カランコエの咲く所で

mahiro

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物心ついたとき、僕には英雄と呼ばれる両親がいたけれどもう二度と会うことは出来ないのだと言われた。

僕の側にはいつもエクベルトという上級の魔法使いがいた。
赤ん坊の頃から面倒を見てくれて、魔法使いとなった今でも片時も離れずに居てくれる。

そこお陰でひとりぼっちになることは少なかったけれど、村の子供たちの感じる家族の温かみを知ることは出来なかったように思う。


そんなあるとき、任務の帰り道に産まれたばかりの赤ん坊を見つけた。
何にも包まれず、そのまま置き去りにされた様子で明らかに捨てられたように感じられた。
僕は両親に捨てられた訳じゃないけれど、この子のことを見捨てる気にはならなかった。
ここで僕がこの子を助けなければ、この子は死んでしまうと思って声をかけた。


「なんでこんなところにいるんだ?」


まだ開ききっていない藍色の瞳がのろのろと僕を見て、大きく目を見開いたように見えた。
まだ首も座っていないその子を優しく抱き上げ、笑いかけた。


「よくわからないけど、ひとりはさみしいだろ?いっしょにいこ?」


まだ言葉を発することも出来ないこの子に、僕は自己紹介をすることにした。


「ぼくのなまえはヨーゼフ・レントヘン。このむらにすんでるんだ」


胸に抱いている子は、僕のことをただじっと見つめ小さな手をぎゅっと握り締めていた。
本当はこの手を側で握ってくれる存在がいる筈なのに、何故側にいないのか。
僕のときと違って争いなどないはずなのに。
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