異世界の救世主になろう!~主役はやっぱり勇者だ~

☆ウパ☆

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本編

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無事大会は終わり、ユージン達は祝勝会を上げていた。

「お前ら本当に来て大丈夫だったのか?」
「問題ねーよ!」
「元々元気だったからな!」
「それはそうとユージン、トリシタンを倒したっていうのは本当か?」
「ああ、まあな」

あの後トリシタンは姿をくらました。なんだか知らない偉そうなご老人がユージンのもとへやってきて「何故トリシタンを逃がしたのか」とこっぴどく怒られていたが、ガディの口添えがありその場は丸く収まった。

「だが俺の祝勝会に何故おっさんもいる、呼んでねーぞ」
「ウァハハハハハ!良いではないか!」
「盛り上がった方が良いじゃない!」
「まんまと精神支配にはまってたのに良く言うな、俺が助けてやらなかったらどうなっていたか...」
「ああ!それもう言わないで!」
「全く...ネロはもう良いのか?まだ寝てた方が」
「全然元気ですよー!うぃー!」
「顔が火照ってるぞ、飲み過ぎだ」
「ユージン様!これすっごく美味しいです!」
「ホントッスか?!おお!確かに美味しいッス!」
「なにをする?!この愚か者!これはユージン様に...」
「お前も来たんかい!」
「図々しいにも程があるわよあなた達...あら、これ美味しいじゃない」
「...セリカ・ハート...お前もか...」
「おいおい...なにを湿気たツラしてやがる、もっと楽しめ!」

◆◇◆

結局、祝勝会の費用はユージン一人がもつという結果になった。

「あいつら、騒ぐだけ騒いで会計の時になったら逃げやがったちくしょうめ」

◆◇◆

帰り道、ユージンは一人で夜道を歩いていた。人の気配が全くと言っていいほど無かった。所々にある路地裏へ目をやると怪しいコートに身を包んだ者や道へ吐き散らす者までたくさんいた。その時だった、後ろから殺気を感じたユージンはすぐに振り返り何かが飛んでくることに気が付き、すぐにその場から距離をとった。

「おいおい、やっと対抗戦が終わったってのに。一体なんだ?」

飛んできたものを確認するとそれはクナイのような小型のナイフだった。角度から予想するにおそらく屋根からなげられたものだろう。屋根の上を待てみると確かに人影を確認することが出来た。闇の中で顔の確認は困難だった。存在に気付かれたことを悟った相手は屋根から屋根へ飛び移り、逃げ去ろうとする。

「人の命狙っといてそう安易に逃がすと思うのか?《白眼》!」

ユージンの瞳が白くぼやけた。

「いた...捕まえて訳を聞くか。」

走って後を追いかけた。しばらく走っていると夜中でも関係なく賑やかな通りに出た。

「確か、ここら辺...」
とその時不意に話しかけられた。

「おい!兄ちゃん!どっかで見たことあると思ったら今日の大会で優勝してた奴じゃないか!」
「そうですけど、ちょっとすいません今急いでまして...」
「急いでる?...ほう、どうしてか教えてくれるか?」
「あんた...」

男は懐からナイフを取り出し、ユージンに突き刺そうとしたがそれと同時にユージンの姿が男の前から消えた。

「おいおい、これは一体なんの冗談だ?」

明らかに不自然だった、これほどの騒ぎを起こしておいて視線を送るだけで誰一人として微動だにしない。
男が口を開いた。

「総員戦闘体勢、ローマ新国王ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス様、抵抗しないで頂ければ大事に至らず保護させていただきます。」

すると、通りにいた大勢の人々が武器を手に武装し始めた。

「(標的は俺じゃなくネロ?何か勘違いしてるらしいが、ここは言わないでおいた方が得策か)保護?冗談キツイな、誘拐だろこりゃ...」
「保護しろ...殺すな、生かして連れていくのだ...」

ユージンは背中に背負っている聖剣に手をかける。

「とりあえず、軽く相手してやる」

◆◇◆

「なかなか上手く行きそうじゃない?」
「たかが、一般人だ。そう易々とはやらせてくれんだろう」
「やっぱり俺が出る!いいだろ?!あいつは俺が殺る!」
「落ち着きなさいよ、あんたじゃ無理よ、ね?リーダー。」

屋根に5人の人影がある。どうやらユージンと武装した人々との闘いを見ているようだ。
その時その5人のすぐ後ろから声がした。

「まあ、こんなこったろうと思ったけどね。」

そして凄まじい殺気を感じた5人はそれぞれ違う建物の屋根へ散り、距離をはかった。

「こっちから出向くまでもなかったね、あぁ憎たらしい顔だ!」
「お前...」
「覚えてるみたいだね、そうさ君に復讐するために僕は...」
「いや、ごめん覚えてない誰だっけ?」
「トトだ!トト・カルメンだ!ほら、お前達の仲間を団体戦でボコボコにした!」
「あー、あの時の赤髪か。ん?そっちのねーちゃんは覚えてるぞ、えーとべ、べ、べ...誰だっけ?」
「結局覚えてない?!ベンジャミンよ!」
「あー、そうだった。それからマリアとの対戦を放棄した」
「クロウドだ。」
「あと、あんたらは知らねーな」
「ホントに?この声に覚えはありませんか?」
「あ!大会の使えねー実況者!」
「アリアンロッドです。以後お見知りおきを」
「どうやらお前があいつら操ってるらしいな。」
「よくわかりましたね」
「我々の場所を特定できたこと、一般人を操っていたことを知っていたのも疑問だ。」
「そりゃ簡単、この《白眼》を使った。《白眼》は物を透かして見たり、生物の体の中の魔力の流れを見ることが出来る、これは指紋みたいに人それぞれ違うから見分けがつく。最初、俺に近づいてきたあのおっさんに同じナイフを持たせたのは投げた人物をあのおっさんだと思わせるため。そして、あそこにいる奴らを操るのなら必ず絶えず魔力の干渉をうけるハズ、あんたとあそこの奴らをつなぐ見えない魔力の糸が俺にはハッキリと見えた。ついでに言うとあそこで今戦ってるのは俺の分身。」
「流石だな」
「フフ、まあ当然よね、私を倒したんだから。」
ア「どうしますか?リーダー」
トト「殺すにきまってるだろう?この僕が!」

4人の目つきが一気にかわり、張り詰めた空気がながれる。

「そういえばあんたの事まだ聞いてなかったな。」

リーダーと呼ばれた人物はまだなにも喋らない、顔を上げすらしない様子だった。しかし、重たい声がフードの中から聞こえた。
「...やめろ...」
「何言ってんだリーダー!こいつを今殺さないと!顔も割れちまったんだぞ!」
「...聞こえなかったか...やめろ、と言ったんだ...」
「あぁ?!聞こえねーよ根暗野郎!」
「いい加減にしろ!トト!」
「...お前達はもういい...私がやろう、さがれ...」
「はっ、かしこまりました。」
「さがれだと?!この...」
「やめろ、それ以上は軍権裁判だぞトト。」
「あんたちょっと落ち着きなさい。行くわよ。」
「てめーは俺が殺すんだからな!」

と言ってどこかへいってしまった。

「(逃がしたが俺をネロと勘違いしている以上、あいつらを襲うことはないだろう。)軍権裁判とか言ってたな、国の役人かなんかか?」
「...」
「それとも軍人かな?」
「...」

フードをかぶった重たい声の主は1歩また1歩と近づいていった。

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