宝石はすぐそばに

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生まれてから割と早い段階で前世の記憶を思い出した俺こと、リン・ファーマーは今、前世で仲間だったシド・ジャーヴィスと向かい合い少女漫画を読んでいる。


「ユフィー！両想いになれて良かったなぁ！」


大声を上げワンワンと泣き出すシドにハンカチを差し出せば豪快に奪われ、ティッシュの箱を差し出せばそれも同様に奪われ、鼻をかんだティッシュが山のように積み重ねられていく。


「あーオレもユフィーみたいな恋愛してみたい！」


やっと涙と鼻水が止まったかと思えば今度はそれだ。
気持ちは分かるが、残念ながらここは男子校で男子寮で異性と関わる機会など皆無である。


「ここじゃ無理ですよ。隣に女子高ありますけど接触禁止されてますし」


「だよなー教室とか部活でイベントっていっても野郎ばっかりだもんな…はぁ」


泣いたかと思えば今度は落ち込み、ティッシュの山に顔を突っ込みテーブルからこぼれ落ちたティッシュたちが床へと転がり落ちていく。


「話変わりますけど、あれからジェイドさんとはどうなんですか？」


それらをゴミ箱にしまいながら、シドの前世ならの思い人について訊ねれば俯いたままの顔に赤みがさした。
泣いたり落ち込んだり照れたり忙しい人だな、全く。


「ただのクラスメイトですよーだ。そういうお前だってルーウェンとはどうなんだよ？会ったんだろ？」


「会いましたがそれだけです。シドさんと変わりませんよ」


俺たちは前世の頃から好きな人がいるけれど、その人に気持ちは伝えておらず、転生し再会したけれど、相手には前世の記憶がないときた。
昔から奥手の2人が転生したからとグイグイいけるはずもなく、今日も少女漫画を読みながら、自分達の情けなさをさらけ出すのだった。