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アシャンの部屋探し!

(16)久々の外出は

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 派手なドレスの少女に葬式にでも行くようなヘボな男の二人、それがアシャンと僕の姿だった。そんな二人がボロアパートを出て大家さんに渡された地図を頼りに坂道を登っていった。その坂道だけどその先に何があるなんて興味がなかったので登ったことはなかった。特に用事がなかったからであるが。

 僕の心はドキドキしていた。こんなふうに女の子とツーショットで歩くなんてことをしたことなかったからだ。月並みな表現だけど、心臓がバクバクというかどうにかなりそうになっていた。これが年齢が釣り合っていたのならカップルに見えるだろうけど、いまや僕もアラサーなので下手をすると援助交際している女子校生と中年サラリーマンと人には見られるであるのは想像するのはたやすかった。でも本当は女戦士と主従関係を結ばされた無職男・・・にしても女戦士ってどうやって戦うんだ、いったい?

 そんな考えている僕をひこずるようにアシャンは颯爽と足取り軽く歩いていた。その日は春まだ浅い小春日和。沿道の民家の庭先の花で咲いているといえば梅ぐらいだった。そういえば失業したのが年末だから何日ぶりの外出なんだろうか、覚えていなかった。どうも単調な生活をしていると時間の概念は急速に失われてしまったようだ。部屋で暖房も灯油を買うお金がなくて使えず毛布でくるまっていた。

 そんな毛布でくるまっていた時、暇つぶしに妄想していたのはエッチな事ばっかりだった。人間の三大欲求のうち睡眠欲は時間がたっぷりあるので充足できるけど、食欲はお金がないので満たされなかった。残る性欲といえば・・・相手なんかいたためしはないので、どれをもって満足になるなんて知らなかった。それに女の子とイチャイチャしてあんなことやこんなことをしてどうにかなるなんて、やったことないのだから当然だった。だから妄想でエッチな気分になっても、本当のところそれが性欲を満たしているんかどうかは判断しようもなかった。

 そんなとき、アシャンの長い髪の毛が風にたなびいていた。彼女はポニーテールにしているのでほんの先っぽだけだったが、こんな風に女の子の髪がゆれるのを見たのがいつだったのかが。思い出せなかった。そんな光景はテレビの世界だけの話だった。そういえばそれもテレビはリサイクル料金を払いたくない人から貰って来たブラウン管のやつに地レジチューナーを取り付けた”なんちゃってデジタルテレビ”で見た光景なのではっきりとは見たものではなかったけど。

 「ケイジ、もうちょっと早く歩いてくれない? 早くしなければいけないんだからあなたと」

 「アシャンそれって?」

 「決まっているじゃないの、あなたと主従関係を深める契り、ち・ぎ・り・よ!」

 その言葉に僕は愕然してしまった。童貞喪失というか筆下しというか、表現はどうでもいいけどそんな風に女の子の方から言われるなんて想像していなかったから、僕の顔は赤くなった。なんだって近くを歩いていたおばさんがこっちを見やってニヤットしたような気がしたからだ。きっと、こう思っているんだろう、近ごろの若いカップルははっきりいうんだなあと。それにしても。エッチが下手というか初心者ですらない僕としても満足しないのになぜこだわるんというんだろうか。

 「いいの、僕でアシャン!」

 「いいのよ、この世界に転移してきて最初に出会ったのがあなたで本当によかったわ。あなた
素質溢れているのよ」

 「素質?」

 「そう素質。わたしとやるときに教えてあげるからさ」

 そういってアシャンはさらに速度を上げた。そして僕はアシャンを追っかけるように坂道を上る速度を上げた。それでも僕は彼女の前に出ることは無かった。
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