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【 番外編 】ざまぁ、な話。その後の話。
元第二王子カイウス 4
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「・・・・何でそうなるんですか。此処に入ってから余計に拗らせてません?
この塔に一人きりで、話し相手がいなくてどんどん拗らせるぐらいなら、あの扉にでも向かって話しかけていれば良かったんですよ」
俺の口からポロリと出た言葉に、サーヤはスーッと冷めた表情になり、呆れながら後ろを振り返って扉を指差しながらそう言った。
「何で扉なんかに、、、」
「分かっているくせに」
「カイウス、過去のお前は人の言葉を鵜呑みにし過ぎた。特に気を許した相手にはな」
「今も変わってませんよ、カイウス様は。
人から言われた言葉の意味を考えないままじゃないですか。
でもまぁ、ある意味、アレクの言う通りの素直な性格なんでしょうね」
以前のサーヤからは考えられないぐらい辛辣な物言いをするこの目の前の女に呆気に取られる。
「お前、俺に対する態度が随分と変わってないか?前は俺の事をホイホイと何でも聞いて、俺の事を好きだー」
「それでっ!素直なカイウス様は何を反省していたんですっ!?」
「サヤがカイウスを、、、」
俺の言葉に被せるように大声を出すサーヤと小声で呟きながらジッと俺を見る兄上。
「アレク、気の迷いだからっ!子どもの頃のよくある憧れのお兄さん、みたいなものだったから!
異世界でちょっと浮かれて頭の中がフワフワしてただけなの。元の世界に戻って直ぐに騙されてたって気付いたから!」
「憧れのお兄さん、、、」
一体、何なんだ、この状況は。
結局、この二人は何しに来たんだよ。
いつの間にかまた様付けになっているし。
「サーヤ、様は要らないと言っただろ」
「え?あぁ、そう呼んでたから癖になっているんですよ。心の中では呼び捨てしているんですけどね。
もう面倒だから様も名前の一部とでも思っておいて下さい。決して敬意を表している訳じゃないんで。
で?償い方の分からないカイウス様はこの四年間、何をしていたんです?」
本当にサーヤは俺に対する態度が変わったな。いや、今はそんな事はどうでも良いか。大事なのは彼らへの償いの話だ。
「だから俺の所為で死んだ二人にどう償えばよいのか、とずっと考えて」
四年もの間、ずっとあの二人に対してどう償えばよいのか、と悩み、それでも答えを出せないままだった。
ただ課せられた罪を償うだけの日々。
まだ彼らへの償いは始まっていないのだ。
「ハァ~。四年も掛けて何もしていないって事ですか。本当にカイウス様ってダメダメですよねぇ。
ウジウジしているだけで、『悩み続けているのに答えを見つけられない俺は可哀想』、って思っているんじゃないですかね?」
「なっ!!
何も罪の無い者の命を奪ったのだぞ?
命に見合う償いなど、そう簡単に見つけられる訳がないだろう!
それとも聖女ならば、償う事も容易に出来るとでもいうのか?
" 穢れ "をアッサリと浄化出来てしまうお前になど俺の苦しみなど理解出来るものか!」
コイツは分かっていない。
俺がこの四年間でどれほど悩み、どう償えばよいのか、と考え続けたのかを。
どうやったって償う事が出来ない現実を思い知らされ続けていた事を!
「その発想がそもそも『俺、可哀想』ってヤツじゃないですか。
ねぇ、カイウス様?
カイウス様は反省しているつもりなようですけど、結局のところ、自分がこうなってしまったことに対して後悔して反省しているだけなんですよ。
今の自分の状況を嘆いているだけだから、いつまでたっても償う方法に気付けない。
償う方法が見つからないっていうなら、どんな方法でも思いついたものから実行すれば良かったんです。償い方だって人それぞれ違っているんじゃないですかね」
「だが償いってそんな簡単なものじゃないだろう!
それに俺はっ、俺だってしっかりと償おうと真剣に考えて、、、。
だが人の命を奪っておいて、生半可な方法で簡単に償えるものでもないだろっ」
「・・・・。
王家は遺族に対して非公式ですが、謝罪と賠償金を支払ったそうです。両陛下揃って自らがケインさんたちの自宅に足を運んで頭を下げていました。カイウス様がこの塔に入る前の事です。
あ、当然アレクも私も同行して謝罪しています」
父上たちが?
何故!?
ーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
随分と時間が空いてしまった上に、カイウス編はあともう少し続きます。
この塔に一人きりで、話し相手がいなくてどんどん拗らせるぐらいなら、あの扉にでも向かって話しかけていれば良かったんですよ」
俺の口からポロリと出た言葉に、サーヤはスーッと冷めた表情になり、呆れながら後ろを振り返って扉を指差しながらそう言った。
「何で扉なんかに、、、」
「分かっているくせに」
「カイウス、過去のお前は人の言葉を鵜呑みにし過ぎた。特に気を許した相手にはな」
「今も変わってませんよ、カイウス様は。
人から言われた言葉の意味を考えないままじゃないですか。
でもまぁ、ある意味、アレクの言う通りの素直な性格なんでしょうね」
以前のサーヤからは考えられないぐらい辛辣な物言いをするこの目の前の女に呆気に取られる。
「お前、俺に対する態度が随分と変わってないか?前は俺の事をホイホイと何でも聞いて、俺の事を好きだー」
「それでっ!素直なカイウス様は何を反省していたんですっ!?」
「サヤがカイウスを、、、」
俺の言葉に被せるように大声を出すサーヤと小声で呟きながらジッと俺を見る兄上。
「アレク、気の迷いだからっ!子どもの頃のよくある憧れのお兄さん、みたいなものだったから!
異世界でちょっと浮かれて頭の中がフワフワしてただけなの。元の世界に戻って直ぐに騙されてたって気付いたから!」
「憧れのお兄さん、、、」
一体、何なんだ、この状況は。
結局、この二人は何しに来たんだよ。
いつの間にかまた様付けになっているし。
「サーヤ、様は要らないと言っただろ」
「え?あぁ、そう呼んでたから癖になっているんですよ。心の中では呼び捨てしているんですけどね。
もう面倒だから様も名前の一部とでも思っておいて下さい。決して敬意を表している訳じゃないんで。
で?償い方の分からないカイウス様はこの四年間、何をしていたんです?」
本当にサーヤは俺に対する態度が変わったな。いや、今はそんな事はどうでも良いか。大事なのは彼らへの償いの話だ。
「だから俺の所為で死んだ二人にどう償えばよいのか、とずっと考えて」
四年もの間、ずっとあの二人に対してどう償えばよいのか、と悩み、それでも答えを出せないままだった。
ただ課せられた罪を償うだけの日々。
まだ彼らへの償いは始まっていないのだ。
「ハァ~。四年も掛けて何もしていないって事ですか。本当にカイウス様ってダメダメですよねぇ。
ウジウジしているだけで、『悩み続けているのに答えを見つけられない俺は可哀想』、って思っているんじゃないですかね?」
「なっ!!
何も罪の無い者の命を奪ったのだぞ?
命に見合う償いなど、そう簡単に見つけられる訳がないだろう!
それとも聖女ならば、償う事も容易に出来るとでもいうのか?
" 穢れ "をアッサリと浄化出来てしまうお前になど俺の苦しみなど理解出来るものか!」
コイツは分かっていない。
俺がこの四年間でどれほど悩み、どう償えばよいのか、と考え続けたのかを。
どうやったって償う事が出来ない現実を思い知らされ続けていた事を!
「その発想がそもそも『俺、可哀想』ってヤツじゃないですか。
ねぇ、カイウス様?
カイウス様は反省しているつもりなようですけど、結局のところ、自分がこうなってしまったことに対して後悔して反省しているだけなんですよ。
今の自分の状況を嘆いているだけだから、いつまでたっても償う方法に気付けない。
償う方法が見つからないっていうなら、どんな方法でも思いついたものから実行すれば良かったんです。償い方だって人それぞれ違っているんじゃないですかね」
「だが償いってそんな簡単なものじゃないだろう!
それに俺はっ、俺だってしっかりと償おうと真剣に考えて、、、。
だが人の命を奪っておいて、生半可な方法で簡単に償えるものでもないだろっ」
「・・・・。
王家は遺族に対して非公式ですが、謝罪と賠償金を支払ったそうです。両陛下揃って自らがケインさんたちの自宅に足を運んで頭を下げていました。カイウス様がこの塔に入る前の事です。
あ、当然アレクも私も同行して謝罪しています」
父上たちが?
何故!?
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ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
随分と時間が空いてしまった上に、カイウス編はあともう少し続きます。
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