籠の中の令嬢

ワゾースキー

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第二章

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「ミア、身体は大丈夫? 昨日が初めてだったのに、可愛くて可愛くて抑えが効かなくてごめんね。 私は私用で今日から3日程ここを離れないといけない。 戻ってきたら沢山愛してあげるから、それまでここで大人しくしててね。 リングの交換をしよう。」

 ミカエラはじっとクラウドを見つめる。

「クラウド…貴方は王子よ。でもそんな好き勝手出来ないはず。私は辞退「なんてさせない。」」

 熱の籠った瞳で見つめ、ミカエラが言い終わる前に言葉も身体も被せてくる。

「ねぇ、ミア。私がどれだけ君を愛しているか分からないかい? 小さい頃から君のそばにいて、将来お嫁さんにしようと、悪いムシが寄り付かない様に色々した。 君が男嫌いになっても家族以外で私だけは嫌われなかった。 私にとって君は特別だった。」

 手が重なり、指を絡ませ、そっと唇が重なる。その唇は震えていた。軽い口付けのあと、ミカエラを抱きしめ、肩に顔を埋める。

「ねぇ、ミア。私から逃げないで。 離れないでくれ。  …大好きなんだ。 君がいないと私は耐えられない。 君の笑顔が見たい。 君の愛が欲しい。 隣国へ…なんて行かないで…。」

 あのクラウドが泣いている。酷いことをされたのはミカエラなのに、何故か罪悪感を感じ、胸が締め付けられる。そこにいたのは、悪魔の様なクラウドではなく、幼なじみの甘えん坊だったクラウドだった。

 ミカエラは何も言えず、自分にしがみつき、泣いている成年の頭を撫でることしか出来なかった。

 ミカエラは気づかなかった。クラウドは涙を流しながら悪魔の様な笑顔をしていたことを。



 落ち着きを取り戻し、クラウドはミカエラの頬に軽くチュッとキスをすると、仕事があるからと部屋から出て行った。

 ミカエラはドアを見つめ、内心少し動揺しつつ、誰もいない時間は貴重だと気を取り直し、痛みに耐えながら壁を探る。
 途中、知らない執事が食事を持って来てくれて、お茶の準備などをしながらそばに控える。話しかけても何も返事をしてくれない。会話も許されていないのかと悲しくなり、黙々と胃に流し込む。
 食事が済むと、すぐ食器は片付けられ、執事は退室していく。また1人の時間となった。

 そして、部屋の半分ほど調べ終わると、外は夕暮れなのか、部屋が差し込む光で紅く染まる。

また1日が終わろうとしてる。このまま入り口が見つけられなかったらどうしよう…。

 内心焦る。でも焦って見落としてしまったら本末転倒だ。ミカエラは焦る気持ちを落ち着かせ、壁を探り続けた。

 すると、ノックの音が聞こえる。ビクッと身体を強張らせ、壁からゆっくり離れる。ドアの方へ向かうと、ガチャっと鍵の開く音が響き、彼が部屋に入ってくる。

「フレッドお兄様…。」

「ミア、昨日は大丈夫だったかい? 昨日は悪ふざけが過ぎたね。 すまなかった。 少し話をしないか? こちらにおいで。」

 ミカエラをエスコートするためだろうか。フレッドは手を伸ばし、ミカエラは少しその手を見つめ沈黙する。 
 目の前にいるのは優しかった兄なのか。それとも足を切り落とせば良いと言った恐ろしい兄なのか。困惑しつつ、見つめ続けるが、微動だにしないフレッドに根負けし、手を伸ばし、ソファまでエスコートされる。

「お茶でも飲んで話をしよう。」

 フレッドが自らお茶を用意してくれる。お兄様が淹れてくれるお茶は好きだった。ミカエラは何の疑いもせず、お茶をコクリと飲む。

「フレッドお兄様…私は…どうなるのでしょう。 お兄様は…私を解放してくれますか? クラウドが…私と結婚すると言うのです。 私は…結婚したくありません…。」

 素直に話をし出す。フレッドは、優しい兄の顔でミカエラを見つめる。ミカエラの頭を撫でて、肩に頭を乗せる様に引き寄せ、耳元で囁く。

「では、私と結婚するか?」
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