93 / 171
第二章 ― 遥斗 ―
災難①
しおりを挟む
初日、バイト先に行き、給仕していると、耳障りな甲高い声が聞こえた。
「どきなさいよ! そこは私の席よ!」
「なに言ってるんですか。予約席じゃないですよね?」
そちらを見やると、俺がバイトに入っているといつも朝から晩まで粘り続ける女がいた。
一応、定期的に注文をするから、店としても追い出すわけにはいかないけど、あきらかに様子がおかしく帰りにつけられていないか、後ろを確認して帰るほどだった。
今日はいつもの席にすでに他の女性客が座っていて、強引にそこに座ろうとしているようだ。
「お客様、こちらの席へどうぞ」
店長が別の席に誘導しようとするが、「イヤよ!」と彼女は叫んで、あろうことか、座っていた女性の髪を引っ掴んで椅子から引きずり下ろそうとした。
「きゃあ!」
思いっきり引っ張られたようで、女性が悲鳴をあげる。
「お客様!」
店長がその手を掴んで、髪を離そうとする。
女は暴れまくって、ようやく手を離させたときには女性のお客さんは床に座り込んでいた。
「大丈夫ですか?」
手を差し出して立たせようとすると、「「久住くん!」」と二人が目を輝かせた。
「うれしい! 私のために来てくれたの?」
「なに言ってるのよ! 久住くんは私に会いに来たのよ!」
どっちもやっかいなやつだった……。
「どちらでもありません。俺はここでバイトしているだけで……」
なるべくそっけなく言うと、「店長の前だからって隠さなくていいのよ?」「照れなくてもいいのに」とまったく話が噛み合わない。
店長に目線で外せと言われて、奥に引っ込む。
すると、また騒ぎがエスカレートしたようで、結局店長は警察を呼んだ。
俺は事態が落ち着くまで、厨房に留められた。
料理人が同情して、ジュースを出してくれる。
それを飲みながら、また首になるんだろうなと落ち込んだ。
ゴールデンウィークはここのまかないを期待していたのに、計画が崩れた。
あとで金を下ろさないとさすがに189円では5日も過ごせない。
今日バイト代が振り込まれているはずだ。
手数料が痛いけど、帰りに下ろしていこう。
店長が戻ってきて、案の定、「久住くんが悪いわけではないと重々わかっているんだけど……」とやっぱり首になった。
「わかりました。お世話になりました」と頭を下げて、店を出る。
求人の貼り紙はないか見ながら歩くが、こういうときに限って、なかなかない。
ATMを見つけて、金を下ろそうとすると、残高が189円のままだった。
どういうことだ?
まじまじと画面を見つめてフリーズする。
気まずいけど、さっきのバイト先に戻って店長に確認した。
「バイト代? 昨日ちゃんと振り込んだよ。あー、久住くんの銀行は確かゴールデンウィーク中はメンテナンスで反映するのがゴールデンウィーク明けになるんじゃなかった? CMで何度も流れてたよね?」
そう言われて、目の前が真っ暗になる。
呆然としたまま、そこを辞した。
「どきなさいよ! そこは私の席よ!」
「なに言ってるんですか。予約席じゃないですよね?」
そちらを見やると、俺がバイトに入っているといつも朝から晩まで粘り続ける女がいた。
一応、定期的に注文をするから、店としても追い出すわけにはいかないけど、あきらかに様子がおかしく帰りにつけられていないか、後ろを確認して帰るほどだった。
今日はいつもの席にすでに他の女性客が座っていて、強引にそこに座ろうとしているようだ。
「お客様、こちらの席へどうぞ」
店長が別の席に誘導しようとするが、「イヤよ!」と彼女は叫んで、あろうことか、座っていた女性の髪を引っ掴んで椅子から引きずり下ろそうとした。
「きゃあ!」
思いっきり引っ張られたようで、女性が悲鳴をあげる。
「お客様!」
店長がその手を掴んで、髪を離そうとする。
女は暴れまくって、ようやく手を離させたときには女性のお客さんは床に座り込んでいた。
「大丈夫ですか?」
手を差し出して立たせようとすると、「「久住くん!」」と二人が目を輝かせた。
「うれしい! 私のために来てくれたの?」
「なに言ってるのよ! 久住くんは私に会いに来たのよ!」
どっちもやっかいなやつだった……。
「どちらでもありません。俺はここでバイトしているだけで……」
なるべくそっけなく言うと、「店長の前だからって隠さなくていいのよ?」「照れなくてもいいのに」とまったく話が噛み合わない。
店長に目線で外せと言われて、奥に引っ込む。
すると、また騒ぎがエスカレートしたようで、結局店長は警察を呼んだ。
俺は事態が落ち着くまで、厨房に留められた。
料理人が同情して、ジュースを出してくれる。
それを飲みながら、また首になるんだろうなと落ち込んだ。
ゴールデンウィークはここのまかないを期待していたのに、計画が崩れた。
あとで金を下ろさないとさすがに189円では5日も過ごせない。
今日バイト代が振り込まれているはずだ。
手数料が痛いけど、帰りに下ろしていこう。
店長が戻ってきて、案の定、「久住くんが悪いわけではないと重々わかっているんだけど……」とやっぱり首になった。
「わかりました。お世話になりました」と頭を下げて、店を出る。
求人の貼り紙はないか見ながら歩くが、こういうときに限って、なかなかない。
ATMを見つけて、金を下ろそうとすると、残高が189円のままだった。
どういうことだ?
まじまじと画面を見つめてフリーズする。
気まずいけど、さっきのバイト先に戻って店長に確認した。
「バイト代? 昨日ちゃんと振り込んだよ。あー、久住くんの銀行は確かゴールデンウィーク中はメンテナンスで反映するのがゴールデンウィーク明けになるんじゃなかった? CMで何度も流れてたよね?」
そう言われて、目の前が真っ暗になる。
呆然としたまま、そこを辞した。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる
釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。
他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。
そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。
三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。
新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる