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幼馴染は足が痛い(嘘)
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「ロゼリア様、ごめんなさいねぇ。私、アルベルト様にお願いしちゃったの。だって……」
ミナは上目遣いでアルベルト様を見上げます。
「足が痛くて、歩けなかったんですもの」
(……は? 足が痛い?)
「そうなんだよ、ロゼリア! ミナは足をくじいてしまったらしいんだ。可哀想だろう? だから僕が、ミナを教室まで肩を貸してあげることにしたんだ」
アルベルト様が、正義のヒーローのような顔で言いました。そして、私に向かって信じられない言葉を続けます。
「というわけだから、ロゼリア。君は一人で教室へ行ってくれ。僕はミナを支えてあげないといけないから、君のエスコートはできない。わかるね?」
周りの生徒たちが、ざわざわと騒ぎ始めました。
「あれ、婚約者のロゼリア様を置いていくの?」
「でも、怪我人を助けるなんて、アルベルト様はお優しいわ」
「ミナさん、大丈夫かしら……」
ああ、なんてことでしょう。周りの人たちは完全に騙されています。アルベルト様も、自分が素晴らしいことをしていると信じ込んでいます。
でも私は知っています。私の目は、誤魔化せません。
私の得意な魔法は【記録・再生】です。私が見たもの、聞いたものは、すべて私の頭の中に映像として保存されます。忘れたくても忘れられません。そして、その映像はいつでも頭の中で再生できます。
私の頭の中で、カチッ、とスイッチが入る音がしました。
【記録再生、スタート】
――時刻は、今から三十分前。場所は、学園の裏手にある花壇の近く。私は、侍女と一緒に馬車で通りかかりました。そこで私は見たのです。
『きゃはは! 捕まえてごらんなさーい!』
『待ってよリリィ~!』
ピンク色の髪のミナが、友人のリリィと追いかけっこをしていました。それはもう元気いっぱいです。ウサギみたいにピョンピョン跳ねて、高い段差からジャンプして着地! さらにクルッと一回転! 騎士団の精鋭たちも感心するほどの運動神経でした。むしろ健康そうで、足なんてどこも悪くありません。
【再生終了】
現実に戻ります。目の前では、ミナが「あいたた……」と嘘泣きをしながら、アルベルト様にさらに体重を預けています。アルベルト様は、心配そうに彼女の腰を支えています。
(ミナの嘘つき!)
喉まで出かかった言葉を私は飲み込みました。今ここで「さっき走り回っていたのを見ました!」と言っても誰も信じないでしょう。アルベルト様は「君はミナが羨ましいから、そんな嘘をつくのか! 心が冷たい!」と怒鳴るに決まっています。彼はそういう人です。思い込んだら一直線で私の言葉なんて耳に入りません。
私の中で、魔法の力が暴れだしそうになりました。私の目は、真実を映し出すことができます。今ここで、私の目からビームのように「さっきの映像」を空中に映し出してしまえば、みんなに真実を見せることができます。ミナが元気に飛び跳ねている姿を大画面で上映できるのです。
(やりたい……っ! 今すぐ、あの嘘つきミナの化けの皮を剥がしてやりたい!)
私の右目が熱くなります。魔力が集まってきている証拠です。胃の痛みと怒りの熱さで倒れそうになった時。
「……おはよう、ロゼリア嬢。顔色が悪いな」
すっと、私の視界が遮られました。冷たくて落ち着いた声。そして、私の前に立ちはだかった背の高い影。
私の友人、騎士団長の息子のキース様でした。彼は、黒い髪をさらりと揺らして、私とアルベルト様たちの間に壁のように立ちました。
「キース……」
「ロゼリア、目が充血しているぞ。また【記録】が暴発しそうなのか?」
キース様は、誰にも聞こえないような小声で私に囁きました。彼は私の魔法のことを知っている数少ない理解者です。そして、彼が得意な魔法は【結界・遮断】で彼が私の前に立つと私の荒れ狂う魔力が、まるで冷たい水に浸されたように静まっていくのがわかります。
ミナは上目遣いでアルベルト様を見上げます。
「足が痛くて、歩けなかったんですもの」
(……は? 足が痛い?)
