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 これからマンションへ行ってもいいか、との巴の電話に、蓮は戸惑った。
 撮影は、無事に終了した。
 だが、くたくたなのだ。
 自分が思っている以上に、身も心も緊張していた蓮だった。

「僕、何にもお構いできないと思うんですけど」
『別にいいよ。顔を見たいだけだから』
「はい。じゃあ、待ってます」
 
 今からすぐに向かう、と言い残し、巴からの通話は終わった。
「どうしよう。僕、まともに巴さんの顔、見られるかな……」
 蓮は不安を募らせながら、彼の到着を待った。

 車を走らせながら、巴の頭の中には様々な思いが渦巻いていた。
「私としたことが。大切な撮影の日を、忘れていたなんて!」
 蓮は、大丈夫だっただろうか。
 初対面の男優と、絡んだのだ。
「疲れただろうな……」
 彼に告白する前は、ただ自分の気持ちが先に出ていた。
 推しが、別の男と寝る。
 そんな事実に、この心は耐えられるかと。

 だが、蓮が自分より大切になった今は、彼のことを思わずにはいられない。
 怖くなかっただろうか。
 この仕事が、もう嫌になったりしなかっただろうか。
 ただ、蓮をいたわりたい。
 それだけを胸に、マンションに向かった。

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