全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第一章 ― 優 ―

嫌だ!嫌だ!嫌だ!②

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 その声はこのドアの向こうから漏れてきたようだった。
 凍りついた私の耳に、さらに甘い声が入ってくる。

「あっ……ふふっ、遥斗、ん……早く終わらせようと、してるでしょ? んっ……あの子が、来るから?」

 真奈美先輩の声だ……。

「………余裕だな、真奈美」
「え、あっ、あんっ、ちょ……あっ、あ、あ、……」

 低く抑えたような遥斗先輩の声とそれに続く真奈美先輩の切羽詰まった喘ぎ声。
 さすがの私もなにをしているのかわかった。

 心が冷えて、逆にかあっと頬が熱くなった。
 我に返った私は、そっと踵を返す。
 最初は静かに歩いていたけど、だんだん早足になり、気がつくと駆け出していた。

 うそ…、うそ……。
 噂で聞いてはいたけど、本当だったんだ……。

 どこをどう走ったのか、ガクッと膝が曲がって崩れ落ちるようにしゃがみ込んだのは校舎裏だった。人がいない方、いない方へ進んでいたのかもしれない。

 荒い息を吐きながらスカートが汚れるのも気にならず、私はそこに座って、しばらく放心していた。

 嫌だ、嫌だ、嫌だ……!

 私の頭の中を埋め尽くしていたのはそんな言葉だった。

 あんなシーンに出くわしてしまったのも嫌だし、それが部室でというのも嫌だし、知り合いだというのも嫌だし、ご飯のためかもと思うのも嫌だった。
 なにより遥斗先輩が誰かを……。

 私はぶんぶん首を振った。

 遥斗先輩と真奈美先輩は付き合っているのかもしれないじゃない。聞いたことはなかったけど。
 それならああいうことをしてもおかしくはない、よね……?

 ズキンと胸が痛む。
 あんな場面に遭遇して、ショックなんだわ。きっと。

 私の周りは奥手が多いからそうした話題にふれることはほとんどない。でも、中三ぐらいからクラスで派手な女の子とかが誰かのところに泊まっただの、先輩は優しかっただの話しているのは漏れ聞こえてきていた。
 高校生になればよりそんな話題も増えてくるのはわかっているけど、やっぱりショックだった。
 
 こんなんだから、私は色気がないって言われるのかな?

 

 チャイムが鳴って時計を見ると、もう一時間近くこうしていたのに気づく。
 のろのろ立ち上がって、スカートの土を叩いて落とす。

 お弁当箱を取りに行かなきゃ。
 もう……終わっているよね……?
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