美化係の聖女様

しずもり

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ラナダの町

黒いモヤ問題と宿屋の外と中

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綺麗になぁれ!

綺麗になぁれっ!!


滞在四日目。

朝起きて、アオを散歩させながらお得意の生活魔法を心の中で唱えるのはもう日課となっている。

唱えた瞬間はパパパッて消えるの。そりゃあ、もう簡単に。

それがねぇ。

翌日の朝には元通りって、、、。


ラナダに着いた翌日、窓を開けた瞬間、愕然て言葉がピッタリなぐらいに、外の光景が信じられなかった。


ラナダに着いた直後よりは減っていたとは思うけど、黒いモヤたち?は自由に空中をフヨフヨしていたからねぇ。


それでアオを散歩に、と言って外に出て『綺麗になあれ!』と唱えたのに、また翌日にはフヨフヨと、、、。


正にイタチごっこってヤツ?


臭い匂いは元から断たなきゃ駄目!!

という言葉が頭の中をグルグルして、『これは何とかしないと!』と勝手に使命感を感じてしまったのだけれど、、、どうすればいいんだろうね?


昨日は夕方もアオを連れ出して、『綺麗になぁれ!』を連発したの。

男の人の髭と一緒で、朝に黒いモヤをても、夕方にはいつの間にか黒いモヤが町の中を漂い始めていたんだよね。

それが夜の内に増殖するのかも?、と夕方にもう一度『綺麗になぁれ!』を連発させてみたのだ。


そのまま中央の広場で留まること三十分。
見える範囲には黒いモヤもなくて、夕方だというのに町の中は明るいというか、心なしか?明るい雰囲気が周囲に広がっているような気がしたの。

だって、この町に来て早々出会った町の住人の男の人にバッタリと遭遇したら、笑顔で声を掛けられたんだよ?

『お、姉ちゃん。ラナダにまだ滞在しているのかい?この町も味のある良い町だぜ』


いや、味のある町って、何?


初日の雰囲気と違い過ぎて思わず顔をガン見しちゃたよね。
まぁ、人違いじゃ無かったし、そもそも向こうから声を掛けてきたんだから同一人物なのは間違いなかった訳だけど。


『あぁ、この町に来た日は悪かったな。いつも以上に偏頭痛が酷くって虫のいどころが悪かったってヤツだ。

ここニ、三日は調子良くてなぁ。まぁ、そういう事だからラナダの町をたっぷりと楽しんでってくれよ』


何がそういう事だから、なのかは不明だけれど、根は良い人なんだろうと思う事にした。
偏頭痛は確かに辛いよね。気持ちは分かる。


そんな訳で何となく初日のラナダのイメージが良い方へと上書きされて気分良く目覚めた今朝。
窓を開けるとー。


フヨフヨフヨ~。


だからね?

ガックリと膝を付いてしまったのは仕方がないと思うの。

簡単に解決出来るとは思ってはいなかったけど、何日か『綺麗になぁれ!』を唱えていれば少しづつ良くなっていくと思ったんだけどなぁ。


元か。元やっぱりを突き止めないと駄目なのか。



早々に挫けそうな気持ちになったんだけれど、やっぱり黒いモヤ汚れを残したままは性格的に嫌なんだよ。

掃除ってね、見て見ぬフリをしたら駄目だと思うんだ。

確実に見て見ぬフリをした場所は進化するから!悪い方向で。

綿埃が毛玉のようになったり、お風呂場の黒い点があっという間にカビの一大勢力を築いていたりね。

マジで見て見ぬフリ。明日やろう!は後悔しかないから!


レリアさんの料理を食べながら、宿屋の扉をボーっと眺めていたら一つ気になる事が出てきた。


この町、あれだけ外で黒いモヤがフヨフヨしていて、家の中は大丈夫なの?、と。


少なくとも私が滞在しているこの宿屋の中には黒いモヤは見当たらない。それどころか、澄んだ空気を感じるぐらい。


レリアさんの宿屋限定なのかも?だけど、宿屋の外は黒いモヤが壁にぶつかって煤けた色になっていたのに、宿屋の中は清潔空間が広がっている。

まぁ、煤けた色というのもにしか分からないものなんだろうけど。


その疑問は数分後に解けることになった。

レリアさんの宿屋限定の可能性もある。

だけどレリアさんがに対してとった行動が、ラナダの町の黒いモヤ問題解決の大きなヒントになったのは間違いなかった。



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ここまでお読み下さりありがとうございます。

「いいね」及びエールでの応援もありがとうございます。
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