43 / 43
【番外編】
水野さんと私
しおりを挟む
本書『契約婚ですが、エリート上司に淫らに溺愛されてます』の文庫本が3/5に発売になりました!
皆さまの応援のおかげです。
ありがとうございます!
その番外編にもチラリと出てきた水野さんのお話をアップします!
主人公は水野さんの奥さんですが、結婚する前です。
*******************************
「ただいま~」
残業帰りの週末、私は自分の家じゃなく、彼の家に帰ってきた。付き合って半年の水野直さんのマンションに。
本当は定時であがれるはずだったのに、先輩のミスをなすりつけられ、資料作成をやり直さないといけなくなって、気がつけば二十一時を回っていた。
(手伝ってって言われたら、普通に手伝うのに、人のせいにして、その上、自分はさっさと帰るなんて!)
物質的な疲れとともに心がささくれ立った。
でも、遅くなると連絡を入れた水野さんからの返信に心が和む。
『大変だね。僕のことは気にせず、頑張ってね。でも、何時になってもいいから来てくれるとうれしいな。会いたいから』
ほわっと心が温かくなった。
丸顔のほんわかした彼を思い浮かべると、心が落ち着いて、余計なことを考えず、最短で仕事を終えることができた。
「おかえり。お疲れさま」
優しい目を細めて、水野さんが出迎えてくれた。私を労うように、ギュッと抱きしめてくれる。冷え切った身体に、彼のぬくもりが伝わって、心地よい。温かい胸に顔を寄せると、疲れが抜けていく。
「ご飯、できてるよ。でも……」
私の髪を撫でながら、水野さんがめずらしく言いよどんだ。
「?」
不思議に思って彼を見上げると、水野さんはへにゃっと情けなさそうに表情を崩した。
「ごめん。味付け失敗したし、ちょっと焦がしちゃった。君みたいに美味しく作れなくて、ごめん」
謝る彼に私は笑った。
「そんなの、いいよ~。作ってくれただけで、うれしい」
眉を下げた優しい人の頭を背伸びして撫でた。その仕草に、水野さんはふんわりと微笑んだ。
「ありがとう」
コートを脱いで、手を洗ってリビングに行くと、水野さんはテーブルに料理を並べてくれていた。
焦げちゃったと言っていたけれど、見た目は全然大丈夫そう。と思ったら、彼のお皿には焦げた野菜やお肉がいっぱいで、無事な部分を選んで私にくれたのだとわかる。
(好きだなぁ)
彼のさりげない優しさが本当に好きだ。
会社でのモヤモヤも疲れもさっぱり消えていき、肩の力が抜けた。水野さんにはいつも癒やされる。
「君が遅くなるって聞いたから、コンビニでお気に入りのプリンも買ってきたよ。食後に食べよう」
ニコニコとさらに癒やしてくれる彼に、私も自然に笑顔になった。
穏やかで幸せな週末が始まる。
―fin―
皆さまの応援のおかげです。
ありがとうございます!
その番外編にもチラリと出てきた水野さんのお話をアップします!
主人公は水野さんの奥さんですが、結婚する前です。
*******************************
「ただいま~」
残業帰りの週末、私は自分の家じゃなく、彼の家に帰ってきた。付き合って半年の水野直さんのマンションに。
本当は定時であがれるはずだったのに、先輩のミスをなすりつけられ、資料作成をやり直さないといけなくなって、気がつけば二十一時を回っていた。
(手伝ってって言われたら、普通に手伝うのに、人のせいにして、その上、自分はさっさと帰るなんて!)
物質的な疲れとともに心がささくれ立った。
でも、遅くなると連絡を入れた水野さんからの返信に心が和む。
『大変だね。僕のことは気にせず、頑張ってね。でも、何時になってもいいから来てくれるとうれしいな。会いたいから』
ほわっと心が温かくなった。
丸顔のほんわかした彼を思い浮かべると、心が落ち着いて、余計なことを考えず、最短で仕事を終えることができた。
「おかえり。お疲れさま」
優しい目を細めて、水野さんが出迎えてくれた。私を労うように、ギュッと抱きしめてくれる。冷え切った身体に、彼のぬくもりが伝わって、心地よい。温かい胸に顔を寄せると、疲れが抜けていく。
「ご飯、できてるよ。でも……」
私の髪を撫でながら、水野さんがめずらしく言いよどんだ。
「?」
不思議に思って彼を見上げると、水野さんはへにゃっと情けなさそうに表情を崩した。
「ごめん。味付け失敗したし、ちょっと焦がしちゃった。君みたいに美味しく作れなくて、ごめん」
謝る彼に私は笑った。
「そんなの、いいよ~。作ってくれただけで、うれしい」
眉を下げた優しい人の頭を背伸びして撫でた。その仕草に、水野さんはふんわりと微笑んだ。
「ありがとう」
コートを脱いで、手を洗ってリビングに行くと、水野さんはテーブルに料理を並べてくれていた。
焦げちゃったと言っていたけれど、見た目は全然大丈夫そう。と思ったら、彼のお皿には焦げた野菜やお肉がいっぱいで、無事な部分を選んで私にくれたのだとわかる。
(好きだなぁ)
彼のさりげない優しさが本当に好きだ。
会社でのモヤモヤも疲れもさっぱり消えていき、肩の力が抜けた。水野さんにはいつも癒やされる。
