死んだことにされた処女妻は人外たちと遍路の旅をする―

ジャン・幸田

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(参)四龍の勾玉

勾玉との出会い

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 田貫さんと桔梗さんは五洲島に向かう船旅についての相談をしていた。なんでも、この国を占領している盟約聨合軍による徴用などによって輸送力が限られているので、安全に渡れる連絡船の切符を確保する事だった。そのあいだ、私は”四龍の勾玉”という言葉の意味を少し思い出した。

 それは今持っている勾玉を渡された日の事だ。突然、酒匂の家に母の実家から祖母が尋ねてきたのだ、そして十歳の私に勾玉を譲られたのだ。その日から桔梗さんも私の家に奉公しはじめたのも、私が継承者になったからなんだと気付いた。そして、あの日の会話を思い出した・・・

 その日、私は尋常小学校に行っていた。本来、華族階級に属す子女はそれ相応の学校に通わなければならなかったが、没落華族である故、一般階級の通う学校に行っていた。まあ、身分関係なんて大人が決めた事で関係ないと思ったし、自由な気分になれたのでよかったけど。それはともかく、夕暮れの客間に行くと祖母が待っていた。祖母はその時、死病に憑りつかれていて余命いくばくもなかったという。その消えてゆく命の炎を使いわざわざ来てくれたのだ。

 「か、香織。お前に渡さないといけないものがある・・・この勾玉だ」

 そのとき、勾玉を初めて持ったが無邪気に綺麗だと見つめていると祖母は満足だといいたげな柔らかい表情になった。

 「お前は・・・継承者と認めてくれたようだ勾玉に。お前でなければ探さねば・・・しなくてよかった。その勾玉の事はお前の母にある程度伝えているが、継承者でなければ伝えてはならない言葉があるんじゃ。
 いいか、その勾玉はお前が結婚して最初に生まれた娘が三つになるまでは決して手を離してはならぬ! それと、使わずに越したことがないが、勾玉が求める時が来れば・・・お前はその贄にならなければならぬ。お前の叔母のように」

 幼い私には、その贄という意味が分からなかった。祖母に聞くとそれはお国の為に身を捧げる以上の事だと言った。そして、どのように管理していかないといけないのか、絶対に他人に触らせてはならない、最悪の場合、死に至ると注意された。そして最後にこういった。

 「お前がもし、五洲の地に行く事があれば、途中で戻ることは許されないし、辞める事も出来ない旅だぞ。決して最後まで完遂しなければ・・・この世は闇に消え去るだろう。本当は、もっと継承者として伝えないといけぬことはあるが、もうわしに残された時間がないのが心残りだ。それが必要になる事がなきように願うのみだ・・・」

 そう言い残した後、祖母はがっくりとしてしまった。彼女は眠ったままの状態で家路についた。そして数日もしないうちに亡くなった。だから、勾玉について知っているのが極端に少ないのはそのせいだ。それにしても五洲島の旅は途中で投げ出す事は出来ないというのは、どういう意味なんだろうか?
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