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悪役令嬢とアリス (アリス視点)
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王立学園に編入して1年。やっとこの日が来たんだわ。
卒業パーティーの会場で私の隣にいるアル様は、婚約者の悪役令嬢ミレーヌ様に婚約破棄を宣言した。
「ミレーヌ・シルフィード公爵令嬢!今日をもってこの私、ガルド王国第一王子アルフリート・ガルドとの婚約を破棄する!」
きゃぁっ!これよコレ!夢にまで見た憧れのシチュエーションが私の目の前で起きているのよっ!
ヒロインの私の為に悪役令嬢のミレーヌ様を断罪するアル様ってば本当に素敵だわっ。
私の肩に手を置いて抱き寄せるように立った、この国の第一王子アルフリート様のお顔を私はうっとりとして見上げていた。
私は王都の中の下町で育ったの。母一人子一人の家庭で育ったんだけど、そんなに苦労はした記憶はないわね。
だってお母さんはちょっと病弱だけど美人だったから、近所のおじさんたちが食べ物を持ってきてくれたり色々とお世話をしに来てくれてたの。
でも『周りには内緒な?』って皆、いつも言うのよ?どうせ皆お世話しに来るんだから一緒にくればいいのに。
お母さんには似ていなかったけど美少女だった私に、私と同年代の男の子たち、ううん、歳が離れた男の人たちも皆、優しくしてくれたわ。
私が『欲しい』って言わなくても、ちょっと見てるだけで気を利かせて買ってくれるの。そういう時はとびっきりの笑顔でお礼を言うのよ。
だってそうすれば男の子たちは喜んでくれて、もっともっと私に良くしてくれるんだもん。
もしかしてこれがウィンウィンの関係ってやつ?ん、違う?
まぁ、いいや。兎に角、そんな感じで結構楽しい毎日だったワケ。
でも、でもさ?やっぱり女の子としては綺麗なドレスを着て舞踏会とかに行ってみたい、って憧れるものじゃない?
王都の街にお忍びで買い物に来る貴族のお嬢様たち ー すごく良い生地の可愛いワンピースを着てお忍びって、お忍びとは言わないよね? ー を見ても断然私の方が可愛いのよ。
あれ?私の方が貴族令嬢っぽい?違うっ!お姫様って感じでしょ!
って、思っていたんだよねぇ。だって私の方が美少女だし。
そう思っても所詮、私は平民だって言うのは分かっていたの。顔だけで貴族令嬢やお姫様にはなれないんだって。
まぁ、しょうがないよね。
けど、私が12歳の時に下町の広場で楽器を持って歌を歌っている人がいたの。そんな人初めて見たから周りにも人が集まってて面白そうだな、って近づいてみたんだよね。
隣にいる人に聞いたらその人は『吟遊詩人』て言うんだって教えてくれた。本当にあったお話とか昔の物語なんかを詩や曲にして歌って聴かせてくれるんだって。
最初は魔王と勇者の物語だった。『へぇ~、そんなお話があったんだ。』ぐらいに聴いてたんだけど、次に歌ってくれたのが本当に素敵だったの!
王子様が平民だった女の子と学校で出会って恋をするの。だけど王子様には貴族の婚約者が居るのよ。その婚約者が悪役令嬢と呼ばれていて女の子に嫉妬してイジメるのよね。
だけど、そんな悪役令嬢を王子様は女の子の為に卒業パーティーで断罪し『僕の愛しい人をイジメる悪役令嬢とは婚約破棄するっ!』って皆の前で叫んで婚約破棄をしてくれたの。自分と女の子は『真実の愛』で結ばれているんだ、って言ってね。
そうして2人は結ばれて国王様と王妃様になって、可愛い王子も生まれて幸せになりましたとさ、でお終い。
ねぇ!すっごく素敵なお話じゃない?
しかもね、コレ、本当のお話なのよ?この国の王様と王妃様のお話なんだよ、すごくない?
