異世界の救世主になろう!~主役はやっぱり勇者だ~

☆ウパ☆

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本編

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不意打ちを、かわされた。日々剣の鍛錬に励んでいるネロからしたら、驚くべきことであり、相手がただ者でないことを思わせた。

「何者ですかあなたは...」

そんなことを思われてるとも知らずにユージンは自分の命の愛おしさに浸っていた。

「(あっぶな!間一髪!後少しズレてたら...)」

と思うと、武者震いが止まらない。

「いや、あのローマ皇王様を助けに」

震えた声で言った。

「?それでは騎士なのですか?」
「いや、騎士というか、なんというか」
「なるほど私の身を安じて来てくれたということですね?」

まあ、今はそういうことにした方が良いだろう。

「えーっと、まあ、そうですね...」
「敵が来てるいるんですね」
「はい、なので一緒に逃げましょう。」
「すみませんが、あなただけで行ってください。」
「は?」

予想外の返答に、この状況で何をほざき始めたんだ?このお姫さんは?と思った。
「私はこの剣を守らないといけないんです」
「そんなこと言ってる場合じゃ...」

ないだろ、と言い終わる前に地下の上が崩れて、大きな落盤がネロの上に落ちようとしていた。

「あぶねぇって!」

◆◇◆

少し前、地上では透、菅野、天井が聖騎士長三幹部を相手に奮闘していた。

「だから、俺達敵じゃねーって!」
「だまれ!犯罪者共め!」
「姫を狙うとは良い度胸だな!」
「大人しくしていれば懲罰だけにしてやる!」
「このおっさん達聞く耳もたねーんだけど!?」
「貴様らも中々やるようだな、我々ここまで渡り合うとは余程の鍛錬と実戦の経験がものをいわせている。」
「関心されてるのはありがたいけど、戦う気はない。」
「しかも戦うのは今日がはじめてだっての!おりゃ!」

天井が自身よりも少し大きい斧を振り下ろす、かなりのスピードだが簡単によけられてしまう。

「ちくしょう」

その様子を遠くから他の暗殺チームが見守っていた

「ボス!あいつらやっぱりただ者じゃなかったぜ」
「ああ、あの聖騎士長3人と互角に剣を交えてる」
「しかし、情報と違いやすぜ?なんで聖騎士長がここに。」
「ちっ、奴らがいると分かってればあんな入り方はしなかったんだけどな~」

確かに、もっと隠密に行動すれば気付かれなかったかもしれない。ただ、相手が聖騎士長ともなれば分からない。

「とにかくここはあいつらに頑張ってもらうぞ」

彼らが移動しようとした次の瞬間だった。一歩踏み出すと同時に黒い影が目の前に 落ちてきた。

「うわぁぁあ!なんだ!?」

見ると地面がえぐれていた。砂ぼこりが漂っていてそれしか確認できない、さらに目を凝らすと人型の影が見えた。視界がはれてきて、ゴブリン含む暗殺者たちは目を疑った。人間ではなかったから、というのもそうなのだが。
肌は若干黒くなっている部分があり、顔には鱗が少しあり、何よりも翼があった、天使のような羽でできた美しいものではなく、トカゲのような鱗で覆われていた、角も生えている。ただ顔は人間に少し近かった。
実際に見たことはなかったが、彼らは確信していた。コイツは今、国を騒がせている悪魔だと、噂に聞いたままの姿だったからだ。
引きつった顔で眺めていると目玉だけをギョロリとこちらに向けた。

「勘弁してくれぇぇええ」

命乞いのポーズを必死にとる。しかし、悪魔は何もせず透と聖騎士長達のもとに近付いていった。すかさず六人は先程両者に向けていた殺気をこちらに近付いてくる悪魔に向けた。何故なら、その悪魔がただならぬオーラの様なものを放っていたから。
構えをとり、いつでも間合いを詰められる様にする。

「┨┷┠┷┰」

なんと言ったか分からなかった。
「なんだ?!コイツ話せないのか!?」
「一体何者だよ!?」
「奴は悪魔の1人だ!我々の想像を遥かに超えた力を持っている!気を抜いたら終わりだと思え!」

