元ホームレス・タクヤとネコ耳娘アサミ魔道伝:Re

ジャン・幸田

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第参章:この世界で二人生きていくためには

071.山脈

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 要塞馬車は峠をゆっくりと進んでいた。ここにはかつての文明が築いた大輸送用軌道が山脈を切りとおしで貫いていたが、千年ものあいだに土砂が堆積したりして通行不能になっていた。そのため新たに作られた道路をゆっくりと進んでいた。

  もっとも、土木技術は大幅に退化しているのか、一応舗装はされていても路面が流れないように敷石を敷き詰めたものなので、揺れは激しくなるばかりだった。

  「すまんな若いの。この馬車にとって最大の弱点はこういったガタガタ道を進むときなんだ。揺れがいっそう増すからな。まあ車酔いにでもなったら遠慮なしにいってくれ」

  そういわれてもタクヤもアサミも気持ち悪くて仕方なかった。特にアサミなどはだれたネコのような格好で舌を出して寝そべっていた。

  「アサミ! まだネコの癖が抜けないのか?」

  「わたし・・・まだネコですよ! ネコ耳もあるし、尻尾だって・・・そういえばわたし完全に人間になれるのですか?」

  アサミはソファーの上でくつろいでいたヴァリラディスに聞いていた。すると彼は書棚から一冊の本を取り出した。

  「この世界は様々な種族がいるんだが、実はわしら夫婦のような人間は大多数を占めてはいても、どちらかといえば立場が弱いのよ。
  君のようにキャック族みたいな少し人間ではない種族の方が優遇されるのだよ。だから人間からそういった異形の種族になりたいという希望は少なくないけど、その反対を望むのは殆どいないのさ」

  「でも、それでもわたしはタクヤのような人間に戻りたいのですが・・・」

 アサミは少し困った表情をしていた。それはタクヤは少しいじらしいと感じていた。

 「人間に戻りたい? 召喚前は人間だったというわけなの?」ヴァリラディスは本をめくりながらいっていた。

  「いえ、ネコだったのおです。その・・・ネコに生まれ変わる前は人間だったわけで・・・」
  アサミは言いにくそうに言っていた。よく考えると、いまの身体ってネコだったんだから、魂と心は人間であるとしても。

  「そうか、まあそこの男と一緒になるなら人間になる方が都合がいいが。まあ、タクヤとやらも同族になるほうが手っ取り早い気がするが、とりあえず方法を教えてあげよう。
  まず金を積んで転換魔道士に頼む方法がある。まあ、人間から高等霊獣なんかになるよりも費用はかからないが、たぶんデナケル銀貨千枚もあれば叶うだろう」

  そういってヴァリラディスは本棚に置いていた文鎮らしいものを取り出した。

  「これがデナケル銀貨じゃ! 1枚で十人家族十日分の食料が買えるんじゃ。まあ千枚稼ごうとしたら・・・結構働かないといけないなあ」

  その銀貨は手の平よりも大きく重量もありそうだった。そんなに稼ぐというのは駆け出しの自分たちでは無理そうだとわかった。

  「もうひとつは、アサミ。そち自身のスキルをアップして自分で魔動力を付ける事じゃ。そうなれば必要な時にはネコ耳女になって、普段は人間の女になっているということが出来るようにすればいいんじゃよ。まあ、出来るように学習する方法はいくらでもあるから、がんばってみないか?」

 どうやらアサミがネコ耳少女から人間の女の子になるには魔道士として稼がないといけないのは間違いなさそうだった。
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