もう、このお話が大好き過ぎて毎日広場に通って聴いたわ。だけどね、ある日突然、吟遊詩人さんは居なくなっちゃったの。広場に憲兵が来てたから何か事件に巻き込まれちゃったのかもね。無事だと良いんだけどな。
それから吟遊詩人さんは2度と下町には来なかったんだけど、ある日、ウチに立派な黒い馬車が来たの!
なんと!私は男爵様の娘だったんだって。お母さん、若い頃に男爵様のお家でハウスメイドをやってたのよ。知らなかったぁ~。
男爵様と恋に落ちて私を妊娠してしまったけれど、男爵様には既に奥様が居たから身を引いて下町で私を産んで暮らしてたんだって。
何で身を引くかなぁ?だって後から男爵家で奥様 ー 今は私の継母になるけど ー って全然美人じゃないのよ?お母さんの方がとっても綺麗だもん。
まぁ、そんな感じでさ、奥様との間に子どもが出来なかったから私を引き取りたい、って来たのよね。お母さんは散々渋っていた。
けれど私は『絶対行きたい!』と言ったし男爵様は奥様に内緒でお母さんの面倒を看るから、ってお母さんに約束してて、それで私は男爵令嬢になれたの。
男爵家に行ってからは『淑女教育』?とかいうのがあったりしたけど、だいたいニッコリ笑っていれば何とかなったわ。顔が良いと何でも許されるわよね。
もうこれで私は貴族令嬢になったし美少女で完璧!後は王子様に出会うだけ!と思っていたの。
そうしたら本当に学校に居たのよ!あのお話の2人の可愛い王子様!
今は勿論、可愛いじゃなくて格好いい、よ?王子様は3年生でミレーヌ様という公爵令嬢の婚約者がいたの。悪役令嬢ってやつね。
それで本物の王子様に会えて嬉しくて何度も何度もアル様のお側に行ったわ。いつも一緒にいるギル様とも仲良くなって、あと側近候補?のアル様の同級生たちと5人で一緒にいるようになったわ。
「婚約者のいる男性と親しくするのは、はしたない行為と誤解される事もあります。適切な距離を保って下さいませ。」
とかなんとか、ミレーヌ様に言われた時は正直『悪役令嬢、来たぁー!』と思ったわ。だってミレーヌ様の後ろのご学友?の人たちが凄い顔で私の顔を見てたしね。
これでどんどん私はイジメられちゃってアル様との距離がもっと近づいていくのよ。ー 別に喜んでイジメられたい訳じゃないよ? ー
と、思っていたのにそれっきりミレーヌ様は私に近づいて来る事は無かったの。
何で?アル様を取られて嫉妬に狂っているんじゃないの?
それからずっと待っていたけど、何もされなかった。他の女子生徒たちは嫌味とか何かごちゃごちゃと言ってきてたけどミレーヌ様はさっぱり。
きっとミレーヌ様も私をイジメて断罪されるのは嫌だ、って気づいたのね。そりゃそうよね。同じ立場だったら私もそう思うもん。
でも困ったな。気づけばアル様が卒業するまであと3ヶ月しかないよ。このままじゃ卒業パーティーでアル様と『真実の愛』を誓い合えないんじゃない?
それで仕方が無いから私が頑張る事にしたのよ。頑張ったからアル様もギルたちもミレーヌ様の事を怒ってくれた。
『今すぐ母上に言って婚約破棄をしてやる!』ってアル様が言ったけど、ー 何で王様にじゃなくて王妃に、なのかしら? ー アル様に吟遊詩人さんのお話をしたのよ。
アル様のお父さんとお母さんは、卒業パーティーで婚約者の悪役令嬢を懲らしめて『婚約破棄』をしたって。そして『真実の愛』を誓い合って結ばれて幸せになったんですよ、って。
そうしたらアル様は自分の両親の事なのに知らなかったんだって。
私から聞いてすごく感激してたの。それで私たちも同じ事をして幸せになろう!って言ってくれた。すっごく嬉しかったわ。
私、いいえ、私とアル様は卒業パーティーの日に『真実の愛』を誓って必ず幸せになってみせるわ!
