幼子達と子守役のモフモフたちと

神無月

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第2章 幼子たちは、もふもふな子守役と出会う

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案内人に勧められて、幼子たちは内壁の穴を潜り、その奥の空洞に入っていった。

その空洞は、幼子たちが入り口から想像したよりも広くて、ゆきとかすみはさっそく内部の探検を始めた。

しずくも中に入りぐるりと見まわすと、壁の凸凹が低い場所に多かった。

中でも特に低くて広い段差は、しずくやゆきが使うには丁度良い高さだった。

 (あの高さと広さの窪み、思わず寝転んで見たくなる~

 こっちは少し高めかな~?それでも長たちには、低すぎだろうね~

 あ~、なんだか楽しくなってきた~ゆきもかすみも夢中だね~)


しずくがあちこち見ている間に、ゆきも頻りに段差を昇り降りしてはふんふん鼻を利かせて、何かを確かめている様だった。

かすみは、すべての窪みを見るつもりか、空洞の中を飛び廻っていた。

案内人も空洞に入ってきて、幼子たちの様子を見ていたが、納得したように頷いて言った。


 『やっぱりそうなの、長たちの言う通り、ここはあなたたちにちょうどいい大きさなの。

 この巨木の長の許しも出てるし、此処はだれも使ってないし、あなたたち、ここで寝起きするといい、なの。』

急な提案に、幼子たちの動きがぴたりと止まった。


『森の長から、あなたたちは当分この森に居ると聞いてる、なの。

 それなら、ここにいる間寝起きする場所は早く決めるべきなの。

 そしてこの穴があなたたちには丁度いい、ということだと思う、なの。』


案内人は前足を組み、うんうん頷きながら薄紅色の耳をひょこひょこ動かして一人で納得している。

それを聞いた幼子たちの方はおそるおそる、内心大騒ぎで手や尾っぽを振り回して、何度も確認した。


 「ゆちとかしゅみとしじゅくで、こにょくーどーを、しゅきにちていいにょ?

 『この空洞を、好きにしても、いいの?』

 ここに、じゅっといても、いいにょ?

 『ここに、ずっといても、いいの?』」


驚きと興奮でしずくの口話は、かなりたどたどしくなっていた。

それでも何度も確認する幼子たちの、心話の方はしっかりと離れた場所まで届いていたようだ。


 「ほんちょに!」

 「わふっ!(いっしょのすあな!)」

 「ぴぴっ!(ずっとすむ!)」

 『もちろんなの、だからお願い落ち着いてなの。いっぺんに話しても聞き取れない、なの!』


案内人が、手足に尾っぽまで振って喜びに沸く幼子たちを、何とかなだめていると、どこからか声が届いた。

 『ほ~っ、やはりこの穴の奥でしたかの~

 あなた方が、ここを気に入ったのなら何よりですがの~

 もう少し落ち着いてはどうですかの~

 あなた方皆の心話が辺りに響き渡ってますが、良いのですかの~』


振り向いた案内人につられて幼子たちが振り返ると、森の長が穴の入り口から覗き込んでいた。

驚いた幼子たちが再びピタリと動きを止め、辺りは急に静かになった。

それから、森の長の言葉を理解したしずくの頭が、ようやく動き出した。


 「おしゃしゃん、うるしゃくちてごめんなしゃい…

 しじゅく、おはにゃしのじゃま、ちまちたか…」
 
 
しょんぼりして声も小さくなっているしずくに、森の長は微笑ましげな目を向けた。


 『ほほ~っ、丁度休憩となったので、少し様子を見に来たのですがの~

 邪魔どころか、あなた方がこの森を好きだという気持ちが伝わってきて、皆も喜んでいますの~

 あの程度の心話は全然うるさくありませんしの~ 

 それにあなた方は、急に当分の間この森に住むこととなりましたからの~

 ここで暮らすことを、そんなに喜んでもらえて、安心しておりますの~

 この空洞の事なら、ずっと使ってくれても構いませんしの~』


そのように言われて、またもや感謝感激の気持ちをあふれさせる幼子たちだった。

 「わふっ!わう~ん…(すあないっしょ!うれし~)」

 「ぴぴっ!ぴぴぴ~(すてきなくぼみ!ずっといっしょ~)」

だがすぐに気を取り直して、しずくがまとめて感謝を示すことにした。


 「もりのおしゃしゃん、ありあとごじゃいましゅ。

 いりゃっちゃい、いわりぇて、うれちかたでしゅ。
 
 こんにゃちれーな、あちゃらちいとこよ、よーいちてもやって、うえちいでしゅ。

 みなしゃんも、ありあとごじゃましゅ。」


たどたどしくも丁寧なお辞儀まで付けた幼子達のお礼を、にこにこと聞いていた長たちだった。


 『丁寧な挨拶どうも恐縮ですかの~

 ところでこの空洞が新しいと、誰かに聞きましたかの~

 もうだれかと友達になりましたのかの~』


 「あんにゃいにんしゃんが、だえもちゅかわない、いいまちた。

 しょえに、ここにょじぇんぶ、ちろくてちれーでしゅ~

 あちゃらちいかや、ちろくてちれーでしゅよね?」


 『ほ~っ、随分と仲良しになったのですかの~

 ほほっ、案内を任せてよかったですかの~

 でもですな、白いとは何の事ですかの~新しいと何かが白いのですかの~?』

森の長は少し不思議そうに尋ね返した。

それに対して、しずくも片言で不思議そうに答えた。


 「こにょあにゃの、あかりゅいの、でしゅよ?

 てんじょーのえだ?でちたよね? 

 ありぇも、こりぇも、いりくちのも、じぇんぶ!

 ちろくて、ちれーでしゅね~

 あ~もちろんゆちのふわふわ、いちばんちろくて、しゅてきでしゅよ~」


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