死んだことにされた処女妻は人外たちと遍路の旅をする―

ジャン・幸田

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(弐)処女妻の時代

黒装束の正体

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 私が持っている勾玉の事は秘密にしていた。いつもはお守り袋の中に入れているし首からかける時は祖母の形見といっていたので、それ以上は詮索されたことはなかった。勾玉の秘密を知っているのは酒匂家と皇帝陛下、そして殿下だけのようだ。実家の酒匂家は空襲で屋敷が全焼して全員が亡くなるか行方不明になっているので、詳しく知っているのは後者の二者だけのはずだ。なのになぜ目の前の黒装束の者が知っているのか?

 黒装束の人物は物凄く細身で、声も甲高いので女のようであったが、全く何者か見当もつかなかった。ひいていえばくノ一忍者のようだった。

 「ええ、ここから出れるのなら。それにしてもあなたってどうやってここが分かったの?」

 私は黒装束に聞いた。表情すら見えないので不安であったがしかたなかった。

 「それはね、本館の方にいた者に聞いたのだ。まあ少々荒っぽい手段を取ったが、おっと命は奪ていないからね。我々は無用な殺生はしないのが主義だからな。出たいのなら話は早い、これに着替えろ!」

 そうやって差し出されたのは黒装束だった。たしかに寝間着のままでは出れないから、でもなぜなの? と思いながら袖を通した。

 「じゃあ、出よう! この縄梯子を登れ! それぐらいできるだろう!」

 私は黒装束の後ろを登ってついていった。この時私は後戻りできぬことをしているという自覚はあった。まあ、この国では私は死人と同様であったけど。

 縄梯子を上った先は、鳳凰家の土蔵の壁だった。壁には大きくくりぬかれたような穴があった。どうやら刃物でくり抜いたようになった。その時、強い風が吹き抜けた。そして黒装束の一部が外れ頭巾の下の顔が見えた。

 「あ、あなたは一体何者なの?」

 私が見たのは大きなカラスの頭だった!
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