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【前編】

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 私、ソフィアが貴族学校から帰宅しようとしたときのことだ。向こうから美少女と呼んでもいい同級生のオルガが近寄ってきた。彼女はクラスでも浮いた存在だった。転校したばかりだし、なぜか殿方とばっかり交流しているから。

 「ねえ、ソフィアさん。お時間いいかしら?」

 「まあ、いいけど」

 私は思わず彼女の剣幕に押されてしまい返事してしまった。でも、彼女の顔は何か異常な雰囲気を漂させていた。とりあえず校舎を出て車寄せから少し離れたところにある銅像の下にいった。

 「あなた、単刀直入に言うわ。彼と婚約破棄しなさい」

 「はあ?」

 「はあ、じゃないわよ! そうしなければ不幸な立場になるわよ! そして私に譲りなさいよ!」

 「こ、婚約者って?」

 「ジョイス伯爵令息のボリス様よ! ボリス様は私と結ばれる運命だから。赤い糸でつながっているはずよ! でも、あなたが婚約者なんて許せないわ!」

 私と彼女は同じ子爵の地位にある家柄の出身だった。だから大きな身分の違いがあるわけでなかったけど、なぜ婚約を譲れというのか理解できなかった。

 「婚約って・・・譲るものなの?」

 「そうよ! そう決まっているのだから! 運命なのよこれは!」

 婚約する運命なのか・・・結ばれることが約束された男女って素敵だと思った。それが家同士の政略結婚であっても探す手間はかからないし、失敗するリスクも少ない。でも、私が婚約しているのは・・・

 「運命ですか? でも譲れないわ!」

 「はあ? ソフィアさん、いまなんて」

 「譲れません! ボリスさまは!」

 ボリスというのは同級生で次期ジョイス伯爵の最有力候補だった。この国有数の伯爵家に輿入れするのは、貴族の子女なら望むことだろうといえた。だから、彼女が執拗になるのは理解できることだったけど・・・

 「何故よ! 親切心から言っているのよ! そのままじゃ、あなたは婚約破棄されてひどい目に遭うわよ! その前にこうしてアドバイスしているのに!」


 とにかくオルガはヒートアップしているようだった。自分の願望を叶えたいという気迫に満ちていた。でも、私には譲りたくても譲れない事情があった。

 「なにか勘違いしているようですけど、私は一人っ子なのよ! 私以外にはきょうだいがいないから」

 「それがどうしたというのよ!」

 「私は自分の家を相続しないといけないのよ! だから婿養子と結ばれないといけないのよ」

 「だから?」

 「だから、ジョイス伯爵次期当主のボリス様と結婚するわけにいかないのよ! それに、私には婚約者はいません! 婚約者の選定が難航していて、まだなのよ! それなのに譲れだなんて、どこで勘違いしたのですか、あなたは!」

 私は少々気がたっていた。どこをどうすればそんな勘違いをするものだろうかと。するとオルガは変な事をいった。

 「この世界って・・・ゲームよ! ボリス様攻略ルートだったら、まずはあなたを排除しなくちゃいけなかったのよ!」

 ゲーム? 攻略ルート? 彼女が言っている意味が分からなかった。

 
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