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ラナダの町
レリアさんの宿屋
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この町はクインズではない。
しかもこのラナダという町はクインズとは仲が良くない?
一本道を馬車で真っ直ぐ進んで行けば、クインズに着くと聞いていたのだけれど。
不測の事態で森の中に入って、魔素中毒(命名:私)の巨大化&凶暴化したアオに遭遇して闇雲に走った。
その後もアオの鼻を信じてクインズに向けて森を抜けてきた、筈だった。
確かに向かう方角の事は頭からスッポリと抜け落ちてはいたけれど、ラナダという町はどこら辺にある町なんだろう?
クインズと横並びにある町なのか。それとも全く違う方向にある場所に出て来てしまったのか?
私の悩みも知らずに、アオは私の足下でソーセージをハグハグしている。
そういう姿は可愛らしいんだけれどねぇ。
少々気の荒い町の住人の言葉に立ち尽くした後、気を取り直して宿屋を探すことにした。町の隅でテント泊になるのは避けたかったからね。
このラナダという町は見た感じアサド村よりは大きくて、ガーナの街よりは小さな感じ。
フヨフヨと大量発生していた黒いモヤを払って見れば、周囲は閑散としていて店はそんなに多くは無さそうだった。
「えっ!宿屋?ウチで買い物するの?しないの?」
目についた八百屋さんのような店で宿屋のことを尋ねれば、返ってきた言葉の意味を理解して、新鮮そうな野菜を幾つか購入。
比較対象がガーナの街だけしかないけど、ちょっとお高いような?
うん、まぁ。観光地価格だと思おう!
観光地にはとても見えない町だけれど。
何とか一軒の宿屋を教えられて着いて見ればーー。
フヨフヨとハグレ黒いモヤが私の目の前を通り過ぎて宿屋の壁にバチンとぶつかって消える。
ぶつかった壁はボヤにあった壁のように煤けた色に変化した。
きっと他の人には見えていないんだろうなぁ~。
ハイ!
綺麗になぁ~れ!!
劇的ビフォアなんちゃらの様に、一瞬にして綺麗になった壁を見てちょっと満足。
でも、宿屋の中は大丈夫なのかなぁ?
アオを抱き上げ、恐る恐る宿屋の扉を開けば・・・。
あら、ビックリ!!
建物の中は、この町一番の空気の澄んだ場所?
なんて大袈裟に考えてしまうほど、どこを見ても掃除の行き届いた清潔な空間だった。
感動~。
正直、この世界に来て初めてじゃないだろうか。
勿論、メアリーさんの宿屋もルーナさんの宿屋だって毎日掃除は欠かしていなかった。
ただ、黒いモヤがねぇ。
少しだけでも黒いモヤがあると、部屋の雰囲気も暗っぽい印象を受けていたんだよね。
ある意味、それが普通なのかと思っていたんだけれど違ったんだ!
しかも外はあんなに黒いモヤだらけで、この宿屋の壁だって結構煤けた色をしていたのに、建物の中はこんなに綺麗だなんて!
どこかに空気清浄機的な何かがあるんだろうか?
宿屋に入ると、扉の直ぐ側に受付があって四十歳前後ぐらいの女性がいた。
茶色の髪と青い瞳のレリアさんという女性は、おっとり系の品の良いマダムな雰囲気のある宿屋の受付嬢?兼店主だった。
「あらあら。お客様が来るなんて珍しいわねぇ。いらっしゃい~。
道を聞きたいのかしら?それとも何か売りに来た商人さん?」
私を宿泊希望者だとは少しも思っていないようだけれど、言葉には棘なんてなくて寧ろ優しい声に癒される。
ちょっとこの町の洗礼を受けちゃった?みたいな気分と黒いモヤのお掃除に疲れ気味だったから、レリアさんの態度にホッとしちゃった。
後から考えてみれば、普通の対応だった気もするけど、私の心が癒された事実が大事なんだよ!
