契約婚ですが、エリート上司に淫らに溺愛されてます

入海月子

文字の大きさ
42 / 43
【番外編】

葉月の誕生日 下

しおりを挟む
 葉月の誕生日当日になった。
 
 美術館に行き、帰ってくると、ひさびさの手料理を披露する。
 といっても、彼女のリクエストがトマトとオクラの冷製パスタだったから、簡単に作れてしまう。前に作って食べさせたのが気に入ったそうだ。
 それにシーザーサラダとカボチャのポタージュを合わせる。
 まぁ、デザートにボリュームがあるからいいか。

 夕食が用意できると、白ワインを注いで、グラスを合わせた。

「誕生日おめでとう、葉月」
「ありがとうございます。すごく美味しそうです」

 これだけで、葉月は幸せそうに微笑む。
 昨夜、零時を回ったとき、すでに祝いを述べて、盛ってしまったが、これからが本番だ。

「私、理人さんのこのパスタを食べるまで、オクラってちょっと苦手だったんです。でも、今は反対に好きになっちゃいました」

 上品にパスタを口に運び、ふふっと笑う葉月が愛しい。
 葉月は自分が俺に変えられたとよく言うが、根底から俺を変えたのは葉月の方だ。
 
 食事を終え、葉月の好きなパティシエのケーキを出す。
 
「私、こんなにうれしい誕生日は初めてです」

 目を潤ませてじっと俺を見つめる葉月に、もう押し倒したくなる。

「まだだ。プレゼントがある」

 自分にも葉月にも言い聞かせる。

「もう充分なのに」

 そう言う葉月に薔薇の花束を差し出した。ピンクの薔薇が十本だ。

「うれしい。ありがとうございます」

 受け取った葉月は薔薇の香りをかいで、目を細めた。
 やはり葉月にはピンクの薔薇が似合う。
 プリンセス・ドゥ・モナコという品種で、可愛くて凛とした彼女にぴったりだ。

「もうひとつあるんだ」

 俺はキッチンに行き、冷凍庫から用意しておいたアイスクリームを取り出した。
 イチゴが練り込んであり、薔薇と同じピンク色だ。
 それとコーンを持って戻ると、葉月が興味深そうに見ていた。
 これ専用に取り寄せたヘラで、アイスクリームをすくって、コーンに盛りつけていく。

「素敵!」

 葉月の目がキラキラ輝いた。
 そうだ。この顔が見たかった。

 アイスで一枚一枚の薄い花びらを作って、それを薔薇の形にしたものは、我ながら本物の薔薇に見劣りしない出来栄えだった。
 俺はアイスの薔薇を葉月に渡した。
 これで十一本。
 ホスト時代の知識が頭をよぎる。

 十一本の薔薇の花言葉は『最愛』。
 言うまでもないな。
 
「食べるのがもったいないくらい綺麗です」

 感心したように薔薇のアイスを眺め、「溶けるぞ?」と促してようやく葉月はアイスを食べはじめた。

「美味しい! イチゴが甘酸っぱくて、すごく美味しいです。このアイスも理人さんが作ったのですか?」
「まあな。アイスは千里にねだられて、よく作っていたからな。薔薇にしたのは初めてだが」
「理人さんは本当になんでもできますね」
「そうでもないぞ?」

 自分の嫁さんを喜ばすのに四苦八苦しているぐらいだ。
 俺が苦笑すると、考えを読んだかのように葉月が言った。

「だって、私をこんなにも幸せにしてくれています。最高のプレゼントをありがとうございます」

 輝くような笑みで俺を見る葉月に、たまらず顔を引き寄せ、口づけた。
 甘いアイスの味がする。うん、うまい。
 何度も吸いつき、舌を絡めてから口を離すと、アイスが溶けかけていて、葉月が慌てて舐める。

「エロい舐めかただな」
「もう、理人さん! 変なこと言わないでください」

 頬を薔薇と同じ色に染めて、葉月が抗議する。
 完全に滾った俺は、葉月がアイスを食べ終わるやいなや、彼女をベッドに連れていった。

 

─fin─


☆恋愛小説大賞奨励賞受賞記念に、書いてみました。
 皆さま、本当に応援してくださり、ありがとうございました!
 
☆追記:
書籍化までしていただいて、とてもうれしいです。
これも皆さまの応援のおかげです。
本当に感謝しております。
ちなみに、レンタル特典は二人の三年後のことを書きました。
かなり盛りだくさんなので、読んでいただけるとうれしいです。
レンタル特典は私の作品じゃなくても、1ヶ月以内にエタニティブックスのどれでもいいのでレンタルすると、すべての番外編が読めるそうですよ~。
(知ってました? 私は全然知りませんでしたw)
 

書籍化で素敵な表紙をつけていただきましたが、自分で有償依頼した表紙絵も気に入っているので、ここに載せておくことにします。


しおりを挟む
感想 226

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

ハメられ婚〜最低な元彼とでき婚しますか?〜

鳴宮鶉子
恋愛
久しぶりに会った元彼のアイツと一夜の過ちで赤ちゃんができてしまった。どうしよう……。

各務課長が「君の時間を十分ください」と言った結果

汐埼ゆたか
恋愛
実花子はカフェで恋人と待ち合わせしているが、彼はなかなか来ない。 あと十分でカフェを出ようとしたところで偶然上司の各務と会う。 各務から出し抜けに「君の時間を十分ください」と言われ、反射的に「はい」と返事をしたら、なぜか恋人役をすることになり――。 *☼*――――――――――*☼* 佐伯 実花子(さえき みかこ) 27歳  文具メーカー『株式会社MAO』企画部勤務  仕事人間で料理は苦手     × 各務 尊(かがみ たける) 30歳  実花子の上司で新人研修時代の指導担当  海外勤務から本社の最年少課長になったエリート *☼*――――――――――*☼* 『十分』が実花子の運命を思わぬ方向へ変えていく。 ―――――――――― ※他サイトからの転載 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 ※無断転載禁止。

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。