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(0)引きこもり少女

005.今の自分ではない存在とは?

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 わたしは父が言った「今の自分ではない存在」という意味が分からなかった。それには思いつく節があった。父は変身ヒーローものが好きという変わった嗜好があった。
 しかも、正義ではなく対抗するビラン(悪役)の方に肩入れしているのだ。その証拠に父の「趣味の部屋」はそういったグッズが置かれていたからだ。あんまり入りたくないところでああったけど。

 とすると、さっき会った人形みたいな運転手や女、戦闘員みたいな全身タイツを着たような女も説明がつく。すべて父が生み出したものだと。でも、おかしい! あんな普通でない格好をさせられて平気なのあの人たちは!

 「父さん、まさかさっきガレージで会った人達のように、わたしもなれっていうの?」

 「ああ、あいつらか? あいつらは一種の生体メカみたいなもので、操り人形にすぎない。お前になってもらいたいのは高度な機能を持つこういったものだ!」

 父はそういって、脇に抱えていたタブレットを操作して画像を呼び出していた。そこには先ほど見た人形みたいな人たちが映っていた。

 「それって美少女着ぐるみを着た人たちじゃないの? それにしても・・・なんでハダカなのよ!」

 わたしは思わずのけぞってしまった。またいつものエッチな話をするんじゃないかと思ったからだ。父はそうやってエッチな画像を見せては娘のわたしが困惑する顔を見ることがあったからだ。

 「いやいや、これは一種のパワードスーツを着たサイボーグみたいなものだ。お前も知っているだろう。最近自衛隊にパワードスーツ部隊が新設されたと。この画像に映っているのはその自衛隊の部隊よりも高性能なスーツなんだ。まあ、可愛らしいけどな。そうそう、俗にこのスーツは人形娘と呼ばれているんだ」

 「スーツ? じゃあ、その人形娘っていうのは本当に着ているというわけなの?」

 「ああ、そうだ。でも一度脱いだら脱ぐ必要がない! なぜなら人形そのものになるからだ」

 「!?」

 いったい全体なんのことかわからないけど、人形になるのなら脱ぐ必要なないって・・・まさか、一種の改造人間になれということなの?
 わたしは、そんなの嫌だと思ったけど父はわたしを説得しはじめた。

 「実は、お前になってもらいたい人形娘なんだが、新型で被験者になれるのは極限られているんだ。それで、その新型の人形娘が完成しなければ、この研究所のクライアントに今までの研究成果を披露する事ができないので、クライアントの要求を応じられないんだ。
 もし応じられないと、この研究につぎ込んできた金銭をいまある財産全て払えるだけでも、返さないといけなくなるんだ。そうなると研究所に勤めている人たちも困るし、当然お前も住む家が無くなってしまう。
 それに、この家がなくなれば、お前の居場所はなくなってしまう! だから、頼む!」

 わたしは父の言葉に動揺していた。あんなロボットのような人形娘になるのは嫌だけど、拒否すれば住む家がなくなるというのだ。そうなると、退屈で暇だけど引きこもっている場所を失うというのだ。そうなると・・・想像できなかった。だから答えはひとつだった!
 
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