先程まで戦闘していた者の言葉とは思えなかったが表情が明らかに違ったので嘘などではないだろう。

「!?悪魔ですか」

しばらくの沈黙、睨み合いが続いた。すると、先程と同じ黒い影が二つ落ちてきた。同じ格好をした悪魔が2体、6人を囲むように現れた。

「sit!囲まれた!」

先程まで敵同士だった6人が背中を預ける形になる。最初に動いたのは悪魔だった。しかし、かなりの距離がある場所で拳を振り上げた。

「(何をする気だ)」

悪魔は振り上げた拳を地面に叩きつけた。悪魔は地下にまで届く穴を開け、そのまま中に入っていった。

「っ!?ま、待て!」

追おうとするがあとの二体に邪魔をされた。

「痛っ」

頭を抑えながら一言いうと、

「大丈夫です。多分こっちの方が一大事なんで」

と瓦礫のしたから顔を出したユージンがいた。

「っ!?大丈夫ですか!?私を助けるために...待っていてください!今出します!」

瓦礫をどかし始めて気付いた。視線に、上から冷たい視線を感じた。そこには、悪魔が立ち、こちらをじっと見ている。なにも話さず見ているだけ、というのがまた気味が悪かった。ユージンも気付いたようだった。硬直する2人、悪魔が動き始めた。後ずさりするネロ、しかし戦おうという気になれなかった。何故か勝てないと決めつけてたから。真っ直ぐネロに近付いてくる、狙いがネロだと分かったユージンは必死に瓦礫の下から「逃げろ!」と叫んだ。本当なら自分が一番最初に逃げ出したいが、美女の前でカッコ悪い事はできないというプライドがあったからだ。

「なにを言うんですか!あなたもいくんです!」

無謀にも未だ瓦礫をどかし続けるネロ、どうしたらこの娘を逃がすことができるか、ユージンは必死に考えていた。そして、思いついた、

「俺はあんたを助けに来た騎士なんかじゃなくて、あんたを殺しに来た暗殺グループの1人なんだよ!」

ネロの手が止まった。よし、これでこの娘は無情にも俺をおいて逃げ出す。と確信したが、ネロの手は再び動き始めた。

「なんで!?」
「だろうなとは思ってました」
「だったら早く...!」
「でも、君は私を助けてくれたじゃないですか!」

この状況で良くそんな事を言ってられるものだと思った。なんとか、身体の半身は出られたのであとは自力で出られる。悪魔は着々と近づいてくる。なんとか身体を出す事に成功したが、逃げようにも出入り口は悪魔の後ろにある。戦うしかない、そう思ったが武器すらない、魔法が使えない自分を恨めしく思った。倒さなくて良い、せめて目くらませさえできれば。近くにあるものは、瓦礫、それと美女1人先程からそれなりに大きな胸を押し付けて腕にしがみついているので気になって仕方がない、あとは岩に刺さっている大きな剣ぐらいだ。

「ん!?剣!?」

なるほどこんな大きな剣を扱えるか自身はなかったが、無いよりはずっとマシだ。

「姫さん!この剣借りるぜ!」

剣に手を伸ばすユージン

「うん!え?あ、ちょっと!それは!」

誰にも抜けないんだ!と言う前に

「うおおお!」

ズンッ重い音と一緒に剣が抜けた。

「んなっ!!??抜けた!?ありえません!!」
「うわっと重っ!」

とんでもない大きさの剣だ、それなりに重いはずだ。だが直ぐに軽くなった、見ると剣がユージンにあった手頃なサイズになっていた。

「おお!これは良い!」

一方、ネロの方はまだ理解できていなかった。

「(抜いたのですか?あの聖剣を?信じられない、この人一体...)」
「よっしゃああ!いくぞ!」

と言いながら構えをとった、悪魔も構える。そして、一瞬消えた。気付くと間合いを詰められていた悪魔はユージンの懐である。重いパンチがユージンの腹を強打した、様に思えた。ユージンは剣で悪魔の一撃を受け止めていた。

「なんて、反応速度」

悪魔は驚いて後ろに飛び一度体勢を立て直そうとする、しかし着地しようとした瞬間、離れたハズのユージンが今度は悪魔の懐に飛び出し剣で身体をなぎ払った。

「┿╂┥┰!!?」

何が起こったのか分からない悪魔は驚きを隠せないようだった。そして、ユージンも

「え?俺すごくね?」

この調子である。
余裕を無くした悪魔はもはや何も考えずに突進してきた。

「なんか、いまなら魔法使える気がする!」

剣を上に上げ目を閉じ意識を集中させる。

「はぁああ!!」
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