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クリスマスイブ 19時半 対決
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「俺の純情を弄びやがってっ!!」
「うわ~、きもっ!」
マジか。二十七の男が鼻の頭を赤くさせて純情とか言ってるのって・・・きもっ!!
心の中で真希とハモってしまった。
「聖が弄ばれようがどうでもいい!人を財布代わりにした落とし前はきっちりつけさせてもらいましょうか。ねぇ、聖?」
「なっ!こ、これは俺のモンだ!お、お前が勝手に俺に寄越したんだろ」
聖が慌てて左手首を右手で押さえて隠そうとしたところで、無防備になった顔面をガッと再びアイアンクローをキメる。
「痛っ!止め、佳奈・・・止め、いっ」
「誰が勝手に寄越したって?朝、いつも起きられなくて私にモーニングコールを頼んでいた聖が!その腕時計の為に!私を四時に起こして、二人で朝五時から並んだのはいつのことでしたっけねぇ?」
「し、知らな・・・痛っ!」
「クリスマスプレゼントは、どぉ~しても、コレがいい!とか言って私に買わせたくせに、私はプレゼントなんて貰ってませんけど?」
ギリッ、ギリギリギリ。
「いたたたっ。止めろっ!昨日、別れたんだからプレゼントをあげるのはおかしい、だろ?」
右手を左手首から離すと腕時計を奪われる!と思っているのか?聖は痛がりながらも、無抵抗のままアイアンクローを受け続けている。
「世の中、家族、恋人同士だけがプレゼントを贈り合うわけじゃありませ~ん。人に高価なプレゼントを要求しておいて、自分は別れの言葉一つで済ませるなんて下衆過ぎるんだよ!」
「あはは~。本当、聖クンて下衆だ、ぎゃっ!」
聖を見て笑っている真希の顔も空いている左手で鷲掴みにする。真希は小顔なので左手で余裕で掴める。掴めるけれど、悔しいが華奢な造りの真希の顔を全力で掴んだら指がめり込みそうなので仕方なく手加減をする。
「や、ひどっ」
「ひどくない!」
「そ、そうだ!佳奈が酷い!」
左手を使った事で、右手の力が弱まったのか?聖がここぞとばかりに叫ぶ。
「聖は黙れ!アンタは大人しくそこのコンビニのATMで、その腕時計代を全額下ろして私に返金しなさいよ!」
「な、何で俺が?」
「聖の持ち物だからでしょうが!」
「こ、これは俺のだけど、お金だって俺が下ろして買ったんだ!」
「まだ言うか!その腕時計は私のクレカで買ったんでしょうが!箱はアンタが持っているでしょうけど、シリアルナンバー入りの保証書は私が持っているのを忘れたの?
この期に及んで嘘をついて、まだお金を出し渋るなら、月曜日に会社でアンタが私にした仕打ちを洗いざらいぶち撒けるけど?」
聖に財布扱いされて、イブの前日に捨てられたなんて話をするのは私もかなりのダメージを受ける。だけど、私は泣き寝入りする女じゃないんだよ!
「それだけは止めてくれ!は、払う!ちゃんと払うから言わないでくれ。お願いだ!」
聖はこんなんでも出世頭で、上の役職の人たちの受けも良い。醜聞で出世の道が絶たれるのは嫌なのだろう。
「す、直ぐ戻るから!その時計には指一本触れないでくれ。頼む!」
私のアイアンクローから解放された聖は、私の指示で腕時計を手から外すと、地面に置かれていたケーキの箱の上に時計を置いた。
そして私を極悪非道な悪人かなにかのように、怯えながらお金を下ろす為に脱兎の如くコンビニへと走って行った。
「先輩って本当乱暴者だよね。普通、女性がアイアンクローなんてする?」
「・・・で?真希は本命と別れていないのに、男友達と遊ぶのだけじゃ飽き足らず、聖にまで手を出して何を考えてるの?」
聖ほどではないけれど、顔に薄っすらと赤い斑点のようなものが浮き出ている真希が頬を摩っているけど、知ったこっちゃない。
「だからぁ。彼氏は本命だけ。後はぜ~んぶ、と・も・だ・ち」
くぅ~!殴りたいぃぃ~!
だが、落ち着け私!
まだ話は終わってない。
「その友達に何で聖を加えたのか、って聞いてるの!」
「ん~。ムカツいたから?」
「はあ?何それ!」
「だって、先輩。彼氏が構ってくれなくて寂しいボクが男友達と遊ぶと文句を言うじゃん」
マジか?!