卒業パーティーの会場で私の隣にいるアル様は、婚約者の悪役令嬢ミレーヌ様に婚約破棄を宣言した。
「ミレーヌ・シルフィード公爵令嬢!今日をもってこの私、ガルド王国第一王子アルフリート・ガルドとの婚約を破棄する!」
きゃぁっ!これよコレ!夢にまで見た憧れのシチュエーションが私の目の前で起きているのよっ!
ヒロインの私の為に悪役令嬢のミレーヌ様を断罪するアル様ってば本当に素敵だわっ。
私の肩に手を置いて抱き寄せるように立った、この国の第一王子アルフリート様のお顔を私はうっとりとして見上げていた。
私は王都の中の下町で育ったの。母一人子一人の家庭で育ったんだけど、そんなに苦労はした記憶はないわね。
だってお母さんはちょっと病弱だけど美人だったから、近所のおじさんたちが食べ物を持ってきてくれたり色々とお世話をしに来てくれてたの。
でも『周りには内緒な?』って皆、いつも言うのよ?どうせ皆お世話しに来るんだから一緒にくればいいのに。
お母さんには似ていなかったけど美少女だった私に、私と同年代の男の子たち、ううん、歳が離れた男の人たちも皆、優しくしてくれたわ。
私が『欲しい』って言わなくても、ちょっと見てるだけで気を利かせて買ってくれるの。そういう時はとびっきりの笑顔でお礼を言うのよ。
だってそうすれば男の子たちは喜んでくれて、もっともっと私に良くしてくれるんだもん。
もしかしてこれがウィンウィンの関係ってやつ?ん、違う?
まぁ、いいや。兎に角、そんな感じで結構楽しい毎日だったワケ。
でも、でもさ?やっぱり女の子としては綺麗なドレスを着て舞踏会とかに行ってみたい、って憧れるものじゃない?
王都の街にお忍びで買い物に来る貴族のお嬢様たち ー すごく良い生地の可愛いワンピースを着てお忍びって、お忍びとは言わないよね? ー を見ても断然私の方が可愛いのよ。
あれ?私の方が貴族令嬢っぽい?違うっ!お姫様って感じでしょ!
って、思っていたんだよねぇ。だって私の方が美少女だし。
そう思っても所詮、私は平民だって言うのは分かっていたの。顔だけで貴族令嬢やお姫様にはなれないんだって。
まぁ、しょうがないよね。
けど、私が12歳の時に下町の広場で楽器を持って歌を歌っている人がいたの。そんな人初めて見たから周りにも人が集まってて面白そうだな、って近づいてみたんだよね。
隣にいる人に聞いたらその人は『吟遊詩人』て言うんだって教えてくれた。本当にあったお話とか昔の物語なんかを詩や曲にして歌って聴かせてくれるんだって。
最初は魔王と勇者の物語だった。『へぇ~、そんなお話があったんだ。』ぐらいに聴いてたんだけど、次に歌ってくれたのが本当に素敵だったの!
王子様が平民だった女の子と学校で出会って恋をするの。だけど王子様には貴族の婚約者が居るのよ。その婚約者が悪役令嬢と呼ばれていて女の子に嫉妬してイジメるのよね。
だけど、そんな悪役令嬢を王子様は女の子の為に卒業パーティーで断罪し『僕の愛しい人をイジメる悪役令嬢とは婚約破棄するっ!』って皆の前で叫んで婚約破棄をしてくれたの。自分と女の子は『真実の愛』で結ばれているんだ、って言ってね。
そうして2人は結ばれて国王様と王妃様になって、可愛い王子も生まれて幸せになりましたとさ、でお終い。
ねぇ!すっごく素敵なお話じゃない?
しかもね、コレ、本当のお話なのよ?この国の王様と王妃様のお話なんだよ、すごくない?
