92 / 171
第二章 ― 遥斗 ―
知られたくなかった事実②
しおりを挟む
休み明けの金曜日、暗い気持ちのまま絵を描いていると、「おはよーございます!」と優が普通に来たから、びっくりした。
でも、目が合うと赤くなって目が泳いだから、やっぱり昨日のは認識しているようだ。
「お弁当です。また帰りに取りに来ますね」
それでも、いつも通りに弁当を渡してくれる。
律儀だな。
「あぁ、ありがとう」
心からそう言った。
優が去ると、俺は弁当を開けた。
大雑把に詰め込まれていたものから、花だらけになり、最近は彩りよくなってきた優の弁当。
昨日は、金もなく食欲もなかったから、ほぼ一日ぶりの食事だ。
卵焼きが甘い。
ふと優の言っていた『好きなものだらけのお弁当』という言葉を思い出す。
あのとき想像した弁当箱は空っぽだったけど、今ならみっちり詰まった弁当を思い浮かべられる。
まずはこの卵焼き、醤油味の唐揚げ、ブリの照り焼き、ブロッコリー、あぁ、デザートのフルーツもいいな。なんにしようかな。
優の弁当で初めて食べるものも多かった。
今日のフルーツは、オレンジだった。
鮮やかな断面が目にまぶしい。
ぽたり……
せっかくの卵焼きがちょっと塩辛くなった。
それ以上塩辛くならないように、急いで顔を拭う。
そのまま、腕を目に押し当てた。
もう優は来ないと思っていた。
俺は……どうしたらいい……?
どうしたらよかったんだ……?
今さら後悔しても遅い。
純真無垢な優と、汚れている俺。
それは変えられない。
優に気づかされてしまった心の柔らかいところが痛んでしょうがない。
ギュッと目を閉じ、心に蓋をする。
考えれば考えるほどつらくなるから。
落ち着くために、教科書を持ってきて、目を通す。
ここにいる必須条件として成績上位をキープするというものがあるから、一日何時間かは勉強をしている。
昔からテストは得意だから、教科書を読めばだいたいわかる。
それなのに、授業を受ける意味ってなんだろう? ここに書いていない内容を教えてくれるのだろうか?
でも、授業に出ていたときは、そんな気配はなく、教科書通り教えてくれるだけだった。
数学の問題を解く。
俺は数学が好きだ。
数学には必ず答えがあるから。正しい手順で計算すれば、正しい公式を使えば、必ず正しい答えが出るから。
人生もこうだったらいいのに。
夕方、優が弁当箱を取りに来た。
「明日から5連休ですねー。これ、ゴールデンウィーク中のオヤツにでもしてください」
そう言って、昨日焼いたというクッキーをくれた。
「……ありがとう」
うだうだ悩みまくっていた俺は、優になにか言いたかったが、なにを言っていいのかわからず、ただ帰っていく姿を見送った。
そして、ゴールデンウィークが始まった。
俺にとっては、地獄の始まりだった。
でも、目が合うと赤くなって目が泳いだから、やっぱり昨日のは認識しているようだ。
「お弁当です。また帰りに取りに来ますね」
それでも、いつも通りに弁当を渡してくれる。
律儀だな。
「あぁ、ありがとう」
心からそう言った。
優が去ると、俺は弁当を開けた。
大雑把に詰め込まれていたものから、花だらけになり、最近は彩りよくなってきた優の弁当。
昨日は、金もなく食欲もなかったから、ほぼ一日ぶりの食事だ。
卵焼きが甘い。
ふと優の言っていた『好きなものだらけのお弁当』という言葉を思い出す。
あのとき想像した弁当箱は空っぽだったけど、今ならみっちり詰まった弁当を思い浮かべられる。
まずはこの卵焼き、醤油味の唐揚げ、ブリの照り焼き、ブロッコリー、あぁ、デザートのフルーツもいいな。なんにしようかな。
優の弁当で初めて食べるものも多かった。
今日のフルーツは、オレンジだった。
鮮やかな断面が目にまぶしい。
ぽたり……
せっかくの卵焼きがちょっと塩辛くなった。
それ以上塩辛くならないように、急いで顔を拭う。
そのまま、腕を目に押し当てた。
もう優は来ないと思っていた。
俺は……どうしたらいい……?
どうしたらよかったんだ……?
今さら後悔しても遅い。
純真無垢な優と、汚れている俺。
それは変えられない。
優に気づかされてしまった心の柔らかいところが痛んでしょうがない。
ギュッと目を閉じ、心に蓋をする。
考えれば考えるほどつらくなるから。
落ち着くために、教科書を持ってきて、目を通す。
ここにいる必須条件として成績上位をキープするというものがあるから、一日何時間かは勉強をしている。
昔からテストは得意だから、教科書を読めばだいたいわかる。
それなのに、授業を受ける意味ってなんだろう? ここに書いていない内容を教えてくれるのだろうか?
でも、授業に出ていたときは、そんな気配はなく、教科書通り教えてくれるだけだった。
数学の問題を解く。
俺は数学が好きだ。
数学には必ず答えがあるから。正しい手順で計算すれば、正しい公式を使えば、必ず正しい答えが出るから。
人生もこうだったらいいのに。
夕方、優が弁当箱を取りに来た。
「明日から5連休ですねー。これ、ゴールデンウィーク中のオヤツにでもしてください」
そう言って、昨日焼いたというクッキーをくれた。
「……ありがとう」
うだうだ悩みまくっていた俺は、優になにか言いたかったが、なにを言っていいのかわからず、ただ帰っていく姿を見送った。
そして、ゴールデンウィークが始まった。
俺にとっては、地獄の始まりだった。
0
あなたにおすすめの小説
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる
釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。
他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。
そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。
三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。
新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる