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第参章:この世界で二人生きていくためには
086.シフォンヌの家へ
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宿場町のはずれに止めた要塞馬車から昨日行った古道具屋に隣接したシフォンヌの家に四人で向かった。要塞馬車でも食事は出来るが、今朝はシフォンヌに朝食を勧められたのだ。
要塞馬車の夫婦のうち、ヴァリラディスは機嫌よさそうだったが、妻のジェムシームは少し機嫌が悪そうだった。早朝の宿場町は出発する旅人がちらほらみえる程度だった。
この街道は前後に町らしい町も少ないし、街道を夜行き交う事は危険もあるので、大抵の旅人はこの宿場町で泊まる事が多いので、比較的大きな宿屋が多かった。
「おじさん、この世界ってあまり交易は盛んでないのですか?」アサミは尻尾のリボンを気にしながら歩いていた。やはり今までつけていなかったものがついているのは変な感じだった。
「君達が暮らしていたという世界は知らんが、破局戦争の前のこの世界は物凄く交易が盛んで物質文明が高度に発展したという事を聞いた事があるげ、そういった世界だったのか?」
ヴァリラディスは顎鬚を整えながら言っていたが、ジェムシームは嫌そうな態度を取っていた。
「ええ、たぶん想像通りだとおもいますおじさん。でも、要塞馬車が通っていたような大きな道はありませんでした」
「そうか。まあ破局戦争の後は何百年にも渡る混乱の時代を経て、今では各大陸の諸邦が互いに欲に溺れることなく人々の精神的な豊かさを守るという思想で結集したのじゃよ。だから大規模な戦争は起こらなくなったが、各種の争いごとはどうしても生じるので、その時は魔道士の出番というわけじゃよ」
「そうですか、でも魔道士ってなんで魔道士と呼ばれるのですか?」
「そうじゃな・・・実はわしもよく知らないんじゃよ。最初に、そういった仕事をしはじめたのが魔道士と呼ばれる一種の霊的能力にすぐれた職業だったのが、いまでは世界の平和のための職業全般をいうようになったとか、とは言われているようだけど。まあ、最初に神に仕えた職業は祈祷師なのか神官のどちらなんだというぐらい分からない事だ」
アサミもそうだったが、その話を聞いていたタクヤも、この世界の魔道士っていったいどんな存在か見当も付かなくなっていた。どうも、なんでもトラブルの解決に人の超えた力を用いる職業という意味らしかった。
シフォンヌの家は昨夜行った古物店の隣にあった。その家は後に魔道士として大成功した人たちと比べ大変質素なものだった。家は平屋で古い石造りで部屋も台所と寝室と居間のみっつしかなく、トイレは古物店と供用だった。
四人が居間に入っただけでぎゅうぎゅうつめなので、シフォンヌは台所に椅子を置いて座った。居間のテーブルにはささやかな朝食が置かれていた。
「すまんな、ご馳走するとはいったけど、あまり良いものを用意できなくって。いつも老人の一人暮らしだろ? 子供たちは世話をしてやると言ってくれるけど、どの子の家に行くかで揉めるし、身体が動くうちはここにいたいから」
シフォンヌは台所から料理を運びながら言った。
「おばさんの子供さんも魔道士ですか?」
タクヤは言ったが、シフォンヌは少し笑いながら言った。
「いやあ、うちの子は魔道士という職業が嫌いなのさ。いつもあっちこっちに行ってから育児を放り出していたから仕方ないさ。まあ、素質もなかったから誰も跡を継がなくてよかったよ、本当に」
そういいながらシフォンヌは台所にある鍋を片付けていた。この世界の生活水準はよくわからないけど、どうも二十世紀末の日本よりも幾分前ぐらいのようだった。電気やガス水道といったものは存在するようだけど、交通と通信はあまり発達していないというか、意図的に退化したかのようだった。
要塞馬車の夫婦のうち、ヴァリラディスは機嫌よさそうだったが、妻のジェムシームは少し機嫌が悪そうだった。早朝の宿場町は出発する旅人がちらほらみえる程度だった。
この街道は前後に町らしい町も少ないし、街道を夜行き交う事は危険もあるので、大抵の旅人はこの宿場町で泊まる事が多いので、比較的大きな宿屋が多かった。
「おじさん、この世界ってあまり交易は盛んでないのですか?」アサミは尻尾のリボンを気にしながら歩いていた。やはり今までつけていなかったものがついているのは変な感じだった。
「君達が暮らしていたという世界は知らんが、破局戦争の前のこの世界は物凄く交易が盛んで物質文明が高度に発展したという事を聞いた事があるげ、そういった世界だったのか?」
ヴァリラディスは顎鬚を整えながら言っていたが、ジェムシームは嫌そうな態度を取っていた。
「ええ、たぶん想像通りだとおもいますおじさん。でも、要塞馬車が通っていたような大きな道はありませんでした」
「そうか。まあ破局戦争の後は何百年にも渡る混乱の時代を経て、今では各大陸の諸邦が互いに欲に溺れることなく人々の精神的な豊かさを守るという思想で結集したのじゃよ。だから大規模な戦争は起こらなくなったが、各種の争いごとはどうしても生じるので、その時は魔道士の出番というわけじゃよ」
「そうですか、でも魔道士ってなんで魔道士と呼ばれるのですか?」
「そうじゃな・・・実はわしもよく知らないんじゃよ。最初に、そういった仕事をしはじめたのが魔道士と呼ばれる一種の霊的能力にすぐれた職業だったのが、いまでは世界の平和のための職業全般をいうようになったとか、とは言われているようだけど。まあ、最初に神に仕えた職業は祈祷師なのか神官のどちらなんだというぐらい分からない事だ」
アサミもそうだったが、その話を聞いていたタクヤも、この世界の魔道士っていったいどんな存在か見当も付かなくなっていた。どうも、なんでもトラブルの解決に人の超えた力を用いる職業という意味らしかった。
シフォンヌの家は昨夜行った古物店の隣にあった。その家は後に魔道士として大成功した人たちと比べ大変質素なものだった。家は平屋で古い石造りで部屋も台所と寝室と居間のみっつしかなく、トイレは古物店と供用だった。
四人が居間に入っただけでぎゅうぎゅうつめなので、シフォンヌは台所に椅子を置いて座った。居間のテーブルにはささやかな朝食が置かれていた。
「すまんな、ご馳走するとはいったけど、あまり良いものを用意できなくって。いつも老人の一人暮らしだろ? 子供たちは世話をしてやると言ってくれるけど、どの子の家に行くかで揉めるし、身体が動くうちはここにいたいから」
シフォンヌは台所から料理を運びながら言った。
「おばさんの子供さんも魔道士ですか?」
タクヤは言ったが、シフォンヌは少し笑いながら言った。
「いやあ、うちの子は魔道士という職業が嫌いなのさ。いつもあっちこっちに行ってから育児を放り出していたから仕方ないさ。まあ、素質もなかったから誰も跡を継がなくてよかったよ、本当に」
そういいながらシフォンヌは台所にある鍋を片付けていた。この世界の生活水準はよくわからないけど、どうも二十世紀末の日本よりも幾分前ぐらいのようだった。電気やガス水道といったものは存在するようだけど、交通と通信はあまり発達していないというか、意図的に退化したかのようだった。
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