もう、このお話が大好き過ぎて毎日広場に通って聴いたわ。だけどね、ある日突然、吟遊詩人さんは居なくなっちゃったの。広場に憲兵が来てたから何か事件に巻き込まれちゃったのかもね。無事だと良いんだけどな。
それから吟遊詩人さんは2度と下町には来なかったんだけど、ある日、ウチに立派な黒い馬車が来たの!
なんと!私は男爵様の娘だったんだって。お母さん、若い頃に男爵様のお家でハウスメイドをやってたのよ。知らなかったぁ~。
男爵様と恋に落ちて私を妊娠してしまったけれど、男爵様には既に奥様が居たから身を引いて下町で私を産んで暮らしてたんだって。
何で身を引くかなぁ?だって後から男爵家で奥様 ー 今は私の継母になるけど ー って全然美人じゃないのよ?お母さんの方がとっても綺麗だもん。
まぁ、そんな感じでさ、奥様との間に子どもが出来なかったから私を引き取りたい、って来たのよね。お母さんは散々渋っていた。
けれど私は『絶対行きたい!』と言ったし男爵様は奥様に内緒でお母さんの面倒を看るから、ってお母さんに約束してて、それで私は男爵令嬢になれたの。
男爵家に行ってからは『淑女教育』?とかいうのがあったりしたけど、だいたいニッコリ笑っていれば何とかなったわ。顔が良いと何でも許されるわよね。
もうこれで私は貴族令嬢になったし美少女で完璧!後は王子様に出会うだけ!と思っていたの。
そうしたら本当に学校に居たのよ!あのお話の2人の可愛い王子様!
今は勿論、可愛いじゃなくて格好いい、よ?王子様は3年生でミレーヌ様という公爵令嬢の婚約者がいたの。悪役令嬢ってやつね。
それで本物の王子様に会えて嬉しくて何度も何度もアル様のお側に行ったわ。いつも一緒にいるギル様とも仲良くなって、あと側近候補?のアル様の同級生たちと5人で一緒にいるようになったわ。
「婚約者のいる男性と親しくするのは、はしたない行為と誤解される事もあります。適切な距離を保って下さいませ。」
とかなんとか、ミレーヌ様に言われた時は正直『悪役令嬢、来たぁー!』と思ったわ。だってミレーヌ様の後ろのご学友?の人たちが凄い顔で私の顔を見てたしね。
これでどんどん私はイジメられちゃってアル様との距離がもっと近づいていくのよ。ー 別に喜んでイジメられたい訳じゃないよ? ー
と、思っていたのにそれっきりミレーヌ様は私に近づいて来る事は無かったの。
何で?アル様を取られて嫉妬に狂っているんじゃないの?
それからずっと待っていたけど、何もされなかった。他の女子生徒たちは嫌味とか何かごちゃごちゃと言ってきてたけどミレーヌ様はさっぱり。
きっとミレーヌ様も私をイジメて断罪されるのは嫌だ、って気づいたのね。そりゃそうよね。同じ立場だったら私もそう思うもん。
でも困ったな。気づけばアル様が卒業するまであと3ヶ月しかないよ。このままじゃ卒業パーティーでアル様と『真実の愛』を誓い合えないんじゃない?
それで仕方が無いから私が頑張る事にしたのよ。頑張ったからアル様もギルたちもミレーヌ様の事を怒ってくれた。
『今すぐ母上に言って婚約破棄をしてやる!』ってアル様が言ったけど、ー 何で王様にじゃなくて王妃に、なのかしら? ー アル様に吟遊詩人さんのお話をしたのよ。
アル様のお父さんとお母さんは、卒業パーティーで婚約者の悪役令嬢を懲らしめて『婚約破棄』をしたって。そして『真実の愛』を誓い合って結ばれて幸せになったんですよ、って。
そうしたらアル様は自分の両親の事なのに知らなかったんだって。
私から聞いてすごく感激してたの。それで私たちも同じ事をして幸せになろう!って言ってくれた。すっごく嬉しかったわ。
私、いいえ、私とアル様は卒業パーティーの日に『真実の愛』を誓って必ず幸せになってみせるわ!
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