【短編集】纏う人たちの物語 ゼンタイに関わりたくなかったのに

ジャン・幸田

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ゼンタイ短編集

新春ヘビゼンタイ

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 とある干支がヘビの新年、私はとある神社に向かっていた。

暇を弄んでいたけど、家の中の古いお守りなどを返すようにと家族に言われ、お酒を飲むのを我慢して車で向かっていた。


 「どうせ、あそこに行っても臨時駐車場から川向うまで歩かないといけないし、並ばないと行けないし」

 そうつぶやいでいたところ、途中にある神社は駐車場から近いし無料だし近くに美術館があるから時間も潰せるしと思いついた。そこで最初に目指していた神社からそこへ行くことにした。

 その神社は県内の初詣客のランキングに入ったことのないところで、知っている人は知っているところだった。少し離れたところにある美術館の駐車場、ここは後で美術館に入れば無料になるので、都合いいと思った。そして神社の境内にある御札を返すところに古いお守りを収めて参拝した、そして家族から預かったお金で新しい御札を買った。

 そこの社務所は普段はいない巫女さんが何人か座っていた。みんなバイトなので学生のようだ。なんとなくギコチナサを感じたが、そんなの小さいことだった。そのとき、後ろに会社の上司が歩いているのに気がついた。早く美術館に行きたかったが、挨拶しないわけにはいかないので彼を追いかけた。

 「あけましておめでとうございます、野林部長」

 すると、簡単に挨拶してくれたが、なにやら近くの広場で人が集まっているようだった。そこに野林部長が向かうようであった。それでついていくことにした。

 「これって何ですか?」

 「これか、新春コスプレ大会だそうさ。一応神社の境内だからエッチなキャラクターのものはだめだけど・・・家内と娘がやるのはちょっとね。ちょっと、持ってくるように頼まれてね、これを」

 野林部長が持っていたのは小型のスーツケースのようだった。すると目の前に侍のコスプレをした高校生らしき男が取りに来た、どうも息子のようだった。そこで二人がコソコソ喋っていたが、内容はわからなかった。

 「ちょっとしたものが見れるようだ、少し見ていかないか?」

 野林部長がそう言うと少しして眼の前に女というか人の形をした何かが五人ほどやっていた。それは・・・ウェットな鱗に覆われたヘビ柄の全身タイツ姿をしていた。まさか、これって部長の家族? でもそれを確かめるのは恐ろしくてできなかった。

  五人の女は白いヘビ柄の全身タイツを纏っていた。本物のヘビの鱗の光沢を放っていていた。まあ、ヘビに手足はないけど。目のところは小さな穴が空いているようで、そこから視界を確保しているけど、身体は女らしい凸凹であった。それは妖艶に感じたけど、彼女たちは寒くないのか?

 そのあと、知ったことであるが部長が持ってきたのは試着用の全身タイツが入っていたそうだ。希望者が多かったのだという。その時、希望すれば自分もできたようであったが、早々と美術館に行ってしまった。でも、展示されている美術品よりもさっきの白いヘビ柄の全身タイツの女の姿が頭から離れなかった・・・
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