アオを部屋に入れる事も快く承諾してくれて、申し訳ないから部屋の掃除は私がします、と申し出れば、『遠慮しなくても良いのよぉ』とコロコロと笑う姿が本当に癒される!
ひょっとして、私、気付いていなかっただけで心が結構疲れていたのかなぁ?
なんて考えてしまう程、会ったばかりのレリアさんに私はメロメロだ。
言葉のチョイスがアレな感じなのは、まぁ、私の今までの人生にゆとりが無かったからだと思って欲しい。
親には実家に立ち寄る度に『アンタは何が楽しくて生きてるんだろうね』なんて言われていたんだよね。
無心されたお金を渡す為だけに立ち寄った娘に『なんて事を言うのだ!』と今なら大きな声で、親に向かって言えそうだ。
今思えば何の為に必死に働いて、節約していた暮らしを不満に思わなかったんだろう?
両親と弟とそれから元カレに搾取されるだけの日々だったのに。
はぁ~、人生半分、それ以上に損してたよねぇ。
宿屋には他に宿泊客はいなくて、アオがご飯の催促でグルグルと尻尾を追いかけるように回っていても誰も気にする人は居ない。
一階の食堂スペースにもお客さんはいなかったので今夜は貸し切り状態で、レリアさんの真心料理も美味しかった。
今日は良い気分でぐっすり眠れそうだ。
ベッドで寝たがったアオを何とか押し留めて、床に某有名高級タオルで寝床を作ってあげると満足したようで直ぐに眠ってしまった。
有って良かった、元彼グッズ、だね。この国のタオル事情に手放すのを辞めて正解だった一品!
高級素材ではないけれど、お日様の匂いのするシーツが気持ち良くて『良い夢が見れそう』なんて思って、アオと同じく直ぐに夢の中へダイブしていたみたい。
翌朝目覚めて覚えていたのは、シクシクと誰かが泣いているような夢?
ん~。それ、良い夢、、、だったのかなぁ?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」及びエールでの応援もありがとうございます。
しかもこのラナダという町はクインズとは仲が良くない?
一本道を馬車で真っ直ぐ進んで行けば、クインズに着くと聞いていたのだけれど。
不測の事態で森の中に入って、魔素中毒(命名:私)の巨大化&凶暴化したアオに遭遇して闇雲に走った。
その後もアオの鼻を信じてクインズに向けて森を抜けてきた、筈だった。
確かに向かう方角の事は頭からスッポリと抜け落ちてはいたけれど、ラナダという町はどこら辺にある町なんだろう?
クインズと横並びにある町なのか。それとも全く違う方向にある場所に出て来てしまったのか?
私の悩みも知らずに、アオは私の足下でソーセージをハグハグしている。
そういう姿は可愛らしいんだけれどねぇ。
少々気の荒い町の住人の言葉に立ち尽くした後、気を取り直して宿屋を探すことにした。町の隅でテント泊になるのは避けたかったからね。
このラナダという町は見た感じアサド村よりは大きくて、ガーナの街よりは小さな感じ。
フヨフヨと大量発生していた黒いモヤを払って見れば、周囲は閑散としていて店はそんなに多くは無さそうだった。
「えっ!宿屋?ウチで買い物するの?しないの?」
目についた八百屋さんのような店で宿屋のことを尋ねれば、返ってきた言葉の意味を理解して、新鮮そうな野菜を幾つか購入。
比較対象がガーナの街だけしかないけど、ちょっとお高いような?
うん、まぁ。観光地価格だと思おう!
観光地にはとても見えない町だけれど。
何とか一軒の宿屋を教えられて着いて見ればーー。
フヨフヨとハグレ黒いモヤが私の目の前を通り過ぎて宿屋の壁にバチンとぶつかって消える。
ぶつかった壁はボヤにあった壁のように煤けた色に変化した。
きっと他の人には見えていないんだろうなぁ~。
ハイ!
綺麗になぁ~れ!!