「そうなんだよ、ロゼリア! ミナは足をくじいてしまったらしいんだ。可哀想だろう? だから僕が、ミナを教室まで肩を貸してあげることにしたんだ」
アルベルト様が、正義のヒーローのような顔で言いました。そして、私に向かって信じられない言葉を続けます。
「というわけだから、ロゼリア。君は一人で教室へ行ってくれ。僕はミナを支えてあげないといけないから、君のエスコートはできない。わかるね?」
周りの生徒たちが、ざわざわと騒ぎ始めました。
「あれ、婚約者のロゼリア様を置いていくの?」
「でも、怪我人を助けるなんて、アルベルト様はお優しいわ」
「ミナさん、大丈夫かしら……」
ああ、なんてことでしょう。周りの人たちは完全に騙されています。アルベルト様も、自分が素晴らしいことをしていると信じ込んでいます。
でも私は知っています。私の目は、誤魔化せません。
私の得意な魔法は【記録・再生】です。私が見たもの、聞いたものは、すべて私の頭の中に映像として保存されます。忘れたくても忘れられません。そして、その映像はいつでも頭の中で再生できます。
私の頭の中で、カチッ、とスイッチが入る音がしました。
【記録再生、スタート】
――時刻は、今から三十分前。場所は、学園の裏手にある花壇の近く。私は、侍女と一緒に馬車で通りかかりました。そこで私は見たのです。
『きゃはは! 捕まえてごらんなさーい!』
『待ってよリリィ~!』
ピンク色の髪のミナが、友人のリリィと追いかけっこをしていました。それはもう元気いっぱいです。ウサギみたいにピョンピョン跳ねて、高い段差からジャンプして着地! さらにクルッと一回転! 騎士団の精鋭たちも感心するほどの運動神経でした。むしろ健康そうで、足なんてどこも悪くありません。
【再生終了】
現実に戻ります。目の前では、ミナが「あいたた……」と嘘泣きをしながら、アルベルト様にさらに体重を預けています。アルベルト様は、心配そうに彼女の腰を支えています。
(ミナの嘘つき!)
喉まで出かかった言葉を私は飲み込みました。今ここで「さっき走り回っていたのを見ました!」と言っても誰も信じないでしょう。アルベルト様は「君はミナが羨ましいから、そんな嘘をつくのか! 心が冷たい!」と怒鳴るに決まっています。彼はそういう人です。思い込んだら一直線で私の言葉なんて耳に入りません。
私の中で、魔法の力が暴れだしそうになりました。私の目は、真実を映し出すことができます。今ここで、私の目からビームのように「さっきの映像」を空中に映し出してしまえば、みんなに真実を見せることができます。ミナが元気に飛び跳ねている姿を大画面で上映できるのです。
(やりたい……っ! 今すぐ、あの嘘つきミナの化けの皮を剥がしてやりたい!)
私の右目が熱くなります。魔力が集まってきている証拠です。胃の痛みと怒りの熱さで倒れそうになった時。
「……おはよう、ロゼリア嬢。顔色が悪いな」
すっと、私の視界が遮られました。冷たくて落ち着いた声。そして、私の前に立ちはだかった背の高い影。
私の友人、騎士団長の息子のキース様でした。彼は、黒い髪をさらりと揺らして、私とアルベルト様たちの間に壁のように立ちました。
「キース……」
「ロゼリア、目が充血しているぞ。また【記録】が暴発しそうなのか?」
キース様は、誰にも聞こえないような小声で私に囁きました。彼は私の魔法のことを知っている数少ない理解者です。そして、彼が得意な魔法は【結界・遮断】で彼が私の前に立つと私の荒れ狂う魔力が、まるで冷たい水に浸されたように静まっていくのがわかります。
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