本当にたったそれだけの理由で、私は彼氏を寝取られちゃったわけ?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読みいただきありがとうございます。
「うわ~、きもっ!」
マジか。二十七の男が鼻の頭を赤くさせて純情とか言ってるのって・・・きもっ!!
心の中で真希とハモってしまった。
「聖が弄ばれようがどうでもいい!人を財布代わりにした落とし前はきっちりつけさせてもらいましょうか。ねぇ、聖?」
「なっ!こ、これは俺のモンだ!お、お前が勝手に俺に寄越したんだろ」
聖が慌てて左手首を右手で押さえて隠そうとしたところで、無防備になった顔面をガッと再びアイアンクローをキメる。
「痛っ!止め、佳奈・・・止め、いっ」
「誰が勝手に寄越したって?朝、いつも起きられなくて私にモーニングコールを頼んでいた聖が!その腕時計の為に!私を四時に起こして、二人で朝五時から並んだのはいつのことでしたっけねぇ?」
「し、知らな・・・痛っ!」
「クリスマスプレゼントは、どぉ~しても、コレがいい!とか言って私に買わせたくせに、私はプレゼントなんて貰ってませんけど?」
ギリッ、ギリギリギリ。
「いたたたっ。止めろっ!昨日、別れたんだからプレゼントをあげるのはおかしい、だろ?」
右手を左手首から離すと腕時計を奪われる!と思っているのか?聖は痛がりながらも、無抵抗のままアイアンクローを受け続けている。
「世の中、家族、恋人同士だけがプレゼントを贈り合うわけじゃありませ~ん。人に高価なプレゼントを要求しておいて、自分は別れの言葉一つで済ませるなんて下衆過ぎるんだよ!」
「あはは~。本当、聖クンて下衆だ、ぎゃっ!」
聖を見て笑っている真希の顔も空いている左手で鷲掴みにする。真希は小顔なので左手で余裕で掴める。掴めるけれど、悔しいが華奢な造りの真希の顔を全力で掴んだら指がめり込みそうなので仕方なく手加減をする。
「や、ひどっ」
「ひどくない!」
「そ、そうだ!佳奈が酷い!」
左手を使った事で、右手の力が弱まったのか?聖がここぞとばかりに叫ぶ。
「聖は黙れ!アンタは大人しくそこのコンビニのATMで、その腕時計代を全額下ろして私に返金しなさいよ!」
「な、何で俺が?」
「聖の持ち物だからでしょうが!」
「こ、これは俺のだけど、お金だって俺が下ろして買ったんだ!」
「まだ言うか!その腕時計は私のクレカで買ったんでしょうが!箱はアンタが持っているでしょうけど、シリアルナンバー入りの保証書は私が持っているのを忘れたの?
この期に及んで嘘をついて、まだお金を出し渋るなら、月曜日に会社でアンタが私にした仕打ちを洗いざらいぶち撒けるけど?」
聖に財布扱いされて、イブの前日に捨てられたなんて話をするのは私もかなりのダメージを受ける。だけど、私は泣き寝入りする女じゃないんだよ!
「それだけは止めてくれ!は、払う!ちゃんと払うから言わないでくれ。お願いだ!」
聖はこんなんでも出世頭で、上の役職の人たちの受けも良い。醜聞で出世の道が絶たれるのは嫌なのだろう。
「す、直ぐ戻るから!その時計には指一本触れないでくれ。頼む!」
私のアイアンクローから解放された聖は、私の指示で腕時計を手から外すと、地面に置かれていたケーキの箱の上に時計を置いた。
そして私を極悪非道な悪人かなにかのように、怯えながらお金を下ろす為に脱兎の如くコンビニへと走って行った。
「先輩って本当乱暴者だよね。普通、女性がアイアンクローなんてする?」
「・・・で?真希は本命と別れていないのに、男友達と遊ぶのだけじゃ飽き足らず、聖にまで手を出して何を考えてるの?」
聖ほどではないけれど、顔に薄っすらと赤い斑点のようなものが浮き出ている真希が頬を摩っているけど、知ったこっちゃない。
「だからぁ。彼氏は本命だけ。後はぜ~んぶ、と・も・だ・ち」
くぅ~!殴りたいぃぃ~!
だが、落ち着け私!
まだ話は終わってない。
「その友達に何で聖を加えたのか、って聞いてるの!」
「ん~。ムカツいたから?」
「はあ?何それ!」
「だって、先輩。彼氏が構ってくれなくて寂しいボクが男友達と遊ぶと文句を言うじゃん」
マジか?!
本当にたったそれだけの理由で、私は彼氏を寝取られちゃったわけ?
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