側の弱点は、死んだ者は蘇生できないこと。
そして、聖女の力も無限ではないということだ。
回復の力を使い続ければ、必ず枯渇する。
だがそれがいつになるのかは、俺にはわからない。
それにこちらも、弓矢や投石に使う石には数に限りがある。
消耗戦になると――
聖女を敵に回しているという、心理的負担があるこちらが不利か……。
戦闘開始から三日が経過した。
敵軍の動きはワンパターンで、朝に第一陣が攻撃を行い、昼に聖女による回復が行われ、その後に入れ替わった第二陣が夜まで攻撃して、日が落ちる前に聖女の回復が入り、敵軍は自陣に戻る。
時間外に、回復が飛んでくるときもある。
戦術というよりは、聖女の気まぐれだろう。
夜襲はこれまでの所は無い。
要塞相手の夜襲は、嫌がらせくらいの意味しかないからな。
夜通し攻めればこちらを疲弊させる効果はあるが、そこまでする必要もなく、こちらは精神的に疲れきっている。
どれだけ撃退しても、復活して攻撃してくる。
きりがない。
まだ戦闘開始から三日目なのに、城内の兵士は憔悴し出している。
聖女も死者を生き返らすことは出来ないので、敵軍も少しずつ減ってはいる。
兵士たちの戦いは、無駄ではない。
だが目の前で倒したはずの敵が、復活するインパクトが強すぎる。
自分たちの命がけの戦いが、無駄に思える。
それに、負傷を恐れずに向かってくる敵というのは、得体の知れない怖さがある。
生物の理から逸脱している。
味方の部隊には、早くも厭戦気分が出始めている。
防衛戦ということもあり、味方の被害はそれほどでもないのが救いだ。
しかし、このままではマズいのはたしかだ。
そろそろ手を打つ必要がある。
聖女による傷の回復も無限には出来ない。
回復が一日に二度が基本なのは、使用制限か力の温存を考えてのことだろう。
聖女はかなり厄介な敵だが、どうやっても倒せない無敵の存在ではない。
倒しうる化け物だ。
これから、それを証明してやる。
昼になり、敵軍の回復と交代の時間になった。
敵はいつも通り、入れ替わりを開始する。
そのタイミングで、俺は要塞の門を開けて一騎で飛び出した。
敵軍の真っただ中に騎馬で突っ込んで、左手に持った槍で周囲の敵を薙ぎ払う。
俺は邪竜王との戦いで、大幅にレベルを上げている。
特に左腕は、邪竜の呪いでさらに力が上がっている。
人知を超えた怪力で振り回される槍は、鎧を着こんで重量の増している敵兵を、いとも容易く弾き飛ばしていく。
予想外の襲撃者の登場に、敵は混乱し逃げ惑う。
攻城戦の為か槍を持った敵は少なく、歩兵も騎馬も剣や弓装備が多い。
騎馬で接近戦を仕掛けてくる敵の攻撃や、遠距離からの弓は、右手に装備している剣で捌き、対処しきれなかった分は鎧が弾いてくれる。
俺の装備品は全て、邪竜王の牙や爪、鱗を使い作らせた特注品だ。
生半可な攻撃では、傷ひとつ付かない。
俺の戦いぶりを見て、味方の要塞から歓声が上がる。
なるべく多くの兵士に、観戦しておくように命じてある。
俺はひとしきり暴れまわってから、槍を天に掲げて大きく三回回す。
それを合図に再び砦の門が開き、待機していた騎馬隊が出撃する。
俺の二十一人の親衛隊だ。
騎馬隊は敵軍に突撃を行い、俺が暴れまわって破壊した敵の陣形をさらに崩す。
騎馬による突撃は攻撃力が高い。
敵軍はこれまでの攻防とは比べ物にならない死者を出した。
即死級の者が多いからか、回復を行ったばかりだからか――
聖女による回復は来ない。
俺は撤退の合図を出して、騎馬隊を要塞内へと引き上げさせる。
最後に周りを見渡して、取り残された者はいないかを確認してから――
敵と味方に見せつけるように悠々と、俺は砦に帰還した。
34
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる