9 / 15
クリスマスイブ 20時 対決3
しおりを挟む
「もしもし?・・・佳奈?」
何度目かのコール音の後に聞こえてきたのは男性の声。スマホのスピーカーをオンにしているから、私の目の前にいる真希にも聞こえている。
「え?嘘っ、恭クン?」
「・・・真希?」
「ごめんね、恭ちゃん。今、大丈夫?」
「ああ。今、ホテルに戻ったところだ。・・・真希と一緒にいるのか」
「ちょっと!本当に恭クンなの!?何で佳奈先輩が恭クンの連絡先を知ってんの!?ボク、名前だって教えてないよねぇ!」
スマホから聞こえてくる彼氏の声に、焦るよりも私への怒りを露わにして真希が大声を上げる。
「さっき真希の彼氏の名前も連絡先も知ってるって言ったじゃん」
「だ~か~らぁ!何で、先輩が知ってんのかって言ってんの!名前だって、写真だって見せてないのに、おかしいじゃん!しかも何で先輩が恭ちゃんとか呼んでるのさっ」
私が名前と連絡先を知っているだけでなく、親しげに真希の彼氏の名前を呼んでいる事に怒り心頭の真希は、まだ電話が繋がったまま事を忘れてしまっているようだ。
「いいの?何匹か猫が逃げちゃってるじゃん」
「はぁ~?」
「猫被り。恭ちゃん前では、そんな喋り方していないんでしょ。
何だっけ?ちょっとドジっ子天然おっとり系だっけ?
流石にそれは無理があるんじゃない?どちらかというと、真希は小悪魔毒舌系でしょ。あ!マウント取り取り性悪系の方がピッタリ?」
恭ちゃんに電話すると決めた時から、真希に対して容赦はしないと決めた。だから普段は面と向かってこんな言い方はしないけど、煽るような言い方をする。
「なっ!ふっざけんな!そんな事どうだっていいから、何で恭クンの事を知ってるのか?さっさと教えろっつってんだよ」
「あらあらあら。さっきまで『御愁傷様~』なんて、言って私を煽ってたのに立場逆転?
ま、どうでもいいか。私が恭ちゃんの事を知っているのは従兄弟だから。連絡先なんて真希が知るよりずっと前から知ってたし。ね、恭ちゃん」
「・・・ああ。俺、忘れられたかと思ってた」
私たちのキャットファイト?を黙って聞いている恭ちゃんの事を思い出して声を掛ければ、恭ちゃんがあっさりと図星を突いてくる。
「はあ~?!従兄弟?・・・そうか!佳奈先輩、性格悪っ!ボクよりもずっと嫌な性格じゃん。恭クンにずっとボクの悪口を吹き込んでたんでしょ!だから最近、恭クンがボクに素っ気なかったんだ。今日だってボクのことが大事だったら、無理してでも出張から帰って来てくれるはずじゃん!」
「真希、落ち着け。佳奈は何も言ってない。俺が佳奈に聞いたんだよ。真希のことを」
恭ちゃん。稲垣恭介から連絡が来たのは半年前の事だ。
母の姉の息子である恭ちゃんとは、母たち姉妹の仲が良く家も割と近かった事から、子どもの頃はよく遊んでいた。だけどそれもせいぜい中学に上がるまでのこと。恭ちゃんと呼んでいるのは、単にそれ以外の呼び方をした事がなかっただけ。
お盆や正月など親戚で集まる時には話をしていても、性別が違えば密に連絡を取る事も遊びに行くなんて話にもならない。半年前にいきなり連絡が来た時だって、恭ちゃんは母に私の連絡先を聞いている。
今年の正月も顔を合わせていない。9月にあった他の従兄弟の結婚式でだって、仕事が忙しい恭ちゃんは出張に行っていて欠席だった。
本当に忙しい恭ちゃんが連絡先も知らなかった私に連絡して来たのは真希のことを聞きたいからだった。
真希から私の話が出てきた事はなかったけれど、真希の勤め先を知っていた恭ちゃんは同じ会社に私が勤めている事を知っていた。伯母さんの話で私がどこに就職したのかを聞いていたからだ。
その時は特に何も思わなかったけど、真希と付き合うようになって『そういえば・・・』と思い出したそうだ。でもただそれだけ。
だけどわざわざ私の連絡先を聞いてまで、私に連絡しようと思ったきっかけは真希の浮気疑惑があったからだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読みいただきありがとうございます。
何度目かのコール音の後に聞こえてきたのは男性の声。スマホのスピーカーをオンにしているから、私の目の前にいる真希にも聞こえている。
「え?嘘っ、恭クン?」
「・・・真希?」
「ごめんね、恭ちゃん。今、大丈夫?」
「ああ。今、ホテルに戻ったところだ。・・・真希と一緒にいるのか」
「ちょっと!本当に恭クンなの!?何で佳奈先輩が恭クンの連絡先を知ってんの!?ボク、名前だって教えてないよねぇ!」
スマホから聞こえてくる彼氏の声に、焦るよりも私への怒りを露わにして真希が大声を上げる。
「さっき真希の彼氏の名前も連絡先も知ってるって言ったじゃん」
「だ~か~らぁ!何で、先輩が知ってんのかって言ってんの!名前だって、写真だって見せてないのに、おかしいじゃん!しかも何で先輩が恭ちゃんとか呼んでるのさっ」
私が名前と連絡先を知っているだけでなく、親しげに真希の彼氏の名前を呼んでいる事に怒り心頭の真希は、まだ電話が繋がったまま事を忘れてしまっているようだ。
「いいの?何匹か猫が逃げちゃってるじゃん」
「はぁ~?」
「猫被り。恭ちゃん前では、そんな喋り方していないんでしょ。
何だっけ?ちょっとドジっ子天然おっとり系だっけ?
流石にそれは無理があるんじゃない?どちらかというと、真希は小悪魔毒舌系でしょ。あ!マウント取り取り性悪系の方がピッタリ?」
恭ちゃんに電話すると決めた時から、真希に対して容赦はしないと決めた。だから普段は面と向かってこんな言い方はしないけど、煽るような言い方をする。
「なっ!ふっざけんな!そんな事どうだっていいから、何で恭クンの事を知ってるのか?さっさと教えろっつってんだよ」
「あらあらあら。さっきまで『御愁傷様~』なんて、言って私を煽ってたのに立場逆転?
ま、どうでもいいか。私が恭ちゃんの事を知っているのは従兄弟だから。連絡先なんて真希が知るよりずっと前から知ってたし。ね、恭ちゃん」
「・・・ああ。俺、忘れられたかと思ってた」
私たちのキャットファイト?を黙って聞いている恭ちゃんの事を思い出して声を掛ければ、恭ちゃんがあっさりと図星を突いてくる。
「はあ~?!従兄弟?・・・そうか!佳奈先輩、性格悪っ!ボクよりもずっと嫌な性格じゃん。恭クンにずっとボクの悪口を吹き込んでたんでしょ!だから最近、恭クンがボクに素っ気なかったんだ。今日だってボクのことが大事だったら、無理してでも出張から帰って来てくれるはずじゃん!」
「真希、落ち着け。佳奈は何も言ってない。俺が佳奈に聞いたんだよ。真希のことを」
恭ちゃん。稲垣恭介から連絡が来たのは半年前の事だ。
母の姉の息子である恭ちゃんとは、母たち姉妹の仲が良く家も割と近かった事から、子どもの頃はよく遊んでいた。だけどそれもせいぜい中学に上がるまでのこと。恭ちゃんと呼んでいるのは、単にそれ以外の呼び方をした事がなかっただけ。
お盆や正月など親戚で集まる時には話をしていても、性別が違えば密に連絡を取る事も遊びに行くなんて話にもならない。半年前にいきなり連絡が来た時だって、恭ちゃんは母に私の連絡先を聞いている。
今年の正月も顔を合わせていない。9月にあった他の従兄弟の結婚式でだって、仕事が忙しい恭ちゃんは出張に行っていて欠席だった。
本当に忙しい恭ちゃんが連絡先も知らなかった私に連絡して来たのは真希のことを聞きたいからだった。
真希から私の話が出てきた事はなかったけれど、真希の勤め先を知っていた恭ちゃんは同じ会社に私が勤めている事を知っていた。伯母さんの話で私がどこに就職したのかを聞いていたからだ。
その時は特に何も思わなかったけど、真希と付き合うようになって『そういえば・・・』と思い出したそうだ。でもただそれだけ。
だけどわざわざ私の連絡先を聞いてまで、私に連絡しようと思ったきっかけは真希の浮気疑惑があったからだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読みいただきありがとうございます。
30
あなたにおすすめの小説
捨てたものに用なんかないでしょう?
風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。
戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。
愛人はリミアリアの姉のフラワ。
フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。
「俺にはフラワがいる。お前などいらん」
フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。
捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
公爵家の養女
透明
恋愛
リーナ・フォン・ヴァンディリア
彼女はヴァンディリア公爵家の養女である。
見目麗しいその姿を見て、人々は〝公爵家に咲く一輪の白薔薇〟と評した。
彼女は良くも悪くも常に社交界の中心にいた。
そんな彼女ももう時期、結婚をする。
数多の名家の若い男が彼女に思いを寄せている中、選ばれたのはとある伯爵家の息子だった。
美しき公爵家の白薔薇も、いよいよ人の者になる。
国中ではその話題で持ちきり、彼女に思いを寄せていた男たちは皆、胸を痛める中「リーナ・フォン・ヴァンディリア公女が、盗賊に襲われ逝去された」と伝令が響き渡る。
リーナの死は、貴族たちの関係を大いに揺るがし、一日にして国中を混乱と悲しみに包み込んだ。
そんな事も知らず何故か森で殺された彼女は、自身の寝室のベッドの上で目を覚ましたのだった。
愛に憎悪、帝国の闇
回帰した直後のリーナは、それらが自身の運命に絡んでくると言うことは、この時はまだ、夢にも思っていなかったのだった――
※第一章、十九話まで毎日朝8時10分頃投稿いたします。
その後、毎週月、水朝の8時、金夜の22時投稿します。
小説家になろう様でも掲載しております。
ふしあわせに、殿下
古酒らずり
恋愛
帝国に祖国を滅ぼされた王女アウローラには、恋人以上で夫未満の不埒な相手がいる。
最強騎士にして魔性の美丈夫である、帝国皇子ヴァルフリード。
どう考えても女泣かせの男は、なぜかアウローラを強く正妻に迎えたがっている。だが、将来の皇太子妃なんて迷惑である。
そんな折、帝国から奇妙な挑戦状が届く。
──推理ゲームに勝てば、滅ぼされた祖国が返還される。
ついでに、ヴァルフリード皇子を皇太子の座から引きずり下ろせるらしい。皇太子妃をやめるなら、まず皇太子からやめさせる、ということだろうか?
ならば話は簡単。
くたばれ皇子。ゲームに勝利いたしましょう。
※カクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる