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悪役令嬢の影
コンラートの憂鬱
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同じころコンラートは東の隣国近くにあるシュワルツガルト要塞にいた。ここは東の新興帝国であるティエンバル帝国へ向かう街道にある軍事的要衝にあった。王国とは長い国境線があるが急峻な山脈が続くので、ここを通過する方が負担が少なくて済むので警戒を怠ることができないのだ。そのため、王国政府は精鋭部隊を駐屯させているが、その指揮官は伯爵以上の貴族でなければならなかった。コンラートは初めて任務に当たっていた。
「ノルトハイム公爵殿下、どういたしました?」
副官のシュワーは都の方角しか見えないところにずっといるコンラートを気遣っていた。
「公爵殿下はよせ! コンラートでいいぞ! 同期なんだし」
王立軍学校に偽名の「ホルスト男爵」で入学し、本当の身分を隠していたコンラートは、ずっと前線の騎兵隊にいた。そのため、周囲も突然「公爵」になった事に戸惑っていた。
「そうですが、ずっと呼び捨てにしてきたのに、突然のことで・・・すいませんが、コンラート様でいいですよね? なんかやりにくいのですが。とりあえず今日も問題はなさそうです」
ティアンバル帝国初代皇帝シャーはとある王国を武力革命によって打倒した共和主義者の農民の一人であった。それが革命政権を登りつめ独裁者となり、ついには「民衆の信任」を理由に皇帝の座についた野心家だった。近年では周囲の小国を次々と征服しこの大陸の東半分を統治していた。その刃が王国にいつ剥くのか分からない緊張関係にあった。
「それがよい! ただでさえ財政が逼迫しているのに、侵攻されたら防ぎきれん! もうしばらくは平穏にしてもらいたいものだ」
「そうですが・・・ちょっと聞いてもいいですか? 部下の方から・・・その」
「なんだシュワー! その歯に何かが挟まったような口は?」
「実は・・・公爵夫人のことでして。大丈夫なのか心配する声がありまして。あの・・・」
シュワーはそこで口が止まったが、何を言いたいのかを察したコンラートは、わかったという素振りをした。
「悪役令嬢と夫婦になって大丈夫かということだろ! オルガは浪費家で男を漁っていて、心配なんだろ!」
「そうです・・・」
コンラートは要塞内の噂が耳に入っていた。第七王女とはいえ半ば不良債権のようなオルガと結婚して王国随一の名門軍閥であるノルトハイム家は大丈夫かと。いくら先代公爵が第三王女と結婚していたといえ、同じようにする必要があったのかと。ノルトハイム公爵家に相応しい子女が他にもいるはずなのに、よりによって悪女とも悪役と批判されるオルガと?
「もう仕方ないだろう! 国王陛下に命令されたのだからな」
「それもそうですが、お尋ねしてもいいですか?」
「なんだ?」
コンラートは不機嫌な顔をしていた。どんなことを聞かれるのか予想できたからだ。
「オルガ様は・・・処女だったそうというのですが・・・本当だったのか疑問の声がありまして」
「そのことか? まあ信じられないかもしれないが本当だ。そう言う事でいいだろう! もし処女でなかったらどうしたんかというのか? その時は自分が不能だったとでも言うしかないだろう! 知っているだろう、男色家なんて噂されていたから、その方が陛下の体面を傷つけないからな」
そういうと表情を隠すために外をむいた。その先の彼方にいるオルガを。オルガは入れ替わった事実は墓場まで持って行かないとならない秘密であった。それが原因で王国が衰退もしくは滅亡してはならないからだ。それにしても、時間がある時考えるのはオルガの事だった。彼女と一緒にいると心が休まることに気付いていたのだ。
彼女の貞操を奪ったが、本当は・・・ずっと死が訪れるまで一緒にいたいと思い始めていた。でも、彼女と約束してしまった、いつかの時点で元の生活に戻すという事を。それがコンラートの心の重荷になっていた。
「ノルトハイム公爵殿下、どういたしました?」
副官のシュワーは都の方角しか見えないところにずっといるコンラートを気遣っていた。
「公爵殿下はよせ! コンラートでいいぞ! 同期なんだし」
王立軍学校に偽名の「ホルスト男爵」で入学し、本当の身分を隠していたコンラートは、ずっと前線の騎兵隊にいた。そのため、周囲も突然「公爵」になった事に戸惑っていた。
「そうですが、ずっと呼び捨てにしてきたのに、突然のことで・・・すいませんが、コンラート様でいいですよね? なんかやりにくいのですが。とりあえず今日も問題はなさそうです」
ティアンバル帝国初代皇帝シャーはとある王国を武力革命によって打倒した共和主義者の農民の一人であった。それが革命政権を登りつめ独裁者となり、ついには「民衆の信任」を理由に皇帝の座についた野心家だった。近年では周囲の小国を次々と征服しこの大陸の東半分を統治していた。その刃が王国にいつ剥くのか分からない緊張関係にあった。
「それがよい! ただでさえ財政が逼迫しているのに、侵攻されたら防ぎきれん! もうしばらくは平穏にしてもらいたいものだ」
「そうですが・・・ちょっと聞いてもいいですか? 部下の方から・・・その」
「なんだシュワー! その歯に何かが挟まったような口は?」
「実は・・・公爵夫人のことでして。大丈夫なのか心配する声がありまして。あの・・・」
シュワーはそこで口が止まったが、何を言いたいのかを察したコンラートは、わかったという素振りをした。
「悪役令嬢と夫婦になって大丈夫かということだろ! オルガは浪費家で男を漁っていて、心配なんだろ!」
「そうです・・・」
コンラートは要塞内の噂が耳に入っていた。第七王女とはいえ半ば不良債権のようなオルガと結婚して王国随一の名門軍閥であるノルトハイム家は大丈夫かと。いくら先代公爵が第三王女と結婚していたといえ、同じようにする必要があったのかと。ノルトハイム公爵家に相応しい子女が他にもいるはずなのに、よりによって悪女とも悪役と批判されるオルガと?
「もう仕方ないだろう! 国王陛下に命令されたのだからな」
「それもそうですが、お尋ねしてもいいですか?」
「なんだ?」
コンラートは不機嫌な顔をしていた。どんなことを聞かれるのか予想できたからだ。
「オルガ様は・・・処女だったそうというのですが・・・本当だったのか疑問の声がありまして」
「そのことか? まあ信じられないかもしれないが本当だ。そう言う事でいいだろう! もし処女でなかったらどうしたんかというのか? その時は自分が不能だったとでも言うしかないだろう! 知っているだろう、男色家なんて噂されていたから、その方が陛下の体面を傷つけないからな」
そういうと表情を隠すために外をむいた。その先の彼方にいるオルガを。オルガは入れ替わった事実は墓場まで持って行かないとならない秘密であった。それが原因で王国が衰退もしくは滅亡してはならないからだ。それにしても、時間がある時考えるのはオルガの事だった。彼女と一緒にいると心が休まることに気付いていたのだ。
彼女の貞操を奪ったが、本当は・・・ずっと死が訪れるまで一緒にいたいと思い始めていた。でも、彼女と約束してしまった、いつかの時点で元の生活に戻すという事を。それがコンラートの心の重荷になっていた。
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