宇宙航海士育成学校日誌

ジャン・幸田

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誰が誰だがわかりません!

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 地球の静止軌道上に設置された宇宙ステーションを出発する一隻の練習宇宙船があった。船名は無く登録記号がX‐884であった。ただ船員たちは自らの船に「バウンティー号」と少し不吉な愛称を付けていた。

 船員となる生徒たちは各国から選抜された宇宙航海士を目指す者であった。毎年、決められた時期に出発しポイントを稼ぎながら1年後戻ってくる体験航海すると定められており、この年は30隻が出発した。そして船員は・・・


 「地球軌道上を離脱、ワープポイントの座標の設定終了、2時間33分後に最初のワープ航法を行います」

 ブリッジにいる小柄なロボット少女は人工音声で語った。それを見つめるのはロボットたちだった。


 「とりあえず問題なし!」

 その人工音声は宇宙船のホストコンピュータのものだった。その声は船長でもあり教師であった。ロボットたちは生徒だった。いや厳密に言うとロボットの多くは人間だった。

 この宇宙船は最低限の物資で生命維持を行う必要があるため、乗員は常時宇宙服の着用が義務となっている。しかも、その宇宙服はロボットにしか見えなかった。

 「それにしても」

 ブリッジを離れたロボット少女はよく似た身長のロボット少女に話しかけていた。二体いや二人共人間だった。この宇宙船に搭乗する前に適合確認のうえで生命維持装置を装着したうえでロボットの中に埋め込まれていた。

 「さっきから同じことをいっているわね! みんなロボットにしか見えないでしょ! わたしも二十四時間前まで人間だったわ! それはみんな一緒よ」

 「そうだけど・・・誰かが評価ロボなんでしょ・・・でもわからないわ」

 この宇宙船には35人の生徒がいることになったいるが、何人か分からないが純粋なロボットがいるのを知っていた。だから油断できなかった。

 「大丈夫よ! みんな一緒よ! それにしても・・・気持ちいいけど生まれたときからロボットだった気がするね」

 二人共、完全にロボットと同化していた。人間だったときの感覚を忘れそうなぐらいに。
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