彼が指輪を嵌める理由

mahiro

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翌日の朝、やはり昨日予想した通りの噂が流れていた。
皆その話を信じているようだけど、真実ではないと知ってしまっている私はというと。
少しだけ気分が良かった。
理由は簡単で、周りより優位に立てている錯覚に陥っているんだと思う。


「………噂流れんの早いっすわ」


それより澄、聞いて欲しい。
私、もしかしたらチャンスを得たかもしれない。

今日の朝、上司から日比野君に書類を持っていくようにと言われて初めて持っていったのだけど、あまりにも日比野君の周りに資料が溜まっていたから見かねて手伝ってます。
私の所属している部署にも関わりある仕事だったから上司に事情を伝えたら手伝って良いって言われたし、張り切ってやるぞ。


「え?」


最初は手伝いを拒否されていたんだけど、上司から許可取ったと伝えたら嫌々ながらも手伝わせてくれた。
その作業の途中で日比野君がボソッと呟いたので、聞き返せば、そっぽ向きながら溜め息を吐いていた。


「俺の先輩の噂があっという間に広がりすぎて怖いって話っす。あんなヘタレの先輩の何処が良いんすかね?顔と頭しか良いところないと思うんすけど」


他にも沢山良いところはあるよ、と伝えたいけど、日比野君の中の私って恐らく仕事を手伝いに来た他部署の人間という認識だよね、恐らく。
日比野君の周りにいる女性たちと何の変わりもない存在だとは思われてないよね。
だとしたら、言わない方が情報得やすかったりするかも。


「日比野君の先輩って重村さんだよね?噂ではよく聞くけど、ヘタレとは聞いたことないなぁ」


作業をしつつ、あまり気にしてませんよ、アピールをしながらも実は内心凄く気にしてます。


「俺、重村先輩とは中学から今までずっと同じだからよく知ってるんすけど、好きな人が出来ても話しかけられもしないし、見てるだけで幸せとか言ってる人なんです」


それは草食系男子なんだ。
別に重村さんならそれでも良いと思うけど。
そもそも肉食系の重村さんが想像つかないかも。


「はぁ………そんな人が指輪つけるとか意味分からんすわ。ま、どーでも良いっすけどね」


そう言いながら机にあった紙パックの飲み物を飲む日比野君を見ながら、あれが女の子たちから貰った奴かとじろっと見てしまった。
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