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せっかちな彼②
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「でも、私たちは昨日出会ったばかりで、お互いのことをなにも知りません」
「好きになるのに時間は必要ない。今日一緒に過ごしてわかった。君の優しさやひたむきさが好きだ」
疑ったのを申し訳なく思うほど真摯に守谷さんは言ってくれた。
熱く見つめられ、まっすぐな気持ちを向けられて、動揺する。
(好きって……)
トクトクトクと心臓が騒ぎだした。
こんな素敵な人に告白されて、うれしくないはずがない。今日は長時間一緒にいたけど、不思議なほど自然体でいられたし、本当に楽しかった。誰といてもこんなことはなかなかない。
それでも、私はうなずけなかった。
「ごめんなさい。守谷さんは魅力的な人だと思います。でも、今はそういうことを考える余裕がなくて……。研修生になったばかりですし」
断り文句を口にすると、守谷さんはストップと手を伸ばして私を止めた。そして、しまったなぁとつぶやきながら髪を掻き上げた。
「たしかにタイミングが悪かったな。ごめん。俺はせっかちだってよく言われるんだよ」
わかってくれたみたいでほっとする。
出会って二日目に告白するなんてせっかちにもほどがあると思い、苦笑した。その分、仕事も早そうだけど。
油断していた私に、守谷さんは聞いてきた。
「でも、嫌じゃないってことだろ?」
「えっ? もちろん嫌なんてことはないです。光栄です」
守谷さんを嫌がる女性などいないだろう。
色気のある彼の顔を見返すと、守谷さんは薄い唇の端をくいっと上げた。
「それなら、これからじっくり口説かせてもらうよ」
「えぇっ!」
告白タイムは終わったかと思ったのに、ぜんぜん終わってなくて、それどころか継続宣言されてしまう。
(そんなの、困る……)
どう返したらいいのかわからず、私は目をうろつかせた。
「今日のところは返事はいいから」
「ですから――」
「返事はイエスしか受け付けない」
「そんな!」
にんまり笑う守谷さんに抗議するけど、聞く耳持たない感じで、私はあきらめた。
強制的に話を打ち切って、逃げ帰ることにする。
「……今日はありがとうございました。おやすみなさい」
ドアを開けて車を降りようとすると、後ろから声をかけられた。
「次に会うのは明後日の研修だな。楽しみにしてるよ」
「よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げたら、守谷さんは手を振ってから車を発進させた。
それを見送り、私は深い溜め息をつく。
(すごい自信だなぁ)
きっと彼が迫って落ちなかった女性はいないのだろう。
でも、私はムリ。そんな余裕はない。
それに、今でさえこんなに気持ちを乱されるというのに、付き合ったら振り回されるのが目に見えている。
せっかちと言っていたから、断り続けていたら、意外とあっさりあきらめてくれるかも。
楽観的に考え、守谷さんを頭の中から追い出した。
「好きになるのに時間は必要ない。今日一緒に過ごしてわかった。君の優しさやひたむきさが好きだ」
疑ったのを申し訳なく思うほど真摯に守谷さんは言ってくれた。
熱く見つめられ、まっすぐな気持ちを向けられて、動揺する。
(好きって……)
トクトクトクと心臓が騒ぎだした。
こんな素敵な人に告白されて、うれしくないはずがない。今日は長時間一緒にいたけど、不思議なほど自然体でいられたし、本当に楽しかった。誰といてもこんなことはなかなかない。
それでも、私はうなずけなかった。
「ごめんなさい。守谷さんは魅力的な人だと思います。でも、今はそういうことを考える余裕がなくて……。研修生になったばかりですし」
断り文句を口にすると、守谷さんはストップと手を伸ばして私を止めた。そして、しまったなぁとつぶやきながら髪を掻き上げた。
「たしかにタイミングが悪かったな。ごめん。俺はせっかちだってよく言われるんだよ」
わかってくれたみたいでほっとする。
出会って二日目に告白するなんてせっかちにもほどがあると思い、苦笑した。その分、仕事も早そうだけど。
油断していた私に、守谷さんは聞いてきた。
「でも、嫌じゃないってことだろ?」
「えっ? もちろん嫌なんてことはないです。光栄です」
守谷さんを嫌がる女性などいないだろう。
色気のある彼の顔を見返すと、守谷さんは薄い唇の端をくいっと上げた。
「それなら、これからじっくり口説かせてもらうよ」
「えぇっ!」
告白タイムは終わったかと思ったのに、ぜんぜん終わってなくて、それどころか継続宣言されてしまう。
(そんなの、困る……)
どう返したらいいのかわからず、私は目をうろつかせた。
「今日のところは返事はいいから」
「ですから――」
「返事はイエスしか受け付けない」
「そんな!」
にんまり笑う守谷さんに抗議するけど、聞く耳持たない感じで、私はあきらめた。
強制的に話を打ち切って、逃げ帰ることにする。
「……今日はありがとうございました。おやすみなさい」
ドアを開けて車を降りようとすると、後ろから声をかけられた。
「次に会うのは明後日の研修だな。楽しみにしてるよ」
「よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げたら、守谷さんは手を振ってから車を発進させた。
それを見送り、私は深い溜め息をつく。
(すごい自信だなぁ)
きっと彼が迫って落ちなかった女性はいないのだろう。
でも、私はムリ。そんな余裕はない。
それに、今でさえこんなに気持ちを乱されるというのに、付き合ったら振り回されるのが目に見えている。
せっかちと言っていたから、断り続けていたら、意外とあっさりあきらめてくれるかも。
楽観的に考え、守谷さんを頭の中から追い出した。
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