籠の中の令嬢

ワゾースキー

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第二章

2日目の朝

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 どれだけ眠っていたのだろか。目が覚めると、既に部屋に差し込む光で部屋は明るい。ミカエラは、眩しそうに目に手を当てると、手首には鎖に繋がれていた赤い跡がついている。
 布団に寝かされ、身も綺麗にされ、さらりと心地よい服が着せられている。誰かが気絶した自分を綺麗にしてくれたのだろうか。それとも一度目に気絶した後の事はそもそも夢だったのだろうか。そんな事を思いながら、起きあがろうとするが、腰に力が入らない。下腹部の痛みで現実に引き戻される。
 一筋の涙が流れると、叫びたい気持ちを抑えて、枕に顔を埋めて声を押し殺し、泣き続けた。止まることのない涙で視界が霞む。
 
「…っ。  …ぅ……ぅ゛ぅ…。 ……っ…。」

 暫くすると、ノックの音にビクッとなる。昨日の恐怖で身体が動かない。布団を頭から被り、返事を返すことはなかったが、誰かが勝手に入ってくる。

「ミア? 起きたかい?」

 その声に青褪め、目をギュッと閉じて寝ているふりをする。

「ミア? 寝てるの? ふふ。 狸寝入り? ミア? もう一回する?」

 バッっと顔を出して、彼を睨みつける。

「クラウド。 冗談でもやめて。 こんなこと、もうごめんよ。」

 ん?と不思議そうな顔をする彼は、幼なじみではなく悪魔の様に見えた。
 優しく微笑むと、ミカエラの寝ているベットへ歩み寄り、頬に手を伸ばす。

「やっと…一つになれた。 この喜びがミアに分かるかな…。 それに私たちは夫婦になるのだから、恥ずかしがらなくていいのに。」

 クスクスと笑うクラウドに頭がクラクラする。

何を言っているのか分からない。

 頭が追いつかず、このまま彼らの傍にいると危険だと本能が拒絶する。


「な…なぜ…夫婦なるの…?」
「ん? もちろん、ミアを誰にも渡す気がないから…ということが大前提だけど、昨日父上にも伝えてある。 初夜が終了したと。 いつでも結婚する意思があり、結婚用のリングを用意してもらって良いと。」

 とても幸せそうに、愛おしそうにミアを見つめるクラウドとは正反対にミカエラは絶望する。

 この国では、婚前交渉が可能のため、結婚するまで妊娠しない様、女性は初潮が始まってから中指に避妊の魔道具がつけられる。それは結婚するまで外れることはなく、結婚すると、妊娠しやすくなるリングと交換され、そのリングには、旦那となる人の瞳の色の宝石がつけられる。そして、他の男性は、自分の瞳の色の宝石がついていない女性にアプローチするのだ。
 なので、お母様はそれぞれお父様たちの瞳のカラーの宝石がついた四葉のクローバーの様な形のリングを付けていた。

 指輪が交換されて、クラウドと性交してしまったら、子供が出来る可能性がかなり上がる。そうしたら、いくらミカエラが嫌がったとしても、王家の血筋の子供だ。妊娠の可能性がある限り解放されることは無い。さらに月ものが始まり、妊娠の可能性がなくなったとしてもそのまま性交せず彼らが私を解放するとは思えない。こんな監禁のような暴挙をするような彼らから逃げる事は出来ないだろう。しかも逃げたとしてもクラウドのことだ。王家の力を使い、本気の追尾を逃げ切る自信がない。
 指輪が出来るまでが彼らから逃げる唯一の期間だ。指輪さえ交換しなければ、婚約破棄という形で、堂々と逃げることが出来るから。

 ミカエラの中でいよいよ、時間がないという焦りと逃げれなかった時に待ち構えているほぼ決定事項の未来に絶望で目の前が真っ暗になった。
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