オルガは悪役令嬢の身代わり花嫁にされた!

ジャン・幸田

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悪役令嬢の影

悪役令嬢の影

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 悪役令嬢と呼ばれていたオルガが来店している! 鷹の巣にいた老若男女たちはオルガの話題で持ちきりになった。結婚前のオルガがしたことは、半ば伝説になっていた。その中に創作や虚偽も数多く盛り込まれており、真偽不明であったが、功績ないし悪行とされていた。

 「すいません・・・」

 個室から出て迎えの馬車に乗るために階段を下りていたオルガは視線の多さにドキドキしていた。群衆の注目があつまっていたからである。その視線が集中するのは喪服を着たオルガだ。誘いを断ることが出来なかったとはいえ、こんなことになるなら絶対拒否すべきだったと後悔していた。

 「あんまり気にしない! 無敵のオルガでしょ、あなたは!」

 「そうよね! あたし無敵!」

 オルガは堂々と歩くようにした。結婚前のオルガがやっていたという動作をまねて。その動きに多くの人はやっぱり悪役令嬢は変わらないと安堵していた。たった一人を除き。

 「じゃあ、オルガちゃん。またね!」

 笑顔でアンジェリーナに見送ってもらった後、オルガは馬車の中で倒れこむように座席に深々と座り込んだ。ああ、これで大丈夫なかしらと心配していた。

 □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ 

 王都の中心にあるブラウンドルフ伯爵邸はこじんまりとした邸宅だった。王都の防御の要でもあるノルトハイム公爵邸と違い、王都に在住している間の宿泊施設の機能しかないので、それほど大きな建物ではなかった。それでも、外部からの侵入に対しての防御はしっかりしていた。だから、邸宅内の秘密は外部には一切漏れる事はなかった。

 アンジェリーナの私室に入れるのはごく限られた側近で全て女性だけであった。女伯爵が当主であるので当然であった。その部屋に居候がいるのを知っているのはほんの一握りだけだった。

 「ねえ、アンジェ。どうだった、あいつ?」

 その居候は口が汚かった。

 「そうねえ、努力しているようだね。まあ、あれなら若い公爵夫人ですよ、まだ青いわよで通用するけど、相手が悪いわよ! ねえ! あなただったらどうしていたんだろうね」

 アンジェリーナはワイングラスを揺らしながらいった。相手も同じだった。一応、侍女の衣装を纏っているが立場は対等であった。

 「そんなのわからないわ! もう、あんな地位に戻る気はないし許されないわ! 死んでもごめんよ!」

 その女は二人の間合いを詰めた。

 「やっぱりねえ、それにしても気持ち悪くなるぐらい似ていたよ、というよりも同じだわ。誰かに複製品でも作ってもらったんじゃねえの? なんてね、こうやって触ったら一緒の感覚がしたわよ」

 アンジェリーナは目の前の侍女の肩を揉んだ。そして腕を触ろうとすると・・・

 「アンジェ、あたしは相手をする男にしか腕のホクロを触らせないのを知っているのに!」

 「やっぱり、同じ反応だわ! 本来の性格は違うようだけど器としての身体は同じだわ!」

 アンジェリーナが話をしていたのは、悪役令嬢のオルガ・・・薬売りの少女オルガと入れ替わった元王女だった。
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