「君が遅くなるって聞いたから、コンビニでお気に入りのプリンも買ってきたよ。食後に食べよう」
ニコニコとさらに癒やしてくれる彼に、私も自然に笑顔になった。
穏やかで幸せな週末が始まる。
―fin―
10
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(226件)
あなたにおすすめの小説
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
訳あって、お見合いした推しに激似のクールな美容外科医と利害一致のソロ活婚をしたはずが溺愛婚になりました
羽村 美海
恋愛
【タイトルがどうもしっくりこなくて変更しました<(_ _)>】
狂言界の名門として知られる高邑家の娘として生を受けた杏璃は、『イケメン狂言師』として人気の双子の従兄に蝶よ花よと可愛がられてきた。
過干渉気味な従兄のおかげで異性と出会う機会もなく、退屈な日常を過ごしていた。
いつか恋愛小説やコミックスに登場するヒーローのような素敵な相手が現れて、退屈な日常から連れ出してくれるかも……なんて夢見てきた。
だが待っていたのは、理想の王子様像そのもののアニキャラ『氷のプリンス』との出会いだった。
以来、保育士として働く傍ら、ソロ活と称して推し活を満喫中。
そんな杏璃の元に突如縁談話が舞い込んでくるのだが、見合い当日、相手にドタキャンされてしまう。
そこに現れたのが、なんと推し――氷のプリンスにそっくりな美容外科医・鷹村央輔だった。
しかも見合い相手にドタキャンされたという。
――これはきっと夢に違いない。
そう思っていた矢先、伯母の提案により央輔と見合いをすることになり、それがきっかけで利害一致のソロ活婚をすることに。
確かに麗しい美貌なんかソックリだけど、無表情で無愛想だし、理想なのは見かけだけ。絶対に好きになんかならない。そう思っていたのに……。推しに激似の甘い美貌で情熱的に迫られて、身も心も甘く淫らに蕩かされる。お見合いから始まるじれあまラブストーリー!
✧• ───── ✾ ───── •✧
✿高邑杏璃・タカムラアンリ(23)
狂言界の名門として知られる高邑家のお嬢様、人間国宝の孫、推し一筋の保育士、オシャレに興味のない残念女子
✿鷹村央輔・タカムラオウスケ(33)
業界ナンバーワン鷹村美容整形クリニックの副院長、実は財閥系企業・鷹村グループの御曹司、アニキャラ・氷のプリンスに似たクールな容貌のせいで『美容界の氷のプリンス』と呼ばれている、ある事情からソロ活を満喫中
✧• ───── ✾ ───── •✧
※R描写には章題に『※』表記
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません
※随時概要含め本文の改稿や修正等をしています。
✿エブリスタ様にて初公開23.10.18✿
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
取引先のエリート社員は憧れの小説家だった
七転び八起き
恋愛
ある夜、傷心の主人公・神谷美鈴がバーで出会った男は、どこか憧れの小説家"翠川雅人"に面影が似ている人だった。
その男と一夜の関係を結んだが、彼は取引先のマネージャーの橘で、憧れの小説家の翠川雅人だと知り、美鈴も本格的に小説家になろうとする。
恋と創作で揺れ動く二人が行き着いた先にあるものは──
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
退会済ユーザのコメントです
舞子さん、レンタル特典まで読んでくれて、ありがとうございます!
あの特典が葉月&理人の集大成みたいなものになったので、読んでもらえて、幸せです♡
応援うれしかったです。
理人おぉ!母の心で見守ってきた子が幸せそうで感無量です( ;∀;)
スパダリなんだけど、なんか可愛らしい理人さんはやっぱり親の目線で見てしまう( ˘ω˘ )
葉月ちゃん、うちの息子をよろしくね!と思わずにいられない…w
ちまきさん、ありがとうございます!
本当に幸せそうですよね〜!
理人は庶民派なところがちょいちょい出てしまいます(笑)
たぶん、お互いを補ってこれからも幸せに暮らすので、大丈夫ですよ、お母さん!!
奨励賞おめでとうございます!!
そしてとってもステキな番外編でした😆✨✨
きゃああぁぁ!! 手料理にケーキにアイスだなんてステキ!!
しかもアイスでバラを作るだなんて!!
理人さん、さすが!!😍😍😍
プリンセス・ドゥ・モナコ、ステキですよね〜
軽やかな香りと柔らかなピンク、そしてふんわりと包み込んでくれるような花びら。気品あふれる可愛らしく美しいバラは、葉月にピッタリですね!!
ステキなお話をありがとうございました!
また二人に会えて嬉しかったです🥰💕💕
Adriaさん!
ありがとうございます!!
プレゼントをなににしよう?と理人と一緒に悩んだ結果、これになりました(笑)
薔薇は好きなんですが、葉月っぽい薔薇は?と検索しました!
プリンセス・ドゥ・モナコは本当に素敵ですよね〜。
ピッタリと言ってもらえて、うれしいです!