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悪役令嬢の影
悪役令嬢オルガ
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後世の歴史家が、オルガ・フォン・ノルトハイムの事を語る際に必ずいう接頭語があった。「結婚前は悪役令嬢であったが」だ。彼女の王女時代もとい令嬢時代は非難されて当然というのが定まった評価であった。
当時から「悪役王女」ではなく「悪役令嬢」と呼ばれていたのは、王女では王朝への不敬罪に問われる恐れもあっためだ。だからオルガの醜聞な噂は「やんごとなき貴族の」や「さる貴族の令嬢」と呼ばれていたが、場合によっては全てオルガがやったようにされていた。そのためオルガの名前は貴族社会の腐敗の象徴であった。
独身時代のオルガは貴族の社交界で官能的なダンスで殿方を誘惑していた。それも婚約者のいる貴族ばかりを。野心を有する独身の貴族の中にはオルガと結婚することで王族と結びつくことを狙って婚約者を捨てる者もいたが、それらの求婚は受け入れられることはなかった。王がそれを許さないからだ。そして、オルガは次の殿方を誘惑し、男女の仲を壊す。そんな事を繰り返していたから「悪役」と罵られるようになっていた。
オルガはまた多くの男と寝たといわれている。それもまた誘惑の罠であった。その時の事は後に多くの歴史書で語られているが、その全ては真実ではないとされている。ただし、そのとき誰かとの逢瀬で処女を喪失しているのは事実だった。確証はないが、後に本人がそう言っているからだ。
「なんなのよ、これって! はしたないわね!」
オルガは憤っていた。オルガでも伯爵夫人としての人生を突然押し付けられた少女の方だが。オルガのノルトハイム家への輿入れ際に王女オルガがつけていた日記を読んでの感想であった。何のためなのか分からないが、13歳から18歳までの日記には殿方との逢瀬の様子が綴られていた。そこには、誰と寝たのかという内容も含まれていた。それを読んでいるとオルガは恥ずかしくなった。こんなにも恋も契りも好きな女として生きて行かないといけないのかと思うと!
「オルガ様、大丈夫ですか?」
ヒルデが心配そうに尋ねてきた。日記を読んでいたのは水上楼に用意されたオルガの部屋だった。そのとき、コンラートは軍の任務で王都を離れていた。そのときオルガは公式にはちょっとした病気療養のため別邸である水上楼で過ごしていることになっていた。
「大丈夫よヒルデ。あなたも大変ですわね、こんな夫人に仕える事になって」
オルガは笑顔でそういったが、ヒルデは悪役令嬢と呼ばれている女とギャップがあることに気付いていた。王女のオルガはワガママで癇癪持ちで、胸がバックリと開いたドレスで誘惑して近寄って来た男全てに身体を許し、そして女を敵に回してしまう性格だと聞いていた。
でも、目の前のオルガは優しくて控えめで礼儀正しく、夫であるコンラートを気遣っていて、しかも貞節を護っているようだった。それは夜も同じようだった。同衾しているのに結婚初夜以来契りを結んでいないようだと聞いていた。
「そんなことはございませんわ、オルガ様。それにしても、大丈夫ですか? 朝から晩までいろんな教師がこられていますが?」
ヒルデは不思議に思っていた。公爵夫人として必要なのかもしれないが、花嫁修業にしては長すぎる学習が続けられていたから。
「大丈夫わよ、これでもわたしはね・・・」
そこまでいったところでオルガはマズイと思った。もう少しで薬の行商人になるために猛勉強した体験を話してしまうところだったから。
「そうですか」
オルガの表情にヒルデはこれ以上聞くのはマズイと感じたので、話を終わりにした。余計にオルガが不思議に思えた。いくら結婚してお情けを貰ったとしても、こんなにも性格は変わるのだろうかと。
当時から「悪役王女」ではなく「悪役令嬢」と呼ばれていたのは、王女では王朝への不敬罪に問われる恐れもあっためだ。だからオルガの醜聞な噂は「やんごとなき貴族の」や「さる貴族の令嬢」と呼ばれていたが、場合によっては全てオルガがやったようにされていた。そのためオルガの名前は貴族社会の腐敗の象徴であった。
独身時代のオルガは貴族の社交界で官能的なダンスで殿方を誘惑していた。それも婚約者のいる貴族ばかりを。野心を有する独身の貴族の中にはオルガと結婚することで王族と結びつくことを狙って婚約者を捨てる者もいたが、それらの求婚は受け入れられることはなかった。王がそれを許さないからだ。そして、オルガは次の殿方を誘惑し、男女の仲を壊す。そんな事を繰り返していたから「悪役」と罵られるようになっていた。
オルガはまた多くの男と寝たといわれている。それもまた誘惑の罠であった。その時の事は後に多くの歴史書で語られているが、その全ては真実ではないとされている。ただし、そのとき誰かとの逢瀬で処女を喪失しているのは事実だった。確証はないが、後に本人がそう言っているからだ。
「なんなのよ、これって! はしたないわね!」
オルガは憤っていた。オルガでも伯爵夫人としての人生を突然押し付けられた少女の方だが。オルガのノルトハイム家への輿入れ際に王女オルガがつけていた日記を読んでの感想であった。何のためなのか分からないが、13歳から18歳までの日記には殿方との逢瀬の様子が綴られていた。そこには、誰と寝たのかという内容も含まれていた。それを読んでいるとオルガは恥ずかしくなった。こんなにも恋も契りも好きな女として生きて行かないといけないのかと思うと!
「オルガ様、大丈夫ですか?」
ヒルデが心配そうに尋ねてきた。日記を読んでいたのは水上楼に用意されたオルガの部屋だった。そのとき、コンラートは軍の任務で王都を離れていた。そのときオルガは公式にはちょっとした病気療養のため別邸である水上楼で過ごしていることになっていた。
「大丈夫よヒルデ。あなたも大変ですわね、こんな夫人に仕える事になって」
オルガは笑顔でそういったが、ヒルデは悪役令嬢と呼ばれている女とギャップがあることに気付いていた。王女のオルガはワガママで癇癪持ちで、胸がバックリと開いたドレスで誘惑して近寄って来た男全てに身体を許し、そして女を敵に回してしまう性格だと聞いていた。
でも、目の前のオルガは優しくて控えめで礼儀正しく、夫であるコンラートを気遣っていて、しかも貞節を護っているようだった。それは夜も同じようだった。同衾しているのに結婚初夜以来契りを結んでいないようだと聞いていた。
「そんなことはございませんわ、オルガ様。それにしても、大丈夫ですか? 朝から晩までいろんな教師がこられていますが?」
ヒルデは不思議に思っていた。公爵夫人として必要なのかもしれないが、花嫁修業にしては長すぎる学習が続けられていたから。
「大丈夫わよ、これでもわたしはね・・・」
そこまでいったところでオルガはマズイと思った。もう少しで薬の行商人になるために猛勉強した体験を話してしまうところだったから。
「そうですか」
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