劇的ビフォアなんちゃらの様に、一瞬にして綺麗になった壁を見てちょっと満足。
でも、宿屋の中は大丈夫なのかなぁ?
アオを抱き上げ、恐る恐る宿屋の扉を開けば・・・。
あら、ビックリ!!
建物の中は、この町一番の空気の澄んだ場所?
なんて大袈裟に考えてしまうほど、どこを見ても掃除の行き届いた清潔な空間だった。
感動~。
正直、この世界に来て初めてじゃないだろうか。
勿論、メアリーさんの宿屋もルーナさんの宿屋だって毎日掃除は欠かしていなかった。
ただ、黒いモヤがねぇ。
少しだけでも黒いモヤがあると、部屋の雰囲気も暗っぽい印象を受けていたんだよね。
ある意味、それが普通なのかと思っていたんだけれど違ったんだ!
しかも外はあんなに黒いモヤだらけで、この宿屋の壁だって結構煤けた色をしていたのに、建物の中はこんなに綺麗だなんて!
どこかに空気清浄機的な何かがあるんだろうか?
宿屋に入ると、扉の直ぐ側に受付があって四十歳前後ぐらいの女性がいた。
茶色の髪と青い瞳のレリアさんという女性は、おっとり系の品の良いマダムな雰囲気のある宿屋の受付嬢?兼店主だった。
「あらあら。お客様が来るなんて珍しいわねぇ。いらっしゃい~。
道を聞きたいのかしら?それとも何か売りに来た商人さん?」
私を宿泊希望者だとは少しも思っていないようだけれど、言葉には棘なんてなくて寧ろ優しい声に癒される。
ちょっとこの町の洗礼を受けちゃった?みたいな気分と黒いモヤのお掃除に疲れ気味だったから、レリアさんの態度にホッとしちゃった。
後から考えてみれば、普通の対応だった気もするけど、私の心が癒された事実が大事なんだよ!
アオを部屋に入れる事も快く承諾してくれて、申し訳ないから部屋の掃除は私がします、と申し出れば、『遠慮しなくても良いのよぉ』とコロコロと笑う姿が本当に癒される!
ひょっとして、私、気付いていなかっただけで心が結構疲れていたのかなぁ?
なんて考えてしまう程、会ったばかりのレリアさんに私はメロメロだ。
言葉のチョイスがアレな感じなのは、まぁ、私の今までの人生にゆとりが無かったからだと思って欲しい。
親には実家に立ち寄る度に『アンタは何が楽しくて生きてるんだろうね』なんて言われていたんだよね。
無心されたお金を渡す為だけに立ち寄った娘に『なんて事を言うのだ!』と今なら大きな声で、親に向かって言えそうだ。
今思えば何の為に必死に働いて、節約していた暮らしを不満に思わなかったんだろう?
両親と弟とそれから元カレに搾取されるだけの日々だったのに。
はぁ~、人生半分、それ以上に損してたよねぇ。
宿屋には他に宿泊客はいなくて、アオがご飯の催促でグルグルと尻尾を追いかけるように回っていても誰も気にする人は居ない。
一階の食堂スペースにもお客さんはいなかったので今夜は貸し切り状態で、レリアさんの真心料理も美味しかった。
今日は良い気分でぐっすり眠れそうだ。
ベッドで寝たがったアオを何とか押し留めて、床に某有名高級タオルで寝床を作ってあげると満足したようで直ぐに眠ってしまった。
有って良かった、元彼グッズ、だね。この国のタオル事情に手放すのを辞めて正解だった一品!
高級素材ではないけれど、お日様の匂いのするシーツが気持ち良くて『良い夢が見れそう』なんて思って、アオと同じく直ぐに夢の中へダイブしていたみたい。
翌朝目覚めて覚えていたのは、シクシクと誰かが泣いているような夢?
ん~。それ、良い夢、、、だったのかなぁ?
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ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」及びエールでの応援もありがとうございます。
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