運命には間に合いますか?

入海月子

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夢のよう

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「本当に採用されたの?」
 夢ではないかと手の甲をつねってみたけれど、ちゃんと痛かった。
 それに今後のプログラムや研修の説明資料が現実のことだと教えてくれる。
(うれしい、うれしい、うれしい!)
 喜びで浮き上がりそうな気分になり、スキップして回りたくなった。
 あそこであきらめなくてよかった。守谷さんに送ってもらえてよかった。
 憧れのバルセロナで建築を学べるなんて!
 ふつふつと喜びが込み上げてきて、興奮した状態で母に報告の電話をした。
 家族全員に祝ってもらって、ほわほわしていた私はハッと気づいた。
「そうだ、守谷さんにも伝えないと!」
 採用が決まっていたとしても、面接に行かなかったら、取り消しになっていたかもしれない。
 それを思うと、血の気が引く。
 ますます守谷さんへの感謝の気持ちが高まった。
 私はもらった名刺を出して、さっそくお礼のメールをすることにした。

 メールを書こうとして、守谷さんの名刺をもらったくせに、自分は名乗ってもいないことに気づく。
(なんて失礼なんだろう)
 焦って、まず謝罪から入った。
『今朝、国際建築技術振興会に送っていただいた大橋優那と申します。名乗りもせずに大変失礼しました。おかげさまで――』
 面接の結果は採用だったというのと、とても感謝している旨をしたためた。
 そこまで書いて、ふと止まる。
(お礼ってどうしたらいいんだろう?)
 友達同士だったらなにか奢るとかするけど、年上の男性にそれはありなのか疑問に思ったのだ。
 それに、彼女がいるのだろうから、変に疑われても申し訳ない。
 ちなみに、薬指に指輪はなかったのをこっそり確認していたので、結婚はしていなさそうだった。
 かといって、物を贈るとしてもなにを選んだらいいのかわからない。
 それでも、会ってお礼を言いたかった。
 そこで、素直に直接感謝の気持ちを伝えたいと書いた。
 すると、すぐさまメールが返ってくる。
 あまりの早さにエラーメールが戻ってきたのかと思ったが、しっかり返事があった。
『おめでとう! よかったな。それじゃあ、明日ランチでもどうだ?』
 明日は土曜日だし、特に用事はない。
 何度かやり取りをして、明日の十三時に出会った駅の近くのスペイン料理屋さんに行くことになった。
 守谷さんに会えると思うと、急に鼓動が速くなる。お礼のためだというのに。
(彼女がいる人にときめいてもしかたないわ。だいたいそんな場合でもないし)
 ヘルメットを渡されたときに聞こえた『美奈子』という名前は彼女のことに違いない。
 うっかり好きにならないようにと気持ちにブレーキをかけた。
 そこへまた守谷さんから『スペインレストランの予約を取った』とメールが来る。
(仕事が早い! お礼をする私のほうが取るべきだったのに)
 顔もよくて親切で仕事もできるなんてずるいと思う。
 明日のことを思うと、なかなか胸の高まりが収まらなかった。
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