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第一章 ― 優 ―
またやっちゃった③
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放課後、部室の前で立ち止まる。
深呼吸してから、なるべく明るい声を出した。
「こんにちはー」
遥斗先輩は定位置で絵を描いていた。油絵に戻っていた。それが先輩の心情を示しているようで、胸がキュッとなる。
ちらっと私を見た先輩は硬い表情のまま頷いた。
どうしよう……。
パソコンを立ち上げて、時間を稼ごうとしたら、すでに立ち上がっていた。
パソコン使ったんだ。
いろいろ見てくれたかな?
でも、あの表情はまだ納得していないようで、泣きたい気分になる。
ふいに気づいた。
私、先輩に嫌われたくないと思ってる……?
もちろん、誰にだって嫌われたくはないけど、遥斗先輩に嫌われると想像するだけで、胸が痛い。
そりゃあ、毎日顔を合わせてるし、今後も合わせることになるもんね。
嫌いな私がここに来たところで、遥斗先輩は気にしないだろうし、黙々と絵を描き続けるだけだろうけど、私が保たない。
ぼんやりと見たパソコンの暗い画面に途方に暮れた私の顔が映っていた。
「あの……」
「ネットを見た」
意を決して話しかけた私の言葉に、先輩の声が重なった。
先輩から話しかけてくれるとは思わなかったので、びっくりして目を見開く。
下げていた目線を上げると、ニコリともしない顔で遥斗先輩がこっちを見ていた。
なにを言われるのかと身体が強張った。
その私の様子を見て、先輩が瞳を揺らした。表情が緩んだ……気がする。
「確かに、素人がいっぱい絵を売っていた。俺の絵も売れるかもしれない」
そう言うと、先輩は気まずそうに視線を逸して、ぽつりと付け加えた。
「……嫌な言い方をして、すまなかった」
その言葉が耳に入ると、ぱぁっと辺りが明るくなった気がした。
よかった、嫌われてなかった……。
どうやって先輩に伝えようか、どうしたら嫌われないかとぐるぐる考えていた頭は、突然その必要がなくなって、呆けていた。
なんて返していいかわからず、固まっていると、そっと頬にふれる感触がした。
「泣くなよ……」
気がつくと、そばに困った顔をした先輩がかがんで、私の涙を拭ってくれていた。
ち、近い……!
超近距離に美しい顔があって、思わず飛び退く。
その反応に遥斗先輩は顔をしかめた。
「あれ? 私、泣いてた?」
深呼吸してから、なるべく明るい声を出した。
「こんにちはー」
遥斗先輩は定位置で絵を描いていた。油絵に戻っていた。それが先輩の心情を示しているようで、胸がキュッとなる。
ちらっと私を見た先輩は硬い表情のまま頷いた。
どうしよう……。
パソコンを立ち上げて、時間を稼ごうとしたら、すでに立ち上がっていた。
パソコン使ったんだ。
いろいろ見てくれたかな?
でも、あの表情はまだ納得していないようで、泣きたい気分になる。
ふいに気づいた。
私、先輩に嫌われたくないと思ってる……?
もちろん、誰にだって嫌われたくはないけど、遥斗先輩に嫌われると想像するだけで、胸が痛い。
そりゃあ、毎日顔を合わせてるし、今後も合わせることになるもんね。
嫌いな私がここに来たところで、遥斗先輩は気にしないだろうし、黙々と絵を描き続けるだけだろうけど、私が保たない。
ぼんやりと見たパソコンの暗い画面に途方に暮れた私の顔が映っていた。
「あの……」
「ネットを見た」
意を決して話しかけた私の言葉に、先輩の声が重なった。
先輩から話しかけてくれるとは思わなかったので、びっくりして目を見開く。
下げていた目線を上げると、ニコリともしない顔で遥斗先輩がこっちを見ていた。
なにを言われるのかと身体が強張った。
その私の様子を見て、先輩が瞳を揺らした。表情が緩んだ……気がする。
「確かに、素人がいっぱい絵を売っていた。俺の絵も売れるかもしれない」
そう言うと、先輩は気まずそうに視線を逸して、ぽつりと付け加えた。
「……嫌な言い方をして、すまなかった」
その言葉が耳に入ると、ぱぁっと辺りが明るくなった気がした。
よかった、嫌われてなかった……。
どうやって先輩に伝えようか、どうしたら嫌われないかとぐるぐる考えていた頭は、突然その必要がなくなって、呆けていた。
なんて返していいかわからず、固まっていると、そっと頬にふれる感触がした。
「泣くなよ……」
気がつくと、そばに困った顔をした先輩がかがんで、私の涙を拭ってくれていた。
ち、近い……!
超近距離に美しい顔があって、思わず飛び退く。
その反応に遥斗先輩は顔をしかめた。
「あれ? 私、泣いてた?」
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