冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

文字の大きさ
25 / 200
エリーは探偵として推理する

24・仮想空間で(3)

しおりを挟む
 淳司は別の新聞記事を出して来た。それは例のスキャンダラスな事件を報じるもので、愛莉が漏洩したとされたデータであった。

 「知っての通り、君はこの新聞記事で国家機密漏洩罪に処せられたわけだ。まあ報道では大して触れていないが、全世界に公開された情報は、人道に反する人体実験をしたと十分に批判されるべきだな。でもね、本当はこの情報はデゴイなのさ!」

 そういって淳司が手に持ったのは水鳥の人形だった。

 「なんでそんなものを持っているの?」 愛莉はその人形に手を触れてみると木でできていた。

 「これはデゴイといってな、猟師が水鳥をおびき寄せるために使うおとりなのさ。要は、誰かを陥れるために制作されたものなのさ。国家機密として非公開になっていて漏洩していない部分を確認するとわかったのさ。最後の方に実行したものではないとある。要はそんな人体実験を誰もしていないのさ」

 愛莉はその記事を確認してみた。その記事によれば生物兵器に人間を改造するため遺伝子操作をした人造細胞を移植する臨床実験を、麗華民主共和国で行ったとあった。それに国防省の戦略自衛隊幹部が関与したとあった。でも、それが実行されたものでないとすれば、なぜ全て公開されないのだろう? 実際にしていないのなら!

 「それじゃあ、なんで私が国家機密漏洩罪に問われるのよ! おかしいじゃないのよ、中途半端に漏洩されるのは、なぜなの?」

 愛莉は少し取り乱していた。すると、淳司は肩を抱き寄せた。

 「それはな、君が解除した暗号によって盗み出したものを誤魔化すためさ。君を陥れた連中は、君のここが欲しかったのさ! ここね!」

 淳司が触れたのは愛莉の髪の毛だった。そーと、優しく撫でてくれた。

 「って、ことは私の脳細胞なの? 本当に? でもただの女の子なのよ、私は!」

 愛莉はそういいながら思わず淳司の胸に顔をうずめている自分の方に驚いていた。思わずなんてことをするんだと!

 「ただの女の子ねえ、そう思いたいんだろうね君は。君は気が付いているんだろ? 目に見える物理法則全てを数式で即座に理解しているんだと。例えば、雨粒が落ちてきたらどの程度の高度から落下したとか速度なんかを割り出せると。それと、聞いた音楽を数式に置き換えて自分ですぐ演奏できたり、絵画を見て構図が数式に見えたりするんだろ? それって超高性能AIが数百万回演算して初めて分かる事なんだよ。君は異常な解析能力を持っていることに気が付いているんだろ?」

 淳司はそういったが、愛莉も自覚は少しあった。他の人にはない自分の能力を。学校の成績では計測できないものを持つことを。普通の人間は物理の数式で物事を理解できないと知った時は自分の方が驚いたことを思い出した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

【SF短編集】機械娘たちの憂鬱

ジャン・幸田
SF
 何らかの事情で人間の姿を捨て、ロボットのようにされた女の子の運命を描く作品集。  過去の作品のアーカイブになりますが、新作も追加していきます。  どちらかといえば、長編を構想していて最初の部分を掲載しています。もし評判がよかったり要望があれば、続編ないしリブート作品を書きたいなあ、と思います。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...