聖なる夜に私は叫ぶ

しずもり

文字の大きさ
7 / 15

クリスマスイブ 19時半 対決

しおりを挟む
「俺の純情を弄びやがってっ!!」

「うわ~、きもっ!」

マジか。二十七の男が鼻の頭を赤くさせて純情とか言ってるのって・・・きもっ!!
心の中で真希とハモってしまった。

「聖が弄ばれようがどうでもいい!人を財布代わりにした落とし前はきっちりつけさせてもらいましょうか。ねぇ、聖?」

「なっ!こ、これは俺のモンだ!お、お前が勝手に俺に寄越したんだろ」

聖が慌てて左手首を右手で押さえて隠そうとしたところで、無防備になった顔面をガッと再びアイアンクローをキメる。

「痛っ!止め、佳奈・・・止め、いっ」

「誰が勝手に寄越したって?朝、いつも起きられなくて私にモーニングコールを頼んでいた聖が!その腕時計の為に!私を四時に起こして、二人で朝五時から並んだのはいつのことでしたっけねぇ?」

「し、知らな・・・痛っ!」

「クリスマスプレゼントは、どぉ~しても、コレがいい!とか言って私に買わせたくせに、私はプレゼントなんて貰ってませんけど?」

ギリッ、ギリギリギリ。

「いたたたっ。止めろっ!昨日、別れたんだからプレゼントをあげるのはおかしい、だろ?」

右手を左手首から離すと腕時計を奪われる!と思っているのか?聖は痛がりながらも、無抵抗のままアイアンクローを受け続けている。

「世の中、家族、恋人同士だけがプレゼントを贈り合うわけじゃありませ~ん。人に高価なプレゼントを要求しておいて、自分は別れの言葉一つで済ませるなんて下衆過ぎるんだよ!」


「あはは~。本当、聖クンて下衆だ、ぎゃっ!」


 聖を見て笑っている真希の顔も空いている左手で鷲掴みにする。真希は小顔なので左手で余裕で掴める。掴めるけれど、悔しいが華奢な造りの真希の顔を全力で掴んだら指がめり込みそうなので仕方なく手加減をする。

「や、ひどっ」

「ひどくない!」

「そ、そうだ!佳奈が酷い!」

左手を使った事で、右手の力が弱まったのか?聖がここぞとばかりに叫ぶ。

「聖は黙れ!アンタは大人しくそこのコンビニのATMで、その腕時計代を全額下ろして私に返金しなさいよ!」


「な、何で俺が?」

「聖の持ち物だからでしょうが!」

「こ、これは俺のだけど、お金だって俺が下ろして買ったんだ!」

「まだ言うか!その腕時計は私のクレカで買ったんでしょうが!箱はアンタが持っているでしょうけど、シリアルナンバー入りの保証書は私が持っているのを忘れたの?

この期に及んで嘘をついて、まだお金を出し渋るなら、月曜日に会社でアンタが私にした仕打ちを洗いざらいぶち撒けるけど?」

聖に財布扱いされて、イブの前日に捨てられたなんて話をするのは私もかなりのダメージを受ける。だけど、私は泣き寝入りする女じゃないんだよ!

「それだけは止めてくれ!は、払う!ちゃんと払うから言わないでくれ。お願いだ!」

聖はこんなんでも出世頭で、上の役職の人たちの受けも良い。醜聞で出世の道が絶たれるのは嫌なのだろう。

「す、直ぐ戻るから!その時計には指一本触れないでくれ。頼む!」


 私のアイアンクローから解放された聖は、私の指示で腕時計を手から外すと、地面に置かれていたケーキの箱の上に時計を置いた。

そして私を極悪非道な悪人かなにかのように、怯えながらお金を下ろす為に脱兎の如くコンビニへと走って行った。


「先輩って本当乱暴者だよね。普通、女性がアイアンクローなんてする?」


「・・・で?真希は本命と別れていないのに、男友達と遊ぶのだけじゃ飽き足らず、聖にまで手を出して何を考えてるの?」


聖ほどではないけれど、顔に薄っすらと赤い斑点のようなものが浮き出ている真希が頬を摩っているけど、知ったこっちゃない。


「だからぁ。彼氏は本命だけ。後はぜ~んぶ、と・も・だ・ち」


くぅ~!殴りたいぃぃ~!

だが、落ち着け私!
まだ話は終わってない。


「その友達に何で聖を加えたのか、って聞いてるの!」

「ん~。ムカツいたから?」

「はあ?何それ!」


「だって、先輩。彼氏が構ってくれなくて寂しいボクが男友達と遊ぶと文句を言うじゃん」


マジか?!

本当にたったそれだけの理由で、私は彼氏を寝取られちゃったわけ?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ここまでお読みいただきありがとうございます。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さようなら、初恋

芙月みひろ
恋愛
彼が選んだのは姉だった *表紙写真はガーリードロップ様からお借りしています

捨てたものに用なんかないでしょう?

風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。 戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。 愛人はリミアリアの姉のフラワ。 フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。 「俺にはフラワがいる。お前などいらん」 フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。 捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

公爵家の養女

透明
恋愛
リーナ・フォン・ヴァンディリア 彼女はヴァンディリア公爵家の養女である。 見目麗しいその姿を見て、人々は〝公爵家に咲く一輪の白薔薇〟と評した。 彼女は良くも悪くも常に社交界の中心にいた。 そんな彼女ももう時期、結婚をする。 数多の名家の若い男が彼女に思いを寄せている中、選ばれたのはとある伯爵家の息子だった。 美しき公爵家の白薔薇も、いよいよ人の者になる。 国中ではその話題で持ちきり、彼女に思いを寄せていた男たちは皆、胸を痛める中「リーナ・フォン・ヴァンディリア公女が、盗賊に襲われ逝去された」と伝令が響き渡る。 リーナの死は、貴族たちの関係を大いに揺るがし、一日にして国中を混乱と悲しみに包み込んだ。 そんな事も知らず何故か森で殺された彼女は、自身の寝室のベッドの上で目を覚ましたのだった。 愛に憎悪、帝国の闇 回帰した直後のリーナは、それらが自身の運命に絡んでくると言うことは、この時はまだ、夢にも思っていなかったのだった―― ※第一章、十九話まで毎日朝8時10分頃投稿いたします。 その後、毎週月、水朝の8時、金夜の22時投稿します。 小説家になろう様でも掲載しております。

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

ふしあわせに、殿下

古酒らずり
恋愛
帝国に祖国を滅ぼされた王女アウローラには、恋人以上で夫未満の不埒な相手がいる。 最強騎士にして魔性の美丈夫である、帝国皇子ヴァルフリード。 どう考えても女泣かせの男は、なぜかアウローラを強く正妻に迎えたがっている。だが、将来の皇太子妃なんて迷惑である。 そんな折、帝国から奇妙な挑戦状が届く。 ──推理ゲームに勝てば、滅ぼされた祖国が返還される。 ついでに、ヴァルフリード皇子を皇太子の座から引きずり下ろせるらしい。皇太子妃をやめるなら、まず皇太子からやめさせる、ということだろうか? ならば話は簡単。 くたばれ皇子。ゲームに勝利いたしましょう。 ※カクヨムにも掲載しています。

愛のバランス

凛子
恋愛
愛情は注ぎっぱなしだと無くなっちゃうんだよ。

「ばっかじゃないの」とつぶやいた

吉田ルネ
恋愛
少々貞操観念のバグったイケメン夫がやらかした

処理中です...