ふたりはサードライフはじめました!

ジャン・幸田

文字の大きさ
5 / 14
早苗メイクアップ作戦!

05・朝食

しおりを挟む
 隆治が用意した朝食が食卓を飾っていた。隆治は若い頃、旅館の厨房で働いていたことがあったので、それなりの料理を作る力量があった。でも、早苗の僅かな国民年金で賄える料理は限られていたが。

 テーブルには老人が着るボロボロの服を身につけていたが、明らかにアンバランスあった。若返った二人には。隆治は高校生みたいだし、早苗は少女から大人になりかけのようだった。

 「なんか、物足りないわね。やっぱ食感が変わってしまったのかしら? 隆治さんには悪いけど」

 二人はとりあえず相手を名前で言う事にした。本当なら呼び捨てでもいいのだが、早苗の方がお姉さんのように思えるので、さんつけにしようと隆治がいったのでそうなってしまった。七十や八十の男女なら年齢の差はそれほど重要ではないが、若い頃の七歳という年齢差はあまりにも大きく感じるものだった。

 「わしもだ。なんか肉が食べたいのだけどどうしたものか、それに身体のパワーに見合うものが欲しくなってしまったわ」

 早苗の家業は農家であったが、長年の家族の会議生活の為に次々と農地を手放してしまい、残された農地も荒れ放題になっていた。最近はデイサービスに早苗が行っている間の暇つぶしに隆治が耕した野菜畑が少しだけある状態だった。

 「そうよねえ、働きに行けたらいいよね。年金もギリギリなのだから二人合わせても。どこか雇ってくれないかしら?」

 早苗はほおずりをついていった。その仕草に隆治はドキッとしていた。

 「そうだよな、でも戸籍上わしら後期高齢者なんだぞ! 見かけはともかく。説明がややこしいってば! 早苗さん。取りあえず誰に相談しようか?」

 そういって隆治も腕を組んだ。その仕草に早苗もドッキとしていた。

 「とりあえず食べましょ。もうそろそろよね、デイサービスが来るのは。今日はどうなるかしら? 担当の安倉さんって結構調子ものだからね、高校の時はヤンキーだったなんていっていたから」

 安倉とはデイサービスセンター「なごみの里」の介護職員で、派手な感じがする女だった。

 「そういえば、いまの早苗さんって安倉さんと同じぐらいの年齢じゃないかい? 案外、波長があうかもしれんぞ」

 「そうかしら? わたし苦手だったんだけどそうかもしれないわね。食感が変わってしまったぐらいだから」

 その時、玄関から大きな声がした。安倉の声だった。

 「おはようございます! お迎えに上がりました! 藤村さん、今日もお出かけしましょうね!」

 その声に二人はテーブルを立って玄関へと向かったが、そのとき安倉は唖然としたのは当然であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...