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第一章
プロローグ
しおりを挟むどうして、こうなってしまったのかしら。
私はただ、ひっそりと暮らして生きたかっただけなのに…
カルロス王国
それが私が生まれた国。
我が国では女の子の出生率が極端に少なく、一妻多夫制という他国と比較しても、数少ない配偶システムを導入している国である。
多くの学者がこの謎を解こうと研究しているが、原因は謎のまま、約300年が経とうとしている。
そして、貴族や王族も、例外はなく、貴重な女性に嫁ぐ夫たちは、妻の実家の爵位に入り、1人の妻を共有し、子どもが出来た場合、男の子の場合は、実の父親が、女の子の場合は、家族全員で守り、育てる。
なぜ夫が多数いて、父親が分かるかというと、子どもは必ず父親の瞳の色と同じ色で産まれてくる。
だから、何人夫を持っても良いが、瞳の色だけは、意識しなければならないのだ。
ある侯爵家の一室では、1人の女性がまさに今、子どもを出産しようとしている。別室では、4人の男性と、2人の男の子が今か今かとその時を待っていた。
バタバタと外が騒がしくなり、男性達はソワソワと落ち着きがない。すると、外からノック音と共に、執事の声が聴こえてきた。
「ご報告いたします、旦那様方! 先程、奥様がお嬢様を御産みになられました! 瞳はエメラルドグリーンです!」
その報告を受け、同じ色の瞳を持つ、第一夫、レオナルド・ランスロットは、目を見開く。
バタバタと走ってくる音が聞こえ、少し息を乱したレオナルドが部屋に入ってくる。
レオナルドは、エメラルドグリーンの瞳を細め、出産を終え、産まれたばかりの赤子を抱いた女性に寄り添う。
「あぁ、可愛い娘だ…。エマ、お疲れ様…。」
そっと頭を撫で、おでこにチュッと軽いキスを落とし労りの言葉をかけると、母である、エマ・ランスロットは透き通るようなスカイブルーの瞳で父を見つめ、
「この子に会わせて貰えて…私も嬉しいわ。レオ、私、幸せよ。」
腰まであるプラチナブロンドの髪を後ろでまとめ、出産後だからか、少し頬が紅く熱っている。
コンコン、と、ノック音がし、彼女が返事をすると、今まで外で待ち構えていた3人の夫と、2人の子ども達が出産したばかりの妻を労り、産まれたばかりの赤子を一目見ようと入ってくる。
「「「エマ、お疲れ様。」」」
「みんな、ありがとう。」
「うわぁ~可愛い~な~!」
「この子は美人に育つぞー!目鼻立ちはエマにそっくりだ!」
「僕も見たい~!」
マジマジと見入る男どもに、レオナルドは一喝する。
「おいっ!そんなに一気に全員で近づくなよっ!娘がビックリするだろう!」
「名前は決まってるのか?」
1人の男性がレオナルドに声をかける。
「あぁ。この子の名前は……」
「素敵ね」
エマが微笑みながら頷き、赤子を覗き込む。
そして私、ミカエラ・ランスロットが産まれました。
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