全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第一章 ― 優 ―

気になる人③

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 悔しいから、私も写真を撮る。
 せっかく許可をもらったから、この人を撮っちゃえ。
 絵を描く邪魔にならないように、パシャパシャと屋上からの風景と久住先輩をカメラに納める。
 横顔も綺麗だなぁ。私がいても気にならないほど集中している。
 と思っていたら

 グゥゥー
 クー

 二つのお腹から、音が聞こえた。
 うわぁ、お互いさまでも恥ずかしい……。

「く、久住先輩、パン食べます?」
遥斗はると
「え?」
「名字は嫌いなんだ」

 ん? 名前で呼べってことかな?

「は、遥斗はると先輩、パン食べますか?」
「食べる」

 私はカバンから袋入のお徳用ロールパンを取り出した。家を出るときに引っつかんできたのだ。あと、牛乳パックとバナナ。

 ウェットティッシュで手を拭いたあと、パンをひとつ取り出して、残りのパンを袋ごと遥斗はると先輩に差し出す。
 彼はそれを見て吹き出した。

「お前、お徳用って……色気ないな」
「悪かったですね。食べないならいいですよ?」
 
 突然の笑顔に私は、ときめきながらも膨れるという複雑な芸当をしてみせた。
 確かに男の子みたいだけどさ。

「いや、食べる」

 先輩が慌ててパンの袋を引き寄せた。
 ロールパンを一口食べると水分を持っていかれて、慌てて牛乳パックにストローを刺し、飲んだ。
 先輩はあっという間にひとつ食べて、二つ目に突入していた。

「飲み物、これしかないんですけど、飲みます?」

 私は自分の飲みかけの牛乳パックを見せた。
 さすがになにも飲まずにパンを食べるのは喉が詰まりそうと思ったのだ。

「ん……」

 遥斗はると先輩は躊躇なくそれを取って、口をつけ、また私に戻した。
 自分から差し出したものの、ストローをじっと見つめてしまう。
 
(意識しすぎ!)

 私はえいっと牛乳を飲んだ。
 ついでにバナナも半分分けてあげた。

 超簡素な朝食を終え、ひと息ついた私達は屋上からの眺めをぼんやり見つめていた。

「あ、あそこの丘、まだ桜が咲いてる!」

 ソメイヨシノじゃなさそうだけど、ピンクのエリアが見えた。
 八重桜かな? 桜が散るところを撮るのもいいかも。よし、行ってみよう。

「先輩、私あそこに行ってきます! じゃあ、また明日!」

 思い立ったら即実行がモットーの私は先輩に挨拶すると、荷物を持ってバタバタとそこを目指して出発した。
 珍しいものを見るような先輩の視線を感じながら。
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