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【番外編】
理人①
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『抱いてください』
そう葉月が言った時、俺は柄にもなく焦った。
エッチなことは大好きだ。
据え膳があれば、喜んで食う。
だが、処女は俺には重い。
父と母の結末を見て、自分を相手に刻みつける行為はしたくないし、誰かに心を預けることはしたくないと思っていた。
父は究極の方法で母を裏切った。そんな父に心を移してしまっていたばかりに母は死んだのだ。
それに、薄っぺらな色恋沙汰はホスト時代に山ほど見た。
(俺はあんなものには巻き込まれない)
その上、生真面目な葉月の初めてをもらうなんて、どう考えても重すぎる。彼女の記憶に居座り続けるには、俺は軽薄でそこまでの価値はない。
──そう思っていたはずなのに。
乞われてみると、身も蓋もなく、彼女を押し倒してその身を貫きたいという猛烈な衝動に駆られた。
縋るような葉月の瞳。最初からなぜか妙に気にかかる彼女の視線。
(まいったな。俺はこの目に弱いんだ)
そっと溜め息をついて、その熱情を逃がす。
「この間も言ったが、お嬢様はもっと自分を大事にしろ。安易に処女を捨てようとするなよ」
敢えて呆れた表情を作り、葉月の額をつつくと、彼女は拗ねた顔でつぶやいた。
「いつもさっさと処女を捨ててこいって言われてるじゃないですか」
俺は髪を掻き上げて、視線を逸らす。
「そういうことじゃない。いや、言い方が悪かったか」
もともと葉月とはこんな関係になるつもりはなかった。
あんな現場を見てしまったからか、彼女を守ってやりたいと思った。しばらく名だけの婚約者役をするだけならと軽い気持ちで引き受けた。
葉月に手を出すつもりは毛頭なく、からかってみただけだったのが、つい欲が生まれた。戯れに彼女に触れたら止まらなくなった。
それでも、葉月の初めてをもらうつもりはなかった。
俺は言い聞かせるように葉月に告げた。
「あのな、結婚相手はしがらみが多すぎて自由にならないかもしれないから、せめて初めてぐらいはお嬢様の気になるやつとしろってことだ」
「気になる人……」
俺の言葉を聞いた葉月が、まっすぐに俺を見つめた。
その目を見て、ハッとする。
「マジかよ……」
俺は髪を掻き上げ、上を向いた。
いつの間にか、俺は契約の婚約者から、葉月の気になる人になってしまっていたらしい。
考えたら、当たり前だった。
世間知らずでうぶな彼女を構い倒していた。
庇い、励まし、甘やかした。
葉月はなぜか出会ったときから俺の心の琴線を刺激して、構わずにはいられなかった。
そりゃあ、男慣れしていない葉月がその気になってしまうのも仕方ない。
「あー、悪い。俺が悪かった。お嬢様が割り切った関係なんて、無理だったな。優しくしすぎた」
猛省して、ガシガシと髪の毛を掻く。
これはまずいと意地の悪いことを言ってみる。
俺なんて止めとけと。
「そばにいるうちに好きになったか? お嬢様は単純だな。もしかして、隣りの席のやつを好きになるタイプか? 席替えのたびに好きなやつが変わったりして?」
「ずっと女子校なので、そんなことありません」
「ハハッ、相変わらず真面目な返事だなぁ。それじゃあ、俺に弄られてるうちにその気になったとか?」
「そんなんじゃありません!」
傷ついた瞳で俺を見る葉月に、つい手を伸ばしそうになる。
(そんな目で俺を見るな)
絆されそうになり、表情を引き締める。
それなのに、めずらしく葉月は粘った。
そう葉月が言った時、俺は柄にもなく焦った。
エッチなことは大好きだ。
据え膳があれば、喜んで食う。
だが、処女は俺には重い。
父と母の結末を見て、自分を相手に刻みつける行為はしたくないし、誰かに心を預けることはしたくないと思っていた。
父は究極の方法で母を裏切った。そんな父に心を移してしまっていたばかりに母は死んだのだ。
それに、薄っぺらな色恋沙汰はホスト時代に山ほど見た。
(俺はあんなものには巻き込まれない)
その上、生真面目な葉月の初めてをもらうなんて、どう考えても重すぎる。彼女の記憶に居座り続けるには、俺は軽薄でそこまでの価値はない。
──そう思っていたはずなのに。
乞われてみると、身も蓋もなく、彼女を押し倒してその身を貫きたいという猛烈な衝動に駆られた。
縋るような葉月の瞳。最初からなぜか妙に気にかかる彼女の視線。
(まいったな。俺はこの目に弱いんだ)
そっと溜め息をついて、その熱情を逃がす。
「この間も言ったが、お嬢様はもっと自分を大事にしろ。安易に処女を捨てようとするなよ」
敢えて呆れた表情を作り、葉月の額をつつくと、彼女は拗ねた顔でつぶやいた。
「いつもさっさと処女を捨ててこいって言われてるじゃないですか」
俺は髪を掻き上げて、視線を逸らす。
「そういうことじゃない。いや、言い方が悪かったか」
もともと葉月とはこんな関係になるつもりはなかった。
あんな現場を見てしまったからか、彼女を守ってやりたいと思った。しばらく名だけの婚約者役をするだけならと軽い気持ちで引き受けた。
葉月に手を出すつもりは毛頭なく、からかってみただけだったのが、つい欲が生まれた。戯れに彼女に触れたら止まらなくなった。
それでも、葉月の初めてをもらうつもりはなかった。
俺は言い聞かせるように葉月に告げた。
「あのな、結婚相手はしがらみが多すぎて自由にならないかもしれないから、せめて初めてぐらいはお嬢様の気になるやつとしろってことだ」
「気になる人……」
俺の言葉を聞いた葉月が、まっすぐに俺を見つめた。
その目を見て、ハッとする。
「マジかよ……」
俺は髪を掻き上げ、上を向いた。
いつの間にか、俺は契約の婚約者から、葉月の気になる人になってしまっていたらしい。
考えたら、当たり前だった。
世間知らずでうぶな彼女を構い倒していた。
庇い、励まし、甘やかした。
葉月はなぜか出会ったときから俺の心の琴線を刺激して、構わずにはいられなかった。
そりゃあ、男慣れしていない葉月がその気になってしまうのも仕方ない。
「あー、悪い。俺が悪かった。お嬢様が割り切った関係なんて、無理だったな。優しくしすぎた」
猛省して、ガシガシと髪の毛を掻く。
これはまずいと意地の悪いことを言ってみる。
俺なんて止めとけと。
「そばにいるうちに好きになったか? お嬢様は単純だな。もしかして、隣りの席のやつを好きになるタイプか? 席替えのたびに好きなやつが変わったりして?」
「ずっと女子校なので、そんなことありません」
「ハハッ、相変わらず真面目な返事だなぁ。それじゃあ、俺に弄られてるうちにその気になったとか?」
「そんなんじゃありません!」
傷ついた瞳で俺を見る葉月に、つい手を伸ばしそうになる。
(そんな目で俺を見るな)
絆されそうになり、表情を引き締める。
それなのに、めずらしく葉月は粘った。
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