彼が指輪を嵌める理由

mahiro

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「最近周りの女性が聞け聞けうるさいんすわ」


大きな溜め息を吐きながら言う日比野君の様子を見るに、本当に苦労しているのが分かる。
でも、それを聞いて欲しいと願う女性の気持ちもよく分かる。
自分ではなかなか聞けないからこそ、同性で尚且つ聞いても差し支えのない人に聞いて欲しいって思いが。
私だって日比野君の接点があれば、聞いてって頼むからね。


「そりゃ大変だな」


「誰のせいっすか。で?いい加減教えて貰っていいですか?明日返答することになってるんで」


「えぇ?ただで教えるのは嫌だなぁ」


「後輩に集るんすか?」


「それはしないけど……」


勿体ぶる重村さんに日比野君と同じ様に私も焦れったくなってくる。
頼むから早く言ってよ、重村さん。
いつまでも距離を空けながら歩いていても、二人が社内入ってしまえば、この先の答えを聞けなくなっちゃうんだから。
だからっていつまでも二人をストーキングするわけにもいかないし。


「うーん、見たままってことにしておいて?」


「それじゃあの子ら納得しないっすわ」


その通り。
納得するわけない。
確かに見たままなのかもしれないけど、私もその人たちも聞きたいのは、相手のことと相手とどんな状況にあるのかとか最も深く聞きたいの。
頑張れ、日比野君。
これは日比野君が女性たちから解放されるためでもあるんだから。


「そう言われてもなぁ……。じゃあ、結婚を予定してる人がいるからつけるってのはどうだ?!」


いい答え思い付きました、みたいな反応だけど、この反応からするに本当の理由だと思えないのは何故だろう。


「………まぁ、それでもいいっすけど。でも、それ本当ですか?嘘にしか聞こえないんすけど」


「ううん……でも、これしか言えないなぁ。すまん」


日比野君に謝る重村さんの表情は、眉が下がり困った表情に見えた。
こんな表情をさせるならこれ以上の答えは私には聞けないなぁ。
日比野君はどうか分からないけれど。


「いえ、そう言っときます。これでジュース奢って貰えるんで助かりましたわ」


「何?!まさかその為に聞いてきたのか?!」


「当たり前っすわ。俺興味ないっすもん。先輩ありがとーございます、ご馳走さまでーす」


日比野君はそう言うと重村さんを置いてさっさと社内に入り、残された重村さんは肩を落としながらも微笑を浮かべ中へと